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BUSINESS SONY元社員の艶笑ノート

「ホープ」と呼ばれた課長の正体

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とんだ我が社のホープ

自己紹介のつもりで書いているコラムだが、これを始めてから減ったものがある。「元上司筋」からの電話だ。ぼくが辞めてからだいぶたつが、つい先日までしょっちゅう電話して来ては自慢話をしていたのに、めっきりこなくなった。ヘタなことを言うと書かれると思ったのかもしれないが、ぼくはそんなことはしないので、どうぞ安心していただきたい。

一方で、増えた人もいた。それは女性だ。これを読んだといってフェイスブックで何名かの女性から友達申請が来たのには驚いた。なぜなら、このテの話に目くじらを立てるのは女性のほうが多いと思ったからだが、結果は逆だった。

©gettyimages

そういえば、最近は飲み屋でも「女性のほうが男らしい」という。このあいだ行った居酒屋でも、飲み物を注文しようとすると、
「最近の男は一杯目からサワーなんか飲むやつばかりだ」
と店長に怒られた。
怒ることないじゃないかと思ったが、注文を取る際に手間ばかりかかってめんどくさいのだという。
反対に、女性のほうが「一杯目はビールだよね」と、さっぱりしているというし、女性のほうが好きなものを注文するらしい。男性は糖尿病や痛風が気になるのか、脂っこいものを我慢し、野菜だのサラダだの(同じか…)を食べ、〆のラーメンはスープを飲むなとか細かいらしいが、まあいいや。

花形部署の若手のエース

サラリーマンとして4~5年が過ぎた20代後半の頃、「中堅社員研修」というものに参加したことがある。これは一定の年齢が来た社員が受けることになっている研修で、3日間ほど施設に缶詰になり、与えられたテーマについて徹底的に議論するというものだった。
その中に一人、異彩を放つ男がいた。

©gettyimages

堂々とし、発言も単刀直入な感じの男性で、年齢は30代前半、ポストは課長だと言っていた。バブル入社で社員が溢れていた世代のため、30そこそこで係長なら上デキといえる中、課長ともなれば異例の出世だ。相当な器であるのは間違いなく、まさに若手のホープといった感じだった。

名前は青田さん(仮名)と言った。
所属はプロ用映像機器の事業部とのことで、高い技術を駆使して最先端の製品を開発している部署で、納入先も放送局や映画会社など、プロ中のプロばかりを相手にしていた。
花形の職場でしかも最先端の仕事ともなれば、その内容を知りたくなるのが人情だ。具体的にどんなものを作っているのか聞いてみたところ、機密性の高い担当だからということで、詳細は話せないという。
同じ会社の人間にも、やたらには情報を漏らさないとは、信用できる人だと思った。しかしそう言われるとますます知りたくなるのも人情で、何とかお願いし、可能な範囲で話してもらえることになった。

©gettyimages

ところが、聞いたことのない英語の専門用語ばかりで全く意味がわからないので、日本語で説明してもらえるよう頼むと、今度はやたらと回りくどくなり、かえってわからなくなるほどの難しさだった。
何しろ世界最先端の技術である。ぼくのような凡人の頭では理解できなくても仕方ないと思った。でも、こんな優秀な人がいるからこそ会社が発展し、社員が食っていけるのだと思った。

誰も思いつかない意見を連発で大混乱

研修は与えられたテーマについて議論するスタイルだった。
みなで一つの結論を出すものをはじめとして幾つかのやり方があったが、盛り上がったのはディベート形式のものだった。
今ではすっかり知られているが、当時はまだ日本ではディベートなどというものが一般的ではなく、
「何で自分の意見じゃない立場を演じなきゃいけないのか」
「何でホンネで議論してはいけないのか」
と、講師に食ってかかったり、トレーニングであることを忘れて怒ってしまう人もいた。
当時のサラリーマンはみんな熱くて正直だった。

©gettyimages

そんな中にあって青田さんは常に雄弁だった。
意見を言うのはいつも最後だった。みんなの意見が出尽くした頃、必ず、まだ誰も言っていないことを言った。その内容はみんなが目を白黒させるようなもので、ほとんどまとまりかけていた結論を最後の最後で全てひっくり返してしまうほど、他の人とはかけ離れたものだった。

そのパターンが繰り返されたので、毎度議論の終わりに近づくと、青田さんがまた結論をひっくり返すに違いないと、まるで膨らみ続ける風船がいつ破裂するかを首をすくめて見守るかのように、みんな身構えるようになっていた。そのため、締め切り時間になってもなかなかグループとしての結論がまとまらず、発表は常に後回しになった。

NEXT>>>そんなまさか! 青田さんは○○だった…。



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