STYLE 10
「春の兆しが感じられる仕事の時は、コートの色を少し明るく!」
いつの時代も、女性たちが好む大人の男性のスタイルは、あんまり変わらないのです。基本的に、清潔感があって、シンプルなスタイル。流行の洋服を着ているより、普遍的で質の高いものをさり気なく着ている男性のほうが好感もてるんだそうです。そこで、小誌編集長でありファッションディレクターの干場義雅が、ほぼ週替わりでその着こなし方をご紹介。王道のコンサバをベースにしつつ、古く見えないように時代感を取り入れ、ちょっぴりセクシーに味付け。干場流“エロサバ”コーディネートをレクチャーしていきます。
さて、節分も過ぎ、暦の上では春になったわけですが、まだまだ寒いが続いております。そんな時は、コートの色味だけ明るくすると、ちょっぴり気分が明るくなるのでおすすめです。例えば、今回のスタイルは、実はSTYLE06とほぼ同じ。
コートを変えただけなんです。もっと言ってしまえば、中身はSTYLE02とも同じなんです。なんだコートの色が違うだけじゃん! って思うかもしれませんが。まぁ、今回もそんな感じです。
でも、細部をよ〜く見比べて欲しいんです。コートの色が、ミディアムグレーから、ライトグレーに変わっただけじゃん? いやいや、違うんです。コートのカタチが、ダブルからシングルになっているし、着丈だって、少し短いものを着ているんです。こうすることで、軽やかさが演出することが出来るんですね。
僕のコーディネイトは、そんなにパターンがないんです。基本は一緒です。一緒であることが、自分の「スタイル」だと思っているんですが……、実は季節に応じて少しづつ変化をさせているのであります。
大切なことは、
基本的な部分は変えず、
少しずつ季節感を取り入れること。
こうすることで、ブレないスタイルが出来上がるのです。流行などによって、ころころと格好を変えることがファッションだとしたら、基本を変えずに貫き通すことがスタイルだと思うんですが、皆様、いかがでしょうか?
例えば、女性の場合……。
もしも本命になりそうな男性に、4月後半の休日、海辺のレストランでのランチデートに誘われたらあなたは何を着ていきますか? 女性はともすると、デートということに舞い上がってしまい、T.P.P.O.が頭から抜けてしまうことがよくあります。
もしも、T.P.P.O.をわきまえていなかったらどう見えるでしょう?
海辺のレストランに行くのに、ビーチに行くような露出度の高いカジュアルなスタイルだったとしたら?
はたまたトレンド感たっぷりの全身真っ黒のモードスタイルだったとしたら? どちらも不自然に見え、その場に馴染まず、見る人を不快にさせるんです。自分だけの世界に入らない、自分だけの価値観にとらわれないことが大切なことなのです。では逆にT.P.P.O.をわきまえた装いをしていたら?
例えば、4月後半という季節を考えて色や素材を選ぶべきです。昼間の時間帯なので、暗めの色よりは明るめの色を選ぶといいですね。場所は、海辺のレストランので、昼間の海に似合う自然の色や、肌寒くなったときのために羽織れるものを用意しておくといいでしょう。休日なので、仕事用のカッチリしたヒールの靴でなく、リラックスした印象の、でも上品な靴がベストです。
以上を踏まえ、例えばトップスは上質な白い長袖の麻のシャツを。胸のボタンを2つぐらいはずし胸元を美しく見せ、腕元のボタンもはずし2回ぐらい捲って抜け感を演出。肌寒くなったときのために、ベージュのカシミアのニットを肩掛け。ボトムスは、細みの白のクロップドパンツに、リラックス感のあるベージュのドライビングシューズ。こんなリラックスしつつも、上品な素材や色のスタイルだったとしたら? 見る人に安心感を与え、その安心感から人は気を許し、やがてセクシーという気持ちに繋がっていくのです。
大人のお洒落は、
周囲の雰囲気に馴染むことが大切。
Time、Place、Person、Occasion。いつ? どこで? 誰と? 何を?
ということを踏まえることが、装いにはとても大事なこと。
イタリア人は、素敵な人に対して「エレガンテ」という言葉を使います。その真意は「エレガンテ=ナチュラーレ」ということ。エレガントであることでは、自然体であること。自然体とは、肩に力が入っていなくて、自然に見えるということです。
T.P.P.O.をわきまえて、
その場に馴染んで見えること。
↓
風景に馴染んで見えること。
↓
それが絵になるということ。
だからこそ、装う季節がいつなのか? 時間は何時なのか? どこに着て行くのか? 誰と一緒なのか? 職場なのか? リストランテに行くのか? 目的は仕事なのか? 船に乗るのか?……など、装う時間、場所、目的を大事に考えているのです。T.P.P.O.を知ることは、大人のお洒落にとっても重要なことなのです。
大人のお洒落は、
一緒にいる人のためでもある。
一緒にいる人が、心地よく感じてもらえるように、自分のお洒落をする。相手を気遣える、余裕のある大人こそ素敵だと思うのですが、皆様どう思いますか?
ということで、今日は真面目にこの辺で!
アイテム
コート/カンタレッリ
スーツ/BR.SHOP
白シャツ/インダスタイル
ネクタイ/ブルネロ クチネリ
ベルト/エルメス
ソックス/カルツェドニア
靴/WH
(すべて干場私物)
Photo:Kazuya Furaku
Text&Styling&Model:Yoshimasa Hoshiba
エロサバ-Hoshipedia
「エロサバ」とは、“エロいコンサバ”の略で、干場の哲学により生まれた造語。シンプルでベーシック、コンサバティブな洋服を着ているのにも関わらず、着こなし方次第でSEXYにエロく見えるスタイルのこと。例えば、一番象徴的なのは喪服の女性。成熟した大人の女性が喪服を着て、メイクも抑制しているのに、なぜか色っぽく見えるスタイル。例えば、上質な素材の普通の白いシャツを着ているのにも関わらず、胸元のボタンを2~3個開けてセクシーに着こなしたり、袖口を捲って腕元を見せてヌケ感を出すスタイル。単なる粗悪な、しかもデザインが変わっている白いシャツでは駄目。上質な素材のベーシックな白いシャツだからこそ、エロく着こなしても、上品さを保つことが出来るのです。男性で例えるなら、自分の体型に合って仕立てられたミディアムグレーの無地のスーツを着て、上質な白シャツに無地のグレーのネクタイのような極めてコンサバティブなスタイルをしているのにも関わらず、内側から大人の色気が香るようなスタイル。要するに、さり気なく上品に見えるコンサバなアイテムを着つつも、エロく見えるスタイル。これが「エロサバ」スタイルの根幹でありキモ。
『FORZA STYLE』編集長
干場義雅
尊敬する人は、ロロ・ピアーナの元会長セルジオ・ロロ・ピアーナさん、ピエール・ルイジ・ロロ・ピアーナさん、トッズの会長ディエゴ・デッラ・ヴァッレさん、格闘家のブルース・リーさん、初代タイガーマスクの佐山サトルさん。
スポーティでエレガントなイタリアンスタイルを愛し、趣味はクルーズ(船旅)と日焼けとカラオケ。お酒をある一定以上飲み過ぎると、なぜだか一人感無量状態になって男泣きする現在42歳の小誌編集長。東京生まれ。