「カンタータ」の気になるアイテムの魅力を訊く
「こじラグ」でお馴染み、世界の一流品を買い集め続けるシニアエディターのヤナカが、今もっとも気になるものを誇らしげに示すべく、実施するインタビュー企画「こじ×こじ」。
第1回目は、いま最も気になっているブランド「カンタータ(Cantate)」。決して安くはありませんが、日本に古くから伝わる手仕事でしか表現できない職人技を駆使し、昔ながらの上等な生地を、古き良き機械を使って仕立てる姿勢は素晴らしく、欲しくなる物ばかり。後編は、そんなラインナップからヤナカが特に気になったアイテムをピックアップし、そのこだわりについて訊いていきます。前編はこちらから。
ヤナカ:さて、では 2016年の秋冬で僕がひと目惚れして購入したアイテムについて伺いたいんですが、まずは、このローブですかね。込めた想いを聞かせてください。

松島:これは、リバー縫製っていう手縫い仕立てで、二枚の生地を合わせて一枚にしたリバーシブル素材の端にある裁断面を一度剥がして、表面と裏面を縫い閉じる仕立てなんですけど、普通に作ると重いんですよ。しかも、こんなロングのローブだと。でも、冬の朝の散歩にでも着られるような軽いローブに仕上げたかったから、このベビースーリーアルパカを使っています。
ヤナカ:ホント、軽いですからね。
松島:裏面はチクチクしがちなシェットランドウールなんですが、極上のものを選ぶことで、快適な肌触りに仕上げています。しかも、これは染色を一切していないので、自然のカラーリングなんです。
ヤナカ:ご存知の通り、繊維刺激にメチャクチャ弱い僕でも、安心して着られます。

松島:袖のボタンは本切羽、ベルトの位置も高めに設定してあるので、ローブとしてだけでなくコートとしても着られる仕立てに仕上げています。
ヤナカ:続いては、これまた即決した、比翼仕立てのチェスターフィールドコートですが。

松島:これは打ち込みがしっかりとしたスーパー140をトロットロに織ってるウール生地なんですが、無地かシャドウストライプに見えるんですけど、よく目を凝らしてみるとヘリンボーン柄なんです。各パーツは職人の手により、丁寧にクセ取りが行われていて、身体にピッタリとフィットするように仕立てられています。

ヤナカ:サイズ落としてロングジャケットのような気分で着てますが、ホントに調子が良い。
松島:ジャケットは肩で着るといいますが、このコートは首でもしっかりと着ることができるんです。芯地には、生地の質感を損なう接着芯は一切使わず、本バス芯を使用しています。上衿には通気性がよく、衿の形をしっかりと保ってくれるアイリッシュリネンの芯地を使ってますね。袖の裏地には、最高級シルクと極細リネンのシアサッカーを使っているので、袖通しの良さも抜群です。
ヤナカ:あと裏側のポケットですね。
松島:そう。左右の内ポケットとペンポケットに加えて、大きめのマガジンポケットを付けました。ヤナカさんはいつも大きな財布を持ってるから、丁度良いかもですね。
ヤナカ:せっかくなので、来年頭からリリースされる2017年春夏の気になるアイテムついても聞かせてください。最初は、次に狙ってるセットアップから。これは1stシーズンからシルエットは変えずに、素材のみを変えたんですよね?


松島:そうです。2016年秋冬は先ほどのコートを同素材でしたが、春夏では愛知県津島市の紡績工場にある、日本に2台しかないイギリス式紡績機械を使って作り上げたウールモヘア素材を使っています。モヘア24番手糸を3本取りした緯糸と、30番双糸の経糸を使って、ションヘル織機(生地を織る際、木製の大きなシャトルを通すために大きな上下運動が必要となり、生産性を悪化させますが、織り上げた生地に膨らみが出て、仕立てた時に着やすい、立体感のある生地を織り上げる機械)と同じように、ゆっくりとした速度で織り上げています。モヘアは、夏涼しく、着映えもするスーツ素材なので、高温多湿の日本に最も適したスーツ素材だと思います。

松島:それから、南京玉縁や揉玉、松葉閂など、機械ではできない、手仕事ならではの、昔ながらの手法で仕立てています。各パーツは、アイロンで立体成形をしながら時間をかけて縫製しているので、袖を通せば、そのフィット感と軽い着心地に驚くはずです。
ヤナカ:それでは、今回オーダーしたシャツを。

松島:今季は前立てが追加されています。実はフレンチフライって正装じゃないんです。フレンチフライの方が上品に見えるんですが、正装だと思っていたら、イギリスやフランスの格式高いパーティでは前立ての付いたシャツを着るんだそうです。
ヤナカ:えっ! それは知りませんでした…。
松島:もちろん今回も、3cmの間に縫目が何個あるかを表す数値「運針数」は35針で仕立てています。標準的なドレスシャツだと18針ほどなので約2倍。運針数が高いほど、強度もあがり、繊細で美しいシャツになるといわれていますが、縫製の難易度も上がり、職人には高い技術が求められるんです。

松島:生地には、しなやかで光沢のあるトルファン綿を使用し、ボタンにも品のある輝きを放つ白蝶貝を付けてます。生地自体が持つ風合いを生かすよう芯地にはフラシ芯を使用しているので、ステッチが沈み込み、衿にはぷっくりとした凹凸が生まれ、シャツに豊かな表情を与えてくれます。
手首の返しにストレスがないようアールを描いて成形したカフスや、前立ての三つ巻き処理など、熟練工にしかできない職人技が随所に光っていると思いますね。
ヤナカ:これはホント毎日着たい。7枚買おうか悩んだほどですよ。そして、この滅茶苦茶触り心地の良いカーディガンも。

松島:シルク85%、カシミア15%をブレンドした糸を使い、手横(手動式横織機)を使って編み上げてますね。これ実は、2日で1着しか編めないんです…。ジャケットの中に着て丁度良いように着丈は短めですが、羽織ってきてもイイ感じです。それこそ、女の子に掛けてあげたら絶対に喜ぶと思います!
ヤナカ:それは使える! 次はカジュアルで、まずは僕がオーダーしたボーダーシャツですかね。

松島:繊維長が長いエーゲ海コットンを空紡(オープンエンド紡績)で作った糸で作っているため、表面の撚りが強く、中が甘くなっていて、ドライタッチで仕上げられていますが、着るほどに膨らみが増し、身体に馴染んでいきます。縫製はカンタータのシャツを縫っている工場にお願いしていて、サイドにはベント、額縁仕上げにしています。
ヤナカ:カラバリが増えるのを期待しています。では、いまだにサイズで悩んでるデニムについてもお願いします。

松島:これはスラックス代わりにデザインしたデニムなんですが、ジャケット着て、シャツ着て、革靴に合わせることをイメージしています。
ヤナカ:FORZA STYLEの読者にピッタリですね!

松島:出荷時にはセンタークリースを入れてあります。サンフォーキンコットンを使って、岡山の機屋で糸からゆっくりと織り上げたオリジナルのデニムを使っていて、裾はヴィンテージ特有のウネリを出すために、ユニオンスペシャルの43200Gというミシンを使っています。1cmを三つ巻き半で折り、ステッチを8mm幅で縫っています。バックヨークの巻き縫いもコバから0.72mmの場所に針を入れることによって、穿き込むうちにウネリやアタリが出てきます。

ヤナカ:紳さんが穿き込んだデニムは、本当ヴィンテージみたいに育ってますもんね。サイズどうしよっかなぁ。悩む…。じゃあ、最後はベルトを。

松島:素材は、フルベジタブルタンニンを施したプルアップレザーと呼ばれる牛革を使っています。オイルをたっぷりと染み込ませているので、曲げるとオイルが動いていく様子が分かると思います。二箇所の穴に通し、そこに先端を縦方向に差す感じで止めるんですが、全然動かないんですよ。あと、ベルトって使ってるうちにカーブしてくるじゃないですか? あれが良さでもあるんですけど。ただ、伸びてきちゃうとバックルの場合、通す穴の位置が変わっちゃうんですよね。

ヤナカ:せっかく真ん中の穴で通せるサイズのベルト選んだのにって…。あれ、切ないんです。
松島:そうですよね。でも、これなら伸びても問題ないから重宝すると思います。
ヤナカ:やっぱ、全部イイなぁ。買っちゃおうかなぁ…。ちなみに、2017年春夏からって、卸し先も増えるんでしたっけ。
松島:そうですね。今までの1LDK、ビームスに加えて、ワイルドライフテーラー、大阪のシルバーアンドゴールド、名古屋のキンク、京都のヌメロサンク、広島のヴィンセント、香川のグレープスが新規で増えます。
ヤナカ:着々と増えていますね。今後がますます楽しみです。今回はありがとうございました!
さて、"こじラグ"ヤナカ同様、気になった方は各ショップへ行き、その魅力に触れてみてはいかがでしょう? 絶対にときめくはずですから。
Main Photo:Yasuyuki Takaki
Edit:Ryutaro Yanaka

松島 紳
カンタータ デザイナー
北海道出身、古着とフレンチヴィンテージに魅せられ、ファッションの世界に進む。文化服装学院卒業後、多くのブランドでデザイン、企画、生産等を経験。2015年カンタータ(cantate)を立ち上げる。日本最高峰の機屋、工場と直接コンタクトを取りながら、メイド・イン・ジャパンのスタンダード服を創り続ける。
【問い合わせ】
カンタータ(カルネ)
03-6407-1847
http://www.cantate.jp/
【撮影協力】
BAR KOBA
東京都渋谷区富ヶ谷1丁目17−7 第二山栄ビル 1F
03-5738-7833
https://www.facebook.com/shibuyakoba/
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