「たこ坊 本店」に行くなら、ベイカーパンツで!
シンプルな大人の軍パンという感じで好きなのが、このベイカーパンツ。いわゆる軍パンはサイドにポケットの付いたもので、ベイカーパンツはざっくり言うとサイドポケット無しでフロントにL字ポケットが付いているのが特徴だ。特に太めのヴィンテージのものは、古着ならではの野暮ったさと無骨さがあって気に入っている。
足元は短めにロールアップして溺愛スニーカーのニューバランス1700を合わせればいい。なぜかボタンダウンシャツや軍パンにはこいつがしっくりくるから不思議だ。この2アイテムに合うことが俺のスニーカー選びの基準なのかもしれない。
そんなお気に入りのシンプルなベイカーパンツを履いて、シンプルな気絶たこ焼きを食べに世田谷へ向かうことに!
黙々とたこ焼きを焼き続けるおやっさんの姿に、男の生き様を感じる。世田谷にもこんな昭和なたこ焼き屋が奇跡的に残っているのだ。チェーン店には真似できない職人の味は「たこ坊 本店」でしか味わえない。
店先にはベンチがあり、焼きたてを食べることができる。ほとんどのお客は地元民でテイクアウトするが、焼きたての美味さは格別だ。ゆる〜い感じでなんとも風情がある。
ファッションと同様にクラシックでベーシックな食を好む俺が、ついハマってしまったのが「ペッパーキング」だ。なんとソースではなく塩とブラックペッパーをかけレモンを絞るスタイル。
ペッパーペッパーってことでなんだか頭の中でペッパー警部が流れ始めてとまらない。ちなみにピンクレディはミーちゃんが好きだった。
このまま昭和歌謡の話になりカラオケに行きたくなりそうなので、話をたこ焼きに戻そう。基本のオリジナルはソースでこれも美味いが、俺は迷わず、いつものペッパーキングと決めている。
タイミングがいいとすぐできるが、俺の前で並んでいたお客の分で売れてしまい、しばし待つことに。そんな時は運が悪いと思わない。最初から焼くところをじっくり見れるってことで逆にラッキーだ。
完全に口の中がたこ焼きになってきたぞ。一個づつ丁寧に焼かれていく。
ひっくり返す手さばきが見事だ。鉄板でたこ焼きを作る作業は、家庭用のテフロンたこ焼きとは違い絶妙に焼き上げるタイミングが難しい。
最後の仕上げの段階になり、おやっさんの職人ワザに見とれてしまう。もう話しかけても俺の言葉は届かない。
いい感じで焼きあがった。ペッパーキングまでもうすぐだ。焦らずに待て。そう何事も焦ってはいけない。
マヨネーズをかけ、塩とブラックペッパーを振りかける。最後の仕上げにおやっさんの気持ちも隠し味で入っているに違いない。
ドーン! これがペッパーキングだ。ソースなんてかけなくていい。シンプルでいいのだ。なんてグラマラスなお前。早く食べてしまいたい。
俺を虜にするお前に、レモンを優しくギュッと絞りかける。
やるせない夏の思い出が頭をよぎる中、かすかに秋の気配を感じつつペッパーなお前との新しい季節が始まる。
強烈に美味い! たこや気絶。そうつまりペッパー昇天! 外側カリッと中フワトロでグランデキングボーノ。しっかりと出汁の効いた生地は、上品で風味があり、ソースではなく塩とブラックペッパーだからこそ味わえる絶妙なハーモニーだ。
京都出身のおやっさんは22年間たこ焼きを焼き続け、3年前にペッパーキングを試行錯誤の上に生み出した。多くを語らずひたすらたこ焼きと向かい続けながらも、新しいチャレンジに挑戦していたのだ。
たこ焼きにうるさい関西の方からすればソースをかけないなんて邪道かもしれない。俺も食べる前まではあり得ないと思っていた。
しかし、これは邪道ではなく進化だと俺は思う。ファッションと同様に基本の部分は残しつつ、進化することも大事だ。絶妙なアレンジだからこそ、最初は違和感がありながらも受け入れられ、次第に新定番となっていくのだろう。
軍モノのベイカーパンツ。元々はベイカーと呼ばれるだけあってパン職人の作業着が発祥とも言われている。軍モノ好きや、古着好きの間ではユーティリティパンツと呼ぶことが多い。戦闘服というよりは作業服として米軍で使用されていたもので、これは70年代のヴィンテージだ。
Photo & Text:Eiji Katano
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今回のアニキおすすめの店
「たこ坊 本店」
東京都世田谷区世田谷1-16-24 榎本ビル 1F
Tel. 03-3439-8300
URL https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131709/13045567/
営業時間 12:00~23:00
定休日 月一回不定休
片野英児(かたのえいじ)
1968年生まれ。昭和とメンズ服飾を愛してやまない48歳。小誌編集長の干場(ほしば)がアニキと呼んだことから、いつしかアダ名がアニキに。趣味は、スナックで昭和カラオケ。呑みすぎると、歌いながら、なぜか干場と泣き合う熱き男。好きな場所は軍艦島とイタリア。プロレスに行くと、なぜかマスクをかぶって観戦したくなってしまう。