STYLE 11
「気分を変えたい出社日は、ジャケットスタイルでカジュアルに!」
いつの時代も、女性たちが好む大人の男性のスタイルは、あんまり変わらないのです。基本的に、清潔感があって、シンプルなスタイル。流行の洋服を着ているより、普遍的で質の高いものをさり気なく着ている男性のほうが好感もてるんだそうです。そこで、小誌編集長でありファッションディレクターの干場義雅が、ほぼ週替わりでその着こなし方をご紹介。王道のコンサバをベースにしつつ、古く見えないように時代感を取り入れ、ちょっぴりセクシーに味付け。干場流“エロサバ”コーディネートをレクチャーしていきます。
さて今回は、カジュアルなジャケットスタイルをご紹介したいと思います。月曜〜金曜の出社日に、いつもカチッとしたスーツというのは、さすがに疲れるので、ジャケットスタイルも多用するのですが……。
実は、このスタイル、今までに使用したスーツのある部分を使用しているのですが、お分かりになりますか? この連載をよく見ていただいている方なら、一発でお分かりになると思いますが、一応、念のため下の写真と見比べてみてください。
そうなんです、実はSTYLE02で紹介したスーツのパンツだけを利用しているのです。グレーの無地のスーツは、上下ばらして着ることが出来るんです。
もちろん、ネイビースーツだって出来るのですが、グレーパンツ単品でも勝負出来る場面の方が多いので、グレーのスーツの汎用性には敵わないのであります。しかも、選ぶなら無地のものがベスト。これがストライプだと柄が入ってきてしまうので、上に着るジャケットとも合わせ難くなってしまう。だから、グレーのスーツは無地がいいのであります。
さらに言えば、いろいろなジャケットの色に似合うミディアムグレーがベスト。これがライトグレーだと、色が明るすぎて春夏っぽく見えてしまうんです。チャコールグレーでもいいのですが、今度は色が濃すぎて秋冬っぽく見えてしまう。だから、シーズンを少しでも多く着ることを考えて仕立てるなら、
グレーのスーツは、無地で、
ミディアムグレーがベスト。
さらにさらに言えば、スーツの組下のパンツを2本作っておけば、使用頻度が高くなって痛んで穴が空いても、もう1本予備があるから、さらに長く使えるのです。時には、スーツとして。時には、パンツとして。
さらにさらに、さらに言えば、僕がグレーのスーツを仕立てるときは、
同じ無地で、同じ色合いで、春夏用の生地と秋冬用の生地で2着仕立てています。
要するに、スーツを1着オーダーするのではなく、スーツを2着オーダーし、さらにパンツを2本追加するのです。その方が効率的で、何年も着ることが出来、何年も悩まなくて済むからです。グレーの無地のスーツは、使える5段なのであります。
これは、洋服を家一軒分ぐらい買ってきた僕なりの結論(笑)。お金に余裕がある方とか、もうあれこれ毎日のスタイルで悩みたくないという方におすすめします。
さて、今回はジャケットのお話しでしたよね。今回、着ているジャケットは、お気に入りのエルメネジルド ゼニアのものであります。連載の「エコラグ」でも紹介していますので、詳しくはコチラをご覧になってくださいませ。とにかく、素材が気持ちいいんです。
これは、僕には珍しくシルク100%のものなんですが、タッチがカシミアのようなんです。しかも、シルクのようにギラギラした光沢じゃなく、カシミアのように上品な光沢があるんです。
ややこしいのですが……。シルクだから良いのに、シルクのギラッとした光沢は嫌なんです。光沢が強すぎると、どうしても光沢に目が奪われてしまい、中身に目が行かない。ジュエリーをジャラジャラつけていると、そこばっかりに目が行ってしまって、肝心の中身に目が行かないのと同じ理由。見て欲しいのは、自分の中身です。だからこそ、僕はなるべく、光沢がある素材は避けるようにしているんです。
良い素材は、
良い発色を生む。
これが化繊だったら、こう上品な素材特有の色は出ないんです。
洋服も料理と同じ。
素材が大切なのです。
僕が常に素材にこだわるのは、こういう理由からなのです。ちなみにですが、今回上に着ているコートは、とっても柔らかいカシミアのもの。メランジ調のグレーのようなベージュの色が上品でいいでしょ。こういうブラウンに似合う色では、最近注目している色です。名付けて……。
カプチーノ色。
良かったら、皆さんも取り入れてみてくださいね。グレーにも、ネイビーにも、ブラウンにも似合って、上品に見せてくれますよ! ちなみにですが、この色を「カプチーノ色」だなんて、ロマンティックで寝ぼけたようなこと言っている人は、おそらく全世界的に見ても僕だけなはず。
ちなみに、ちなみに、5年前ぐらいはミルクティ色と呼んでいました(笑)。そうしたら、あろうことか、どこかの雑誌で、急に「ミルクティ色のコートがブレイク!」とか言っていて、後ろにコケそう5段になりました(笑)。ミルクティ色とか、ロマンティックで寝ぼけたようなこと言っていたのも、恥ずかしながら僕であります。
そうそう、色の話をひとつ、言うのを忘れていましたね。
イタリアでは、青と茶の組み合わせのことを、「アズーロ・エ・マローネ」なんていう言い方をします。
アズーロ=青。マローネ=茶。エ=&(と)。青と茶の組み合わせが、本当に好きなんですよね、イタリア人は。お洒落なイタリア男を見ていると、だいたい、この色の組み合わせをやっています。その取り入れ方は、人それぞれ、さまざまなので……。よく、ファッション雑誌でやっているスナップ特集なんかを注意深く見てみると面白いと思いますよ。
ちなみに、今回の僕の場合は、
コートとジャケットとベルトと靴が茶系。シャツとネクタイと靴下が青系。
で、さらに言うと、ココでは見えませんが……。
メガネのフレームの色が茶系で、レンズの色が青系。腕時計のクロコダイルのストラップが茶系で、文字盤の色が青系。←細けい(笑)
なんか、つまらない冗談みたいで、寒い空気になってしまったので、今回はこの辺で。
では、また!
Photo:Kazuya Furaku
Text&Styling&Model:Yoshimasa Hoshiba
アイテム
コート/ブルネロ クチネリ
ジャケット/エルメネジルド ゼニア
パンツ(スーツの組下)/BR.SHOP
シャツ/インダスタイル
ネクタイ/ブルネロ クチネリ
ベルト/ジャン・ルソー
ソックス/カルツェドニア
ウォレットチェーン/Mフラテッリ
腕時計/セイコー
靴/WH
(すべて干場私物)
エロサバ-Hoshipedia
「エロサバ」とは、“エロいコンサバ”の略で、干場の哲学により生まれた造語。シンプルでベーシック、コンサバティブな洋服を着ているのにも関わらず、着こなし方次第でSEXYにエロく見えるスタイルのこと。例えば、一番象徴的なのは喪服の女性。成熟した大人の女性が喪服を着て、メイクも抑制しているのに、なぜか色っぽく見えるスタイル。例えば、上質な素材の普通の白いシャツを着ているのにも関わらず、胸元のボタンを2~3個開けてセクシーに着こなしたり、袖口を捲って腕元を見せてヌケ感を出すスタイル。単なる粗悪な、しかもデザインが変わっている白いシャツでは駄目。上質な素材のベーシックな白いシャツだからこそ、エロく着こなしても、上品さを保つことが出来るのです。男性で例えるなら、自分の体型に合って仕立てられたミディアムグレーの無地のスーツを着て、上質な白シャツに無地のグレーのネクタイのような極めてコンサバティブなスタイルをしているのにも関わらず、内側から大人の色気が香るようなスタイル。要するに、さり気なく上品に見えるコンサバなアイテムを着つつも、エロく見えるスタイル。これが「エロサバ」スタイルの根幹でありキモ。
『FORZA STYLE』編集長
干場義雅
尊敬する人は、ロロ・ピアーナの元会長セルジオ・ロロ・ピアーナさん、ピエール・ルイジ・ロロ・ピアーナさん、トッズの会長ディエゴ・デッラ・ヴァッレさん、格闘家のブルース・リーさん、初代タイガーマスクの佐山サトルさん。
スポーティでエレガントなイタリアンスタイルを愛し、趣味はクルーズ(船旅)と日焼けとカラオケ。お酒をある一定以上飲み過ぎると、なぜだか一人感無量状態になって男泣きする現在42歳の小誌編集長。東京生まれ。