抜群の安定感を誇る「サブマリーナー」の入門機
腕時計の市場、特にヴィンテージウォッチの場合、投資やファンドの資金が流れていることから景気や経済の動きに非常に敏感です。
イギリスのEU離脱や円高が進む最中、普段はなかなかお目にかかれない個体が出回り始めていることからも変化の波が訪れていることをヒシヒシと感じます。天井知らずの高騰ぶりを見せていたヴィンテージロレックスの相場はどのように変動を見せていくのでしょうか?
安易な発言は避けたいところですが、確実に言えることは、不況の影響もあって中には値崩れする個体も出てくると思いますが、目の肥えたコレクターに評価されるレベルの一本であれば、価値を落とすどころか、このまま値上がりし続ける可能性が高いと考えられます。
そこで今回は安全な投資という意味も込めて、ヴィンテージロレックスのスポーツウォッチの登竜門であり、基本中の基本である「SUBMARINER(サブマリーナー)」のRef.5513マットダイヤルをご紹介します。

極上のミラーダイヤルなら300万円前後、軍用モデルなどのオークション級の個体であれば数千万円はくだらないRef.5513において、マットダイヤルのRef.5513は唯一100万円台前半からの購入が可能です。
以前は同じマットダイヤルでもカレンダー付きのRef.1680が人気でしたが、この数年は3針のシンプルで無駄のないデザインのRef.5513の評価が高まっています。
確かにRef.5513で同士で比べると雰囲気という点ではミラーダイヤルに劣るかもしれませんが、マットダイヤルは経年変化する個所が少ないため、コンディションでの個体差がそこまでないことや玉数が多いことから比較的探しやすいのもまた魅力です。
この数年で2倍近く値上がりしたことに加えて、製造年数が長かったRef.5513のマットダイヤルはマニア間でディテールの細分化が行われ、それが評価の対象に繋がっています。
なお、コチラの個体は大変希少な1977年製の通称“プレコメックス”と呼ばれるモデルです。

「サブマリーナ」を凌ぐ防水性能を持つダイバーズウォッチ「SEADWELLER(シードウェラー)」はフランスの潜水作業専門会社コメックスとの共同開発から生まれたことで知られています。その前身となるヘリウムガス・エスケープバルブを装備した「サブマリーナ」Ref.5514は、今では1000万円オーバーは確実のれっきとしたコレクターズアイテムとなってます。
このRef.5513の文字盤はコメックス社のロゴを入れるために作られたものだと言われ、その他のRef.5513の文字盤と比べると微妙にディテールやレイアウトが異なります。価格はRef.5513のマットダイヤルとしてはやや高めですが、それでもミラーダイヤルと比べるとだいぶお値打ち感があります。
この他にもマットダイヤルのRef.5513は“メーターファースト”や“マキシダイヤル”と呼ばれるスタイルなどが存在しますが、どれを購入しても個体のクオリティさえ高ければ、「サブマリーナー」の安定したデザインや資産的な価値は損なわないかと思います。


基本中の基本ですが、ヴィンテージウォッチに防水性のを求めるのは仮にダイバーズウォッチであろうともNGですから、あくまで見た目とコンディションを最重視しての購入をオススメします。プラスティック製のドーム型の風防をはじめ、いまの時代の時計と異なる素材使いにも注目するとヴィンテージウォッチの奥行きをより理解しやすくなります。
同じような個体でも夜光の焼け具合やブレスレットの違いひとつで誰とも被らないスタイルが楽しめる。マットダイヤルのRef.5513はそんなヴィンテージロレックスの魅力を余すことなく教えてくれる入門的な一本だと言えますね。
Photo:Yasuhisa Takenouchi
Text:FORZA STYLE