イタリア人の「いい加減さ」が生み出す芸術的なラペルのダブルブレスト。
中村:タリアトーレのもので、11万5000円になります。
干場:こちらを選ばれた理由は?
中村:生地をご覧いただくとお解りかと思うんですが、こちらも先ほどのオリジナルよりさらに凝った生地なんです。よく見るとチェックになっています。ダブルブレストで、少し広めの衿幅に、やや外側にカーブした衿の形が特徴的です。
干場:綺麗ですね。
中村:イタリアのダブルブレストはラペルのラインがとても美しいですよね。あと、高めのウエストシェイプなのでスタイルがよく見えるんです。
干場:近年、ようやくダブルブレストが定着してきましたよね。
中村:とはいえ日本では、なかなかビジネスシーンでダブルを着る方って少ないですよね。また私たちはバブル世代なので、当時のダブダブのダブルのイメージがあり抵抗のある方も多いんですが、今はもうそれとは全く別のものになっていますよね。ダブルブレストは体を布地で覆う面積が大きいため、気になるお腹回りを隠せるという利点もあるので、ぜひお勧めしたいです。先ほどの3ピースも同様にお腹周りを隠してくれますよ。
干場:なるほど! では40代には体型カバーにダブルブレストや3ピースを選ぶ、という一手が効果的という事ですね。
中村:この価格帯のイタリアメイドのスーツと、先ほどのビームスオリジナルの日本メイドのスーツを比べると、日本の縫製技術の方が高いんです。でも、このラペルの曲線やなんとも言えない雰囲気を出すのが本当に上手いんですね、イタリアのものって。なかなか日本のものは敵わないんですよね。着てみると更にわかるんです。
干場:今まで沢山のスーツを作られていますが、それでもそう思われるんですね。
中村:日本にも優秀なモデリストの方が沢山いらっしゃるんですが、違うんですよね。イタリアの良い意味でのいい加減さが、味として出ているのかと思います。日本の工場はゆっくりと丁寧に縫いますが、イタリアの工場は、ばーっと一気に縫ってしまうんです。まるで一筆書きのような要領なんです。
干場:真面目過ぎない、こなれた雰囲気がいいですよね。ところでタリアトーレはどのようなブランドなんでしょうか。
中村:タリアトーレは1998年にイタリアのプーリア州で創業した今、最も勢いあるブランドのひとつです。タリアトーレは裁断士という意味で、現社長のピーノさんの祖父が靴の革を裁断する職人さんだったことから由来しているそうです。
干場:ここ最近、台頭してきたブランドですよね。
中村:ここ4~5年、日本で人気が出てきました。以前より改良されて日本人にも着やすいパターンにモデファイされてからです。
干場:このパンツはノータックですか?
中村:これもワンプリーツですね。今はイタリアに行くと、本当にプリーツ入りのパンツが増えていますね。元々スーツはエレガントに着るもの、という定義があるんですが、ドレスクロージングがスポーティ化していく中で、スーツのパンツもノープリーツ、というスポーティ化が進んでいったんです。近年、またその反動が来ており、少しづつエレガントに回帰してプリーツ入りが出てきています。