SONY元異端社員の艶笑ノート

大事なことはみんな女が教えてくれた

「ぼくはサングラスをして働いていた」

2017.1.13 2017.1.13
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2017.1.13

 

職場はザワついたが、ぼくはハードボイルドにこだわった

こうしてぼくは、黒い革ジャケットに黒いズボン、そしてサングラスといういでたちで会社に来るようになった。
はじめてその格好で出社した時、同僚がサッと引くのがわかったが、言い訳などすればハードボイルドではなくなると思い、フン、といった態度をとることにした。今思えばどうかしていたとしか言いようがないが、そんな格好で会社に来て、そんな格好のまま働いていた。

そんなある日、仲良しの女性社員から、
「それ、Gメンじゃん」
と言われた。

©gettyimages

わかる人にはわかるんだと、喜んでいるぼくに彼女は言った。
「でも、髪型が違うよね」
「どう違う?」
「Gメンって長髪だったじゃない。カウンターカルチャーみたいな」
「そうか、どうすればいいかな?」
「好きな刑事はだれ?」
「関屋刑事」
「誰がやってたんだっけ?」
「原田大二郎だよ」
「その時の写真ある?」
「写真はないけど、ビデオがあるから、そのテレビ画面を撮ることはできると思うよ」
「じゃあ、それ、持ってきてよ」
「どうするの?」
「私が行っている美容室で、そっくりの髪型にしてもらおうよ」

想像もしていないことだったが、ぼくは言われた通りに原田大二郎扮する関屋刑事が映ったテレビ画面を写真に撮り、それを持って、表参道の美容室に連れていかれた。

©gettyimages

美容師はかなりのイケメンだった。だから彼女はここに通っているのか? 彼女との関係はどうなのか? などと思ったが、そんなことにかまっている暇はない。どんな髪型にしたいかと聞かれ、ぼくは写真を渡した。
「これ、テレビ画面を撮ったんですよね」
「そうです。Gメン’75です」
「Gメンか! 懐かしいなぁ~」
「そうでしょう! ぼくは関屋刑事が大好きなんですよ。もちろん、倉田保昭が演じている草野刑事も好きなんですが、やっぱり原田大二郎の関屋刑事が一番で……」
「松井さん、そんなことより、早くやってもらわないと! 待ってる人いるんだから」
女性社員から叱られ、ぼくはできるだけ写真とそっくりの髪型にしてくれるよう頼んだ。

そして出来上がりを見てぼくはびっくりした。顔はともかく、髪型はかなり似ていたからだ。彼女も、
「ほんとに大二郎みたい!」
と、手を叩いて喜んだ。
これにサングラスをかけたら、もう完璧だと思った。
かくして、顔以外は関屋刑事になりきることになった。

「スパイが仕事しているようで気持ち悪いな」

Gメンの格好にサングラスをかけるようになってわかったことがあった。向こうから来る人がやたらとガンつけてくることだ。廊下の向こうでぼくに気づいた人は、すれ違うまでずっとぼくに目を合わせていた。相手はぼくの視線が見えないので、わからないのかもしれないが、こちらからはよく見えるので、視線が完全にぶつかるのだ。

©gettyimages

ウソだと思うならやってみてほしい。向こうから来た人はほぼ100%の確率であなたの目をじっと見るはずだが、まあいいや。

サングラスをかけるようになって、パソコンの作業はかなり楽になった。仕事もはかどり、このアイデアを思いついて良かったと思った。
慣れてきたぼくは、場合によっては会議の時もサングラスをかけるようになった。その効果はてきめんだった。

©gettyimages

日本人の会議には、発言しないでただそこにいるだけの人が多いが、そういう人に限って他人の意見には威勢良く反論したりするので、じゃあ自分の意見はどうなんだと聞くと、ゴニョゴニョ言うだけだったりする。だが、サングラスをしてからそのテの反論がなくなった。金髪に染めた人から同じようなことを聞いたこともあった。

だが、いいことばかりではなかった。みんなぼくがグレたと思ったようだった。中学生ならまだしも、20代後半にもなって今さらグレるやつなどいない。しかもぼくが書類を見る時もサングラスをしていたため、アイツはちょっとおかしいと言われた。もちろんサングラスなんかしていたら字が読みにくいのは当たり前だが、ぼくはあくまでハードボイルドにこだわった。

やがて課長から言われた。
「スパイが仕事しているようで気持ち悪いな。どんな意図があるか知らんが、そのサングラスだけは何とかならんのか?」
「でも課長、サングラスするとパソコンが見やすいんです。疲れないし、仕事もはかどります」
「そういう問題じゃないと思うぞ」
課長は口をヘの字にした。

ブレストに参加して希望部署への異動が叶うことに……

ちょうどその頃、社内のブレストに参加しないかと声がかかった。
「ブレストって何ですか?」
はじめて聞く言葉なので課長に質問した。
「ブレーンストーミングだ」
「それは一体何ですか?」

©gettyimages

横にいた後輩が、「直訳すれば、脳の嵐ですね」
「何だそれは? かえって意味がわからないな」
「最近、やたらと、はやりなんだよ。みんなで集まって意見を言い合うんだ」
「会議とはどう違うんですか?」
「脳に嵐が巻き起こるくらい激しくやるってことですかね?」
「お前は黙っててくれ」
「アイデアの出し合いというか、自由に意見を出し合う会議みたいなものだ。まだ日本じゃ一般的じゃないけどな」
「わかりました。とにかく参加すればいいんですね」
「よろしく頼むよ。でも、くれぐれも問題は起こさんようにな」

ぼくはブレストに参加した。この時もぼくはサングラスをかけ、言いたいことを言った。反論もきたが、さすがブレストというべきか、黙って座っているだけの人などおらず、議論は大いに盛り上がった。
その後、続きが何度か行われるうち、主催側の先輩から引っ張られることになった。新しいプロジェクトに参加してほしいということだった。アイデアには自信があったので行こうと思った。当時は現場同士がよければ異動はかなり柔軟で、詳細は割愛するが、こうしてぼくは異動することになった。

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