侮るなかれ!「思い込み」のライフハック
みなさんは「プラシーボ効果」をご存知ですか?――そう、「思い込みによって怪我や病気が治る」でお馴染みのアレです。ざっくりと聞いたことはあっても、実際にどういうものなのか詳しく知っている方は多くないのではないでしょうか。
科学的に解明されているのか? 心理的な現象? ただのおまじない的なもの? 気になる中身を徹底解説していきます!
目次
■プラシーボ効果とは?
■プラシーボ効果のメカニズム
■本当に効果があるの?
①薬の値段の実験
②うるしの実験
③「ダミー手術」の実験
■偽薬とわかっていても効果が出る
■プラシーボ効果のマメ知識
・動物にも効く?
・住んでいる地域によって効果が違う?
・服用する薬の色によって効果が違う?
■プラシーボ効果を実践してみる
①仕事
②恋愛
③勉強
④美容
■ノーシーボ効果とは?
■プラシーボ効果で気を付けるべきこと
■まとめ
プラシーボ効果とは?

まず、プラシーボ効果の概要について解説しましょう。
プラシーボ効果は「偽薬(本当は薬ではない成分)を投与したにも関わらず、症状が回復したり和らいだりする現象」のことです。本来は医療用語ですが、今では日常生活でも使われていますよね。「偽薬効果」「プラセボ効果」とも言われています。
ちなみに、プラシーボは薬理作用のない薬という意味ですが、元はラテン語で「喜ばせる」という意味の単語から来ているそうです。中世フランスでも「治療が難しい病気にかかった患者を喜ばせて、苦しみを和らげること」と定義されています。
「これを飲むと風邪が治るよ」と渡されたものがただの飴玉だったとしても、薬だと信じて飲めば治ってしまう……ということです。もっと簡単なところでいうと、「いたいのいたいの、とんでけ~!」と言われた子どもが泣き止むのもプラシーボ効果の一種なんですよ。
プラシーボ効果のメカニズム
プラシーボ効果には脳が強く関係しています。ベン・シャナン博士らの研究では、脳の報酬中枢というところに焦点を当てた実験を行いました。報酬中枢とは、脳の「側坐核」という部分にあり、「欲求が満たされたときや満たされることが分かったときに活性化し、快楽を与える」神経系です。
実験内容は、マウスの報酬中枢を薬で刺激したあとで病気に感染させると、そのマウスの体内では菌の繁殖が抑えられ、また薬の投与前よりも免疫系が活性化しているというものでした。
つまり、期待や快楽によって、免疫力が高まるということが立証されたんです!
プラシーボ効果はオカルトではなく、思い込みによって起こる科学的な現象だったということですね。
本当に効果があるの?
でも、本当に病状が治ったりするの?と疑っている皆さんのために、ここから、実例をいくつか紹介したいと思います。
①薬の値段の実験

アメリカで電気ショックの実験を行った話があります。被験者を2つのグループに分けて、電気ショックの痛みを和らげる薬を投与する、という実験がありました。1つのグループには「1錠たった10セントの薬」と説明し、もう片方には「2ドル以上もする新薬」と説明しました。……が、実はどちらも偽薬だったのです。
結果として、「新薬」と説明されたグループの方が痛みの軽減効果が大きかったとされています。「高い薬の方が良く効く気がする」という感覚、みなさんにもあるのではないでしょうか?
②うるしの実験
「うるしに触るとかぶれる」は有名な話ですよね。それにまつわる実験で、2つのグループに分けた被験者に「うるしの葉」と「栗の葉」を触らせるというものがありました。しかし、うるしを触らせたグループには「栗の葉」と、栗の葉を触らせたグループには「うるしの葉」と、逆に説明しておいたのです。
驚くことに、栗の葉を触ったグループに発疹が出て、うるしの葉を触ったグループには何もなかったという結果になっています。どこかで試してみたくなってしまいますね。
③「ダミー手術」の実験

投薬だけでなく、「手術行為」そのものにもプラシーボ効果を促す作用があるのです。
背骨の骨折などで「椎骨形成術」という手術が必要な患者たちを、コンピュータがランダムで「通常の手術」を行うか「ダミー手術」を行うか決め、「ダミー手術」の方は医療行為を何もしない、という実験です。患者には何も知らせず、医師や看護師たちは手術室に入るときから「今から手術を行います」「今からセメントを入れますよ」など声掛けの演技でやりすごしたと言います。
手術後、「ダミー手術」側の患者たちにも、通常の手術と変わらない回復が見られたそうです。76歳の患者がゴルフをできるようになるほどの回復量だったという話……俄かには信じられません!
偽薬とわかっていても効果が出る
上記の実験から、思い込みによる治癒力や回復力がすごいということはわかりましたよね。しかし興味深いのは、例えそれを「偽薬」だと、「これはプラシーボ効果の実験の一環だ」とわかっていたとしても効果があるということです。
腰痛で治療を受けている患者に「偽薬」とラベリングしてある薬を投与したところ、痛みが約30%軽減されたという実例があります。しかも、一緒に治療を受けていたプラシーボ効果なし(従来の治療のみ)の患者たちはそのような効果は見込めませんでした。
これは、患者自身の思い込みや期待というよりも、患者と医師の関係性を信頼しているから、という研究結果が出ています。医師や看護師とのコミュニケーションという治療行為に体が反応してしまうのだそうです。
プラシーボ効果のマメ知識
ここで、更に驚くべきプラシーボ効果のマメ知識をお教えします。
・動物にも効く?

いやいやそんな……と思われるかもしれませんが、これは本当なんです。製薬会社が犬を対象に偽薬の実験をしたり、周囲の環境や使える体内のエネルギーによって、ハムスター冬眠状態に変化するといった観察結果も出ています。
・住んでいる地域によって効果が違う?
例えば胃潰瘍の患者に偽薬を投与したとして、ブラジル人よりドイツ人の方が効き目が良いと言われています。逆に、高血圧の偽薬はドイツではそれほど効果が見られませんでした。このように、国によってプラシーボ効果にも差異があります。それぞれの国の文化的要素が深く関わっているようですね。
・服用する薬の色によって効果が違う?
人間は無意識で物体の見た目(色、大きさなど)を判断します。ある研究では、うつ病にもっとも効果があるのは黄色い薬だということがわかっています。他にも、赤い薬は患者に刺激を与え、緑の薬は不安を和らげ、白い薬は胃の不調を緩和するそうですよ。ちなみに、薬に製薬会社の商標名が刻印されていると更に効果抜群なんだそうです。