オトコ心を刺戟するディテールと、ハンパない着心地に気絶しました
さて、2017年最後となる73回目は、やっぱりエルメス! カシミアのコートです。2017年1発目に紹介したロロ・ピアーナのベビー・カシミアコートに勝るとも劣らない超絶級のアイテムで、今年を締めくくろうと思います。
このコートは2015年秋冬コレクションに登場したんですが、この頃あたりからエルメスのカシミアアイテムの価格はグーンとアップし、確か定価は3桁越え。アルスタータイプなんだけど、襟の形が独特で、ジップ付きのハンドウォーマー・ポケットが付いてたり、そんなポケットの裏地はすべて贅沢にもシープスキンだったり気になるディテールがテンコ盛り。しかも、カシミア100%で裏地無しなので、トロットロな肌触り…。もう得も言われぬ代物でした。
カシミアのコートに関しては バカなんじゃないか?ってくらい買ってきてるから、もう絶対に不要なんですよ。どんだけ寒いんだって。しかも、高過ぎるし。
でも、不思議と寄って来ちゃうんですよね。アレな雰囲気の女のコがよく言う「インドに呼ばれた」的な感じというか、共鳴し合う? いや、呼び寄せられる?
プロパーじゃ無理だから、もしセールに出てれば。日本のセールでは出逢えなかったけど、もしかしたら海外なら。そんな思いを巡らせ続けてたらですね。パリ在住の友人から連絡来るわけですよ。「エルメスのセールにカシミアのコート出てるけど」って。え? 「サイズは46なんだけど、作りが大きめだから丁度イイんじゃない」って。えっ、え?? 「今後の状況考えると、コレは買っといた方がイイと思うけどなぁ」って。はい。決断! 見事今回も清水ダイブを決行するに至りました。てへっ。
その後すぐに友人が送ってくれたパッキンを開けて、丁寧に包まれた包み紙から取り出してみると、もうビックリ。店頭ではその価格も手伝って、じっくりと触ったり、試着するなんてコトは憚られたんですが、届いたコートは すでに僕のモノ。Tシャツの上に無造作に羽織ってみたら、即気絶。その柔らかさ、滑らかさ、肌触りのエロさ加減に身体も驚き、瞬時に白目剥きました。
ただ、この後にその遥か遥か上をビューンっと飛び越えていくロロ・ピアーナのベビー・カシミアコートってのを手に入れるコトにはなるんですが…、このときは人生史上最強だったんですね。
だから、なかなか着られなくて…。もっと真っ当なオトナになって、きちんと着こなせるようになったら着ようだなんて丁寧にガーメントを掛け、大事に大事にクローゼットに仕舞っていたんですが。ロロ・ピアーナのベビー・カシミアコートといい、カンタータのキログラムメルトンのカシミアダッフルといい、どんどんその上をいくアイテムが増えていくわけです。どこかで止めないと破産しそうですが…。
となると、アレもコレも寝かせてるわけにもいかない。もう40歳越えたから、普段からイイ服着て街歩いたって許されるでしょってコトで、一気に解禁。思い切って袖を通し始めました。
そしたら、想像以上にコートがある…。何着買ってるんだ?ってくらい。確かにコートは大好き。でも、多過ぎるでしょ…。ある年から年1着以上のペースで、コートが増えてる。しかも、メッチャ高くてイイやつが。
と、ダラダラ グダグダと長くなりましたので、そろそろ締めと 2018年の抱負を。
「もうコートなんて買わない」
Photo:Riki Kashiwabara
Text:Ryutaro Yanaka
『FORZA STYLE』シニアエディター
谷中龍太郎
さまざまな雑誌での編集、webマガジン『HOUYHNHNM』編集長を経て、『FORZA STYLE』にシニアエディターとして参画。現在までにファッションを中心に雑誌、広告、カタログなどを数多く手掛け、2012年にはニューバランス初となるブランドブックも編纂。1976年生まれ。