一体、「モナコ」の何がすごいんだ? それってかなり鋭い質問で、はっきりいって機能的には特別な点は何もありません。では何故にオススメなのか? それは一言でいえばレトロ感、そして「定番としての絶対的な存在感」だと言える。
例えば、このスティーブ・マックイーン愛用のモデルに限定すれば。このカラー。なんともいえないブルーのマットな色合いが、60年代~70年代のテイストを強く意識させる。独特なマットブルーはこの「モナコ」以外では現在において見ることはできない。
最近では「復刻」というものが流行している。しかも中には当時のスピリッツを時計に反映した物さえある。それはどちらかというと「復活」に近いもので、「復刻」とは意味合いが違ってくる。
オリジナルと単なる復刻モデルでは片付けられない名品たち
「モナコ」のスティーブ・マックイーン仕様はこれまで幾度か発表・販売されている。その中で『栄光のル・マン』で使われたモデルに関係するモデルだけで見れば、いままで4本が一般販売されている。
まず1969年あたりに発売された「クロノマティック モナコ」。スティーブ・マックイーンが『栄光のルマン』で利用しているもの。ケースはポリッシュ仕様である(磨かれている)。
2本目は2008年頃復活した「モナコ スティーブ・マックイーン(CAW2111.FC6183)」。現行モデル。デザインは当時のものと異なり、リューズ位置は右。要するに、現在の「モナコ」にデザインやカラーに近い。旭光のブルーのものを今っぽくしたためだろう。Cal.12を搭載。39mm。
3本目は2009年に1000本限定販売された「モナコ 40周年記念スティーブ・マックイーン」。リューズ位置は左でCal.11を搭載している。デザインはオリジナルに忠実。ブルーの色も忠実に復刻させている。ストラップも黒レザーにパンチングが施されている。タグ・ホイヤーのロゴは前身のホイヤー社のものとなっている。38mm。
そして4本目が昨年発売された復刻モデル「モナコ(CAW211P.FC6356)」。39mm。現行モデル。3本目の後継として、オリジナルに忠実なモデルとなっている。違いは1mm小さなケース幅。自分にとっては「なんでやねん」的な時計であるが、マックイーンが好きならばこれが一番“購入できる”オススメです。
「モナコ」のブルーのデザインはすでに誕生から半世紀以上の時間が経過している。デザインがほぼ変わらずに「復刻」「復活」する時計ははっきりいってほとんどない。しかも「モナコ」ほど支持されている時計はまったくないと言える。それでいて、ケースの仕上げなどは50年分驚異的に進化を遂げている。変わらずに変わる境地にある時計なのである。
ホイヤー社は1985年に資金難からTAG(テクニカルアヴァンギャルド)から援助を受ける。それを機に社名をタグ・ホイヤーとする。また1999年にはLVMH(簡単に言うとルイ・ヴィトンのグループ)の傘下となり今に至る(傘下にはウブロ、ゼニスがある。また株式交換でブルガリも系列となっている)。
さて、冒頭でも述べたが、マックイーンは映画でいろんな時計を利用している。「モナコ」と対極にあるアールデコ調の“あるブランド”の有名シリーズをマックイーンは使って当時話題をさらった時計がある。『栄光のル・マン』より3年前のことである。次回はそのお話。
Text:Noritaka Ishida
【問い合わせ】
BEST新宿本店
03-5360-6800
http://www.ishida-watch.com/