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BUSINESS アパレル業界の挑戦者たち

ミッドタウン日比谷に”カオス”を埋め込んだ男。南貴之のアタマの中とは?

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コンセプトは、人や店が混ざり合う“カオス感”

3月29日にオープンした東京ミッドタウン日比谷の中でも異彩を放つスペースが、3階に誕生した9つの店舗を展開する「HIBIYA CENTRAL MARKET(ヒビヤ セントラル マーケット)」です。237坪の中に食堂/居酒屋、理髪店、メガネ店、コーヒースタンド、本屋、ブティック、ギャラリーなどがあり、総指揮を執ったクリエイティブディレクターの南 貴之氏は、「人や店が混ざり合う“カオス感”がコンセプト」と語ります。

インタビューした食堂/居酒屋の「一角」は夜11時まで営業していて、FORZA世代のサラリーマンやOLをはじめ、様々な業種や年代の人が昼夜問わず集まります。そんな彼らが飲んでいる光景を見て、「マーケットは、いろんな人がたくさんいて、盛り上がって楽しそうにしている風景が入って初めて、僕たちがやりたかったマチの絵になる」と、感慨深げです。

従来の空間作りとは逆の順序を踏みながらデザインした

――東京ミッドタウン日比谷がオープンして1ヵ月が経ちますが、手応えはいかがですか。

人が多すぎてまだ判断はしていません。「良い」という人と、「よくわからない」という人が半々で、それでちょうどいいと思っています。分かりやすくもなく、分かりづらくもない、長く続けられるコンセプトを作ることができたかなと思っています。

――ヒビヤ セントラル マーケットの「アーケード型複合ショップ」というスタイルはどこからの発想ですか。

店を作る根底に「人が集まる」ことがあります。連想ゲームのようなものですが、日常の中にあって、人が自由に行き交っていて、活気があってというマーケットの面白さ、目的がなくても人が集まる、行ける場所を作りたかった。

海外に行くと店やカフェが道路にはみ出しているのは普通で、「日本は道を使うのが下手くそだな」と思っていました。ここを作るときに、私道ならはみ出せるだろうという狙いはあって、マーケットのような無秩序なカオス感を作るために、「まず道ができて、区画ができて、店が入って、人が集まる」という従来の空間作りとは逆の順序で作りました。


駅のキオスクのような「AND COFFEE ROASTERS / 有隣堂 / FreshService」。南さんが好きな文房具が並び、少年漫画誌なども購入できる

――今の“東京感”のようなものは意識されましたか。

このヒビヤ セントラル マーケットに関わっている人の数だけ、東京感、日本感、昭和感があります。日本人には懐かしくて居心地が良く、海外から見ると新しくて面白いという、そういう場所になればいい。地方に行くと面白い店が多いし、40代の自分にとってカッコイイなと思う日本のデザインも多いので、そういうものを「もっと上手く混ぜられないかな」と思ったことがここのスペースの随所にあります。

――日比谷というロケーションは?

建築物が好きなので、日本の昔ながらの建物と、現代的なものが混ざっている街ぐらいの解釈でしたね。日比谷は、「千代田区日比谷」という住所表示がないのにヒビヤと呼ばれている場所なので、それなら「自分たちが日比谷の真ん中と言い切ってしまえばいい」という考え方で、ヒビヤ セントラル マーケットと名づけました。

感覚的な部分とロジカルな部分の両方が自分の中に共存する

――ではこの連載の本題に入りますが、現在のアパレル業界をめぐる状況をどう見ていますか。

正直に言いますが、自分は情報を収集したり、マーケティングは無駄だと思っています。人の話にはまったく興味がなくて、相手の感覚なんてまったく信用していない。信用するのは自分だけで、それと数字やデータがあればいい。人間の感覚なんて曖昧にできているものです。

自分が感じるムードや風などの感覚的な部分と、ウソをつかない数字やデータのロジカルな部分の相反するものが同時に自分の中にあって、「感覚的にはこうだけど、数字はどうなんだろう」というのが常にある。

――そういう考え方の中での“服作り”とはどういうものですか。

自分たちは『FreshService(フレッシュサービス)』や『Graphpaper(グラフペーパー)』というブランドを運営し、アパレルのPR業務も担うソフト会社ですが、僕たちのやることに「共鳴してくれる人たちを何人増やせるか」だけを真剣に考えています。ブランドや服を本当に好きな人には真摯に向き合うし、それが僕らの会社の生きる意味なので、立ち位置を間違えちゃいけないという気はします。

――南さんのブランドではネット販売のECも人気だと聞いています。

ECは一つのメディアという位置づけで、接客販売のサービスの一環だと思っています。忙しくて店に行けないとか、物理的に遠いなどという人は利用しやすいし、「サイトを見て実物を見たい」という来店の動機付けにもなります。「体験を作る」というきっかけですね。


「身だしなみに気を遣っているフォルツァ世代の男性に薦めたい」という「理容ヒビヤ」。古き良き昭和の理髪室の雰囲気が味わえ、理髪グッズなども見どころ。ぜひ電話でご予約を

仕事しながら休んで、休みながら仕事しています

――服作りの面白さはどんなところに感じていますか。

僕はディレクションする側なので、生地産地や機屋(はたや)に行ったり、優秀なパタンナーと話をしたりして、良いモノができたときの喜びが大きいですね。当たり前のことですが、自分は顔が見えない人とは商売をしないので、現場の人と会って、僕には考えつかないようなアイデアを聞いたり、技術を発揮してもらったり、それを分かりやすい形で世の中に落とし込んで、ソフトとハードを繋げて何倍にもなるようなことをしていくのが仕事です。

――今後取り組んで行きたいことは?

ホテルを作ったり、地方にいろんなお店を作りたいなど、やりたいことはたくさんあります。ハタチぐらいからずっと仕事しているという感覚は変わらなくて、仕事しながら休んで、休みながら仕事しているというゴッチャ煮状態ですね(笑)。


不定期でイベントを開催する「Tent gallery」では、オープニング企画として20世紀を代表する建築家・デザイナーの名匠ジャン・プールヴェの展示を実施。「ギャラリーの協力を得て、特別なことをしているのでぜひ見てください。本物と写真集が同時似体験できる、本屋の新しいカタチだと思っています」と南さん

キュレーション型セレクトショップ「Graphpaper」のスペースは、ギャラリーとショップの融合で、今後はアート作品なども展示販売されるという

メガネ屋「CONVEX」は、カウンターに座って、スタッフとの会話を楽しんでいると、裏からお目当てのメガネが出てきて、似合うメガネを選べるというシステム

HIBIYA CENTRAL MARKET(ヒビヤ セントラル マーケット)
東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷3F
03-6205-7894
11:00~21:00 [店舗スペース]、11:00~23:00 [飲食スペース]
http://hibiya-central-market.jp

南 貴之(みなみ たかゆき)
株式会社 alpha代表/クリエイティブディレクター
1976年生まれ、クリエイティブ集団「alpha.co.ltd」代表。様々な店舗デザインやディレクションを担当。キュレーション型ギャラリーのようなセレクトショップ「Graphpaper」や、モバイル型コンセプトショップ「FreshService」などを次々と手掛け、東京ミッドタウン日比谷3階に複合型店舗「HIBIYA CENTRAL MARKET」をオープンさせた。
http://alpha-tokyo.com

Photo:Shimpei Suzuki
Writer:Makoto Kajii



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