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第36回 志賀直哉がこよなく愛した、兵庫県・城崎の温泉宿「三木屋」

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国土の歴史的景観“登録有形文化財”に泊まる 文豪とその妻の静かな休日

昭和2年に再建した「城崎温泉 登録有形文化財の宿 三木屋」は、旧き良き日本の温泉街である城崎温泉の中心部に佇む、創業300年の日本旅館。文豪志賀直哉が定宿とし、名作短編「城の崎にて」がここで生まれました。

国の登録有形文化財に認められた昭和2年築の木造建築と300坪の日本庭園の風情はそのままに、2013年11月にロビー・ダイニング・大浴場など大規模リニューアルを行い、歴史とモダンが融合した現代の日本旅館に生まれ変わりました。

今回は文豪志賀直哉がこよなく愛したこのお宿で、文豪とその妻気分で滞在を楽しんでいただければと思います。

まずは、ロビー横のラウンジスペースのライブラリー。本のセレクトは城崎温泉の出版NPO「本と温泉」にも関っているブックディレクターの幅允孝氏が手掛け、「本を読みたくなる本棚」が設置されています。 ゆったりとしたソファと落ち着いた照明の中に“本”のある空間は凛とした空気が流れ、一日中居ても飽きない居心地の良さがあります。

奥様は、日がな一日、本と戯れるのはいかがですか? 何かとわがままで気難しいと言われる作家の旦那様から少し解放される、そんな気分が味わえそうです。

作家気分のご主人は、原稿から少し顔をあげて窓の外を覗いてみてください。周囲の大師山の自然を借景に取り込み、当宿裏に流れる大谿川(おおたにがわ)を引き込んだ池を配した、約300坪の池泉回遊式庭園が目の前に広がっています。志賀直哉の小説「暗夜行路」に描かれたままの姿を今も残しており、光が差し込む穏やかな日中の風景とライトアップを施した幻想的な夜間の眺め、どちらも時の流れを忘れさせてくれます。

春の木屋町通りの桜、夏のサルスベリ、秋の紅葉とツワブキ、冬の一面雪景色。四季折々で変わる表情を、ロビーの月見台から、そしてお部屋の縁側からゆっくり眺めればかけがえのない時間を実感できるでしょう。

部屋の縁側から眺める庭園に四季の移ろいを感じつつ原稿と向き合う、ライブラリーで時を忘れて読書にふける...。思い思いの時間を過ごした後は、浴衣に着替えて気の向くまま、ふらりと外湯めぐりなんていかがでしょうか? 開湯1400年を誇る城崎温泉に流れる、大谿川に点在する7つの外湯には、それぞれに由来と数々の言い伝えが残っており城崎温泉の歴史の深さを物語っています。浴衣姿にカランコロンと2人で下駄の音を鳴らしながら、旅情たっぷりの外湯めぐりを満喫してみては?

お風呂を存分に楽しんだ後は、お食事。木の暖かみを感じる、モダンで落ち着いたなダイニングで日本海の幸、但馬ならではの数々の自然素材と四季折々の味覚をふんだんにつかった郷土料理はまさに絶品! 地酒と一緒にお2人でしっぽりと楽しめるはず。

今宵お2人がお泊りいただく庭園側和室は、付書院や床脇の違い棚など歴史を感じさせる書院造の客室です。緑豊かな庭園に面しており、静かな時間の流れを感じさせてくれます。

そして是非ご覧にいれたいのが“志賀直哉ゆかりの客室”。「城の崎にて」執筆当時の建物は大正14年に北但大震災により倒壊。その後昭和2年の再建以降から昭和30年代まで幾度となく足を運んだ文豪志賀直哉。その際の彼のお気に入りのお部屋が26号室で、現在も当時のまま残されています。

縁側からは「暗夜行路」に描かれた庭園を眺めることが出来、彼が眺めたであろう景色を見ながら、当時に思いを馳せることが出来ます。事故に際した自らの体験から、徹底した観察力で生と死の意味を考え執筆された「城の崎にて」。彼は一体ここでどんなことを考えながら作品を作り上げていったのでしょうか? 歴史と伝統のある旅館三木屋は城崎温泉街の風情を大切にし、この但馬の奥深い自然の中にある、遠い昔を思い出させるような懐かしい静けさや情緒が、名作を生み出した文豪の想いに気持ちを寄り添わせます。

さて、そろそろ一作完成したのでは? ロビー横のライブラリーでゆっくりと旦那様の作品に目を通してみてください。今回はいい作品が書けているような予感がしませんか?

Text : Akiko Uehara

【城崎温泉 登録有形文化財の宿 三木屋】
兵庫県豊岡市城崎町湯島487
0796-32-2031
http://www.kinosaki-mikiya.jp/

【宿泊料金】 
平日・休日 1万6,200円~(1泊2食付1名様あたり/税・サ込み)
休前日  1万8,360円~(1泊2食付1名様あたり/税・サ込み)
*入湯税別
*今回ご紹介した庭園側和室は土曜日宿泊で、1名様当たり21,600円になります。



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