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「シガー千夜一夜物語・前編」

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コイーバの名付け親はコロンブスだった!?

今でこそ誰もが気軽に楽しめるシガーですが、その歴史を遡れば気絶するほど昔の話であります。まあカタイ話は別として、紳士の嗜みといわれるシガーですから、その歴史のアウトラインくらいは押さえておきましょう。というわけで、今回は「シガー千夜一夜・前編」と題しお届けしたいと思います。

時は1492年8月3日。イタリア・ジェノバ出身の船乗りクリストファー・コロンブス(1451年頃とされる-1506年5月20日)は、紆余曲折ありながらもスペインのイザベル女王の支援を得て、西回りによる新大陸発見の航海へ旅立ちます。当時の欧州はポルトガルが優勢。というのも、同国はすでに喜望峰を経由する航路を開拓しアジア方面進出への目処が立っていたのです。

コロンブスがなぜスペインに? と思われるでしょうが、自国はおろか、ポルトガル、フランス、イングランドにも直訴していたのですが、いずれも色好い返事をくれません。当初はスペインも乗り気ではなかったのですが、ポルトガルの独走を許すまじと、女王の決断で3隻の船団(サンタマリア/ピンタ/ニーニャ)をコロンブスに与えました。

スペインのパロスを出港して2ヶ月を超える航海の末、同年10月12日ついに陸地(現バハマ諸島)を発見します。この島をコロンブスはサン・サルバドル(メシア=救世主の意味)と命名。そして、先住民とのコンタクトに成功します。

で、先住民いわく「もちょっと奥にデカイ陸があるよ」と。そして、たどり着いたのが現在のキューバです。当時を思えば新大陸と勘違いしても不思議はありません。

コロンブスが期待した金鉱は発見できませんでしたが、戦利品のひとつに現在のシガーがありました。先住民族が気持ちよさそうな顔をしてプカプカやっている光景を見て、「それは何か? 」と訊ねると「コイーバ」と言ったとか。

余談ですがこの現地語がキューバシガーの最高峰ブランド「COHIBA」の由来です。リングに描かれた女性の横顔は先住民のタイノ族がモチーフ。シガーのブランド名や用語では時折スペイン語と英語読みが交錯しますので覚えておいてください。

1493年1月15日。ひと通りの探索を終えたコロンブスは帰路につきます。ところがこの時、彼はとんでもないドジを踏んでしまいます。航海の最終盤にポルトガルの領海に入り込み拿捕されてしまうのです!

結果的に船団は無事開放されますが、本来なら先に新大陸発見をイザベル女王に報告するはずが、なんとライバルであるポルトガルが先にこの情報を得てしまいました。なんとかスペインに凱旋帰国を果たしたコロンブスですが、この経緯を知った女王側は“こりゃあ一大事”とばかりにローマ教皇に陳情。新大陸の領有権を公的に認めさせます。

ところが列強ポルトガルはその軍事力をチラつかせスペインを交渉の場に引きずり出し、1494年トルデシリャス条約を締結することに成功します。この条約をカンタンにいうと、地面に棒で線を引き「この線からアッチがアンタで、コッチがオレ」と新たな縄張りを獲得したのです。

こうして西欧諸国による大航海時代に本格突入するのですが、最終的に天下を取ったのは18世紀半ばに産業革命を起こした英国でした。そして、ポロを馬賊の遊びから本格的なスポーツへと発展させたように、シガーもまた上流階級から浸透。次第に様式美を確立していきます。日本的にいうなら茶道のようにカルチャーな発展を遂げたと言っては大袈裟でしょうが、ちょっと敷居の高さを感じてしまうのはそんな歴史の重みなのかも知れませんね。

最後に映画を1本ご紹介します。コロンブスの新大陸発見から500周年を記念し1992年に公開された「1942コロンブス」です。監督はあの「エイリアン」や「ブレードランナー」で知られるリドリー・スコット。

主演のジェラール・ドパルデューが想像以上にハマリ役で見応えがあるのですが、イザベル女王にシガニー・ウィーバーを起用。そんな部分も楽しみのひとつです。

史実に基づく作品ですが多少の脚色もあるでしょう。しかし、大陸を超えた宗教や文明の衝突、人間の資質がもたらした開拓の歴史が今を作っていることを思えば、混沌とした現在の世界情勢も理屈が通るかもしれません。

この長編大作を見るのに必要な時間は156分。ダブルコロナ(シガーの一般的な名称・形状のひとつ)のお供に、ちょうどいいい作品に仕上がっています。

Text:Seiichi Norishige
Photo: getty images

1492: Conquest of Paradise - Trailer



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