2色買ってるからって、ネガティヴ履きはしませんよ(笑)
さて、第25回めは「ジョンロブ」のジョッパーブーツ、JODHPUR IIです。ある日、フラッと有楽町の阪急メンズ館に立ち寄ったら、地下のエスカレーター脇ディスプレイにタバコスエードのなんとも美しいジョッパーブーツが飾られていたんです。吸い寄せられるかのように近づくと、ジョンロブ ジョッパー IIの文字。ジョンロブのジョッパーといえば、高度な吊り込みに相当な技術と時間を要すため、2004年にディスコン(廃盤)になり、バイリクエストでしか入手できなかったはずなのに…。
で、調べてみると、リクエストの声が多かったため、2014年秋冬コレクションにて「JODHPUR II(ジョッパー2)」として再登場したとのこと。しかも、ズレてしまいがちだったストラップに、新たにループが付属されるというアップデートを遂げて。

「欲しいぃ〜」と喉の奥から手が飛び出してしまうほどでしたが、値札見ると23万7,600円…。おいそれとは買えません。その日は苦虫を噛み潰したような顔で帰宅。帰り道はモーゼが海を渡るかの如く道が開けていたのは、道行く人たちが僕の鬼気迫る表情から"カチコミ"を想像したからに違いありません。誰が、アウトレイジ顔だっ(笑)!
ただ、まったく頭の片隅、いや全面から離れない、あの美しさ。念仏のようにジョッパー ジョッパーと呟いてしまって、周囲にも迷惑をかける有り様…。こりゃ、精神衛生上良くないと思い、購入を決断!

しかし、こんな高額なスエードのドレスシューズってアリなのか?と、自問自答。ワークブーツの類いなら味が出てカッコいいけど、ドレスシューズはダメだろうと方向転換し、ジョンロブの定番、ムラ色に仕上げられたダークブラウンのミュージアムカーフを恒例の清水ダイブで手に入れました。
いざ、履いてみたら、これがホント何にでも合う。しかも、7000番ラストは甲が高く、若干ノーズが長めで、以前買って挫折した8000番ラストのCITYとは異なる、履き心地の良さ。これなら僕のワガママこじらせフットでも安心! こんなに美しくて履き心地も素晴らしいなら「他の色も欲しいなぁ」なんてバカなことをボンヤリと考えていました。
そんなある日、飛び込んできた値上げのニュース。税込みで30万オーバーになるとのこと…。文字通りアタフタしていると、さらに追い打ちで、廃盤となりバイリクエストもできなくなるとの報……。OH! もう、悩んじゃいられない。買わない後悔に苛まれるより、買った後悔の方がナンボかマシ! 2度目の清水ダイブを華麗にキメてやりましたよ。

ただ、いくら「良い靴は、素敵な場所へと連れて行ってくれる」なんて云われてても、少しばかり反省…。このクラスの靴を2色買いしてたら、お金がいくらあっても足りません。火の車となりそうな家計を案じ、奥様からの業火だって甘んじて受け入れなくては。
でも、喉元過ぎればアツさを忘れる。最初に出逢ってしまったスエードがなくなってしまう前に、なんとか手に入れようと画策しているのは、ここだけの秘密です。
Photo:Ko Maizawa
Text:Ryutaro Yanaka

『FORZA STYLE』シニアエディター
谷中龍太郎
さまざまな雑誌での編集、webマガジン『HOUYHNHNM』編集長を経て、『FORZA STYLE』にシニアエディターとして参画。現在までにファッションを中心に雑誌、広告、カタログなどを数多く手掛け、2012年にはニューバランス初となるブランドブックも編纂。1976年生まれ。