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【愛人契約してくれるパパが欲しい、女子大生です】
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愛人契約してくれるパパが欲しいって、いけないことなんでしょうか?

日本の哲学者小川先生だからこそできる、哲学的・お悩み相談室! さて、今回の相談者のお悩みを紹介しましょう。

今回はなんと、「パパが欲しくてたまらない」という質問者さんからの難問。パパといっても実のパパではなく要は「愛人契約したい」ということです。さて、小川先生は何と答えてくれるのでしょうか?

Q.パパ活してます☆ でも、友達にドン引きされるんです。
(22歳女子大生)

小川先生こんにちは。22歳の女子大生です☆ 私、最近流行りの「パパ活」をしています。要は、パパを探す活動のことです。パパを探しているといっても、実の父を探しているわけではありません。実の父は、実家の富山で母と仲良く暮らしていると思います。でも、私は実の父ではない「パパ」が欲しいんです。要するに「愛人」になりたいってことです。

お金持ちの愛人になって、月100万円くらいもらって、家賃も払ってもらって、その家に愛人が来ない時はイケメンを連れ込んだりして、あとは、エステとか整形とかして可愛くなって、夜は西麻布や六本木で芸能人とかと飲み明かしたりして、キラキラした生活をして生きていきたいと思っています。

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あとは、パパに海外旅行とかも連れてってもらって、その様子とかをインスタとかにアップして自慢もしたいです。でも……このことを友達に言うと、ドン引きされるんです。「お金目当てでオジサンと付き合うなんて、汚らわしい」というようなことを言われますが、私はパパが欲しいんです……。小川先生、どう思いますか?

A.パパにお金をもらうことも、親にお金をもらうことも、
変わらないように思いますよね!? でも……

気のせいかこの悩み相談コーナーには、どんどん強烈な人が出てきますね。「どうしたら素敵なパパができますか?」って無邪気に言われても……ねぇ。ここで頭の固い哲学者なら、「しっかり働かんかい!」と怒るところでしょうが、私は超がつくくらい頭の柔らかい哲学者なので、そんな普通過ぎることは言いません。

パパ活、いいじゃないですか。イケメンを連れ込んで芸能人と飲み明かしてキラキラした生活を送るですって? いいねぇー。頭の固い人と私との違いはいったい何か? きっと頭の固い人は自分の中に絶対的な基準があって、それに反しているから腹が立つのでしょう。でも、この世に絶対的な基準などあるのでしょうか? こと幸福感に限っては、そのようなものは存在しないように思います。

古代ギリシアの哲学者プロタゴラスをご存じでしょうか。「人間は万物の尺度である」という言葉で有名な人です。これはいわゆる相対主義と呼ばれる思想です。彼は相対主義を次のようなわかりやすい言葉で表現しています。「実際、どんなものでも互いに較べれば、どこか似ている点はあるのだ。白だってある点では黒に似ているし、硬さだって柔らかさに似ている。その他の互いに正反対だと思えるものでもそうだ」。

白と黒が似ている。うーん、たしかにどっちもシックな色ですからね。硬さが柔らかさに似ている。フランスパンは硬いですが、石に比べると柔らかいですもんね。そういう目で見てみると、愛人のパパにお金をもらうのも、実の親からお金をもらうのもそう変わらないように思えてきます。前者はだめで、後者がOKな理由は何でしょうか?

親には責任がある? いくら親でも月100万円仕送りする責任はないと思うのですが。22歳の女性が夜飲み明かすのと、おじさんがスナックで飲み明かすのとはどう違うのでしょうか? なんとなく22歳の女性だと不謹慎に思ってしまいがちですが、それはもう差別の域ですよね。

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というわけで、プロタゴラスの相対主義にのっとって考えると、自分が持っているいい悪いの基準は、かなり怪しいものであることに気づかされます。なにより相手が進んでパパになるというのなら、お互いハッピーなのですから、もう祝福さえしてあげたくなりますよね。婚活や妊活をしている友達がうまくいったらお祝いするように、パパ活をしている友達がうまくいったのなら、ドーンとお祝いしてあげればいいじゃないですか。経済力のある相手を探す婚活となんら変わらないのですから。

今回の相談は、正しい人生や理想の人生について考えさせられるとてもいい内容だったと思います。キラキラした生活の定義は人それぞれ。自分が納得していればそれでいいのです。え、もし私の娘が同じようなことを言ったら? それは別の話です。もちろん喝を入れますよ! パパ活ならぬ「パパ喝」です。だって、相対主義だからみんなを同じように扱う必要はないのです。

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Text:Hitoshi Ogawa
Photo:雪ボタン、Getty images

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【小川仁志】
1970年京都市出身、京都大学法学部卒。伊藤忠商事に入社するも退職し、4年間のフリーター生活を経て名古屋市役所に入庁。その後名古屋市立大学大学院博士後期課程を修了し、博士号取得。2015年には山口大学国際総合科学部准教授となる。専門は公共哲学、および政治哲学。商店街で哲学カフェを主宰するなど、市民のための哲学を実践している。哲学に関する著書多数。 


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