メンズのグローブって、奥が深いんですね
人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。スタイリストの小沢 宏氏に続いて登場するのは、数多くのイタリア ブランドを日本に紹介した成毛賢次さん。成毛さんが膨大な数を所有してきた中でも捨てられなかった服をご紹介する企画、第8回は、さまざまなブランドの中からお気に入りのグローブです。
まずは、エルメスのグローブ。これは右手の人差し指が開いている、シューティング用のグローブで、内側はカシミアニットになっています。トリガーを引きやすいように開けたあり、親指の股はグリップ、中指はトリガーガードに擦れて劣化しないように補強用のレザーが付けられています。今だったらスマホ使うのに便利かもしれませんね(笑)。
これもミラノのショップにいた仲の良い店長が「お前のためのグローブ取り置いてあるぞ」って。彼は、通常のアイテムは誰もが持ってるし、買えるからと、エルメスだからこそあるような珍しいアイテムをつねに僕に薦めてくれました。まぁ、誰かがオーダーしたものに需要があったから、商品になったんでしょうね。
このふたつは、リベラーノさんから貰ったペッカリーのグローブ。左の濃い茶はHermèsでスーツ/コート着用時用で、黄色はジャケット着用時用のものなんですが、「手に はめるなよ」って。だから、一度も手を入れたことがないんですよ。
これはステッキのようなアクセサリーなので持つためだけのグローブだから、手をいれるなと。なんだか、よく分からなかったけど、ふ〜んって感じで今でも持つだけです。
そして、コッチもリベラーノさんから貰ったグローブ。最初は生成りの綺麗な白だったんです。さっきのふたつとは違って、こっちは「手に はめろ」と。「ガンガン汚せ」と。とにかく怖がらずに使って、「早く汚れた状態にしろ」って言ってました。へぇ〜って感じですよね。
使うことを楽しめる革と、劣化させないことが美しい革の違いなのかもしれないんですが…、真意はいまだによく分かりません(笑)。
Photo:Riki Kashiwabara
Edit:Ryutaro Yanaka