【ボーナスで買い物、その前に】10万円のジャケットは投資？浪費？　お金のプロの考え方

2017.12.13 0

連載第１回で話した通り、私は自動貯蓄の仕組みでコツコツお金を貯めて、29歳の春に世界一周旅行へ出かけました。アジアからヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアまで全17カ国を周り、旅の中で多くの人と貴重な交流をしましたが、なかでも強烈な思い出が“アイハラさん”との出会いです。

マレーシアのペナン島に渡るフェリーの中で、浴衣にサンダルという超ラフな格好で現れた時は怪しげなオジサンだなと思いましたが、話をするうちにいくつもの企業で役員を務めるビジネスマンであること、世界中に何軒も家を持つほどの富豪であることが判明。まだ若く起業したばかりの私にとって、まるで雲の上の世界の話を聞いているようでした。

そのアイハラさんが、私にこう言ったのです。「今日私が言うことを、１つずつでいいから実行しなさい。そうすれば、仕事も人生もうまくいくよ」

それを書き留めたメモは、「アイハラ師匠の教え」として、今でも私の手元にあります。「お金のことを考えるから、お金で悩む」「山はゆっくり登れば、必ず頂上に着く」「20代は２個、30代は３個、40代は８個、50代は10個の趣味を持て」など、含蓄深い言葉がたくさん並んでいますが、その中に「１万円をいくらで使うか？」という問いかけがあります。

「１万円は、どう使っても１万円だろう」と思うかもしれません。しかしアイハラさんの教えはこうです。「１万円を使って、きれいなお姉さんがいる店にパーッと飲みに行く人もいるだろう。6000円でレンタカーを借り、スーパーで2000円の食材を買って、友人たちと１人500円で入れる自然公園でバーベキューをする人もいるだろう。どちらが良いか悪いかではない。大事なのは、１万円というお金を使って、どれだけの価値を得られるかだ」

どちらの場合も、その体験によって自分が幸せになれたのなら、あなたは１万円か、それ以上の価値を得たことになります。反対に、「本当はこんなことしたくないのに」とか「付き合いだから仕方ない」と思いながら嫌々やったのなら、１万円どころか１円の価値も得られず終わります。大事なのは、「この１万円を使って得られる価値をいかに最大化するか」を常に考え、工夫や努力をすることだ。そうアイハラさんは教えてくれたのです。

なお、アイハラ師匠の教えには、「靴はイタリアのオーダーメイド」というものもあります。実は私、仕事の来客がなければ毎日Tシャツと短パンで過ごしても平気なくらい、普段のファッションにはまったくお金をかけない人間なのですが、この教えだけは実践しようと、わざわざ飛行機に乗ってイタリアまで靴を作りに行きました。

ベテランの職人がすべて手作業で作り上げるため、かなりの高額でしたが、私にとって良い投資になったと実感しています。高いお金を払った分、「しっかり働いて回収しよう」という前向きなモチベーションが生まれただけでなく、「私はなぜイタリアまで靴を作りに行ったのか」を語ることで、お金の相談に来たお客様に「投資と浪費の違い」を説明する際に説得力が増すようにもなりました。靴を買うために支払った金額以上のリターンは、確実に得られたと思っています。

あなたも「投資」と「浪費」をしっかり区別さえしていれば、被服費にお金を使う時も罪悪感を持つことなく、ワクワクしながら買い物を楽しめるはず。ただし、いくら本当に欲しいものでも、際限なくお金を使っていたら無一文になります。以前の連載でも話したように、家計簿をつけて自分の被服費のスタンダードを把握した上で、おしゃれを存分に楽しんでください。

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Text：Shotaro Kudo
Photo：Getty Images

株式会社クレア・ライフ・パートナーズ
代表取締役社長
工藤将太郎（くどう・しょうたろう）

日本生命にて、外資系金融機関(証券・銀行・投資顧問)や、私立大学を中心とした学校法人の確定拠出型企業年金や、弔慰金制度などの福利厚生制度の構築に従事。積極的に行ってきた不動産投資や海外投資、そして必要最低限の生命保険活用を通して、“マネーパズル®”や “ハイブリッドプランニング®”など独自のノウハウを確立し、2011年に株式会社クレア・ライフ・パートナーズを創業する (2012年法人設立)。 2016年からは、国内外の不動産、金融商品情報提供、法人節税対策、事業承継・相続税対策や所謂プライベートバンク口座開設サポート(アジア地域・欧州)、海外法人設立サポート事業を手掛ける。事業オーナーだけでなく、顧問先の企業社員や顧客を対象として金融教育事業にも注力している。

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