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FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine

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サルトリア・ミラネーゼの巨匠の登場です

「カルロ黒部のGENTLEMEN’S STYLE」第16回はフランコ・プリンツィバァリーさん(Franco Prinzivalli)の登場です。

イタリアを代表する高級素材メーカー、ヴィターレ・バルべリス・カノニコ社のレセプションパーティーで、笑顔で迎えてくださいました。

シチリア州パレルモで13歳から修業を始め、18歳でミラノに移り、名門A.カラチェニで経験を積み、史上最年少の30歳で名誉ある“Forbici D’oro”(金の鋏)賞を受賞。現在は同賞を主催する“The Accademia Nazionale dei Sartoria”(ナショナル・テーラーズ協会)の審査員も務めるテーラリング業界の重鎮です。1973年に自身の店をミラノにオープン、まさにサルトリア・ミラネーゼを代表するマエストロなのです。

南北に長いイタリアのスーツは、一般的にナポリなど南イタリアは軽くソフトで土着性が強く、ミラノなど北イタリアは構築的で国際性があると言われています。
この日のプリンツィバァリーさんの装いは、チャコールグレーのチョークストライプ素材のシングルピークドラペル3ピーススーツでした。

北イタリアの構築的なテーラリングを標榜するだけあって、しっかりした肩パッドによるショルダーライン、胸増し芯で保形したバスト、ボリュームのあるラペルなど、男らしい作風です。

しかし最大の特徴は「動きやすい」という点にあるのです。

この写真でもお分かりの通り、袖付け部分に充分な「イセ」を取り、前方に大きく振った袖は、腕の可動性を高めています。地衿を後ろ中心で切り替えた一枚裁ちの衿は首に吸い付くような「のぼり」を実現しています。高度な技術が必要なのですが、服の重さを分散して軽く感じさせる効果があるのです。

細腹を取らずウエストラインを包み込むようなカットも特徴のひとつです。ストライプや格子柄をより美しく見せてくれます。

「私のスーツ作りの哲学は、動きやすさにあります。スーツは男性を縛り付けるものであってはなりません。立っても座っても、車の運転でハンドルを握ったりしても身体の動きに追随して来るスーツ作りを目指しています」。



Vゾーンは白のワイドスプレッドカラーシャツにネイビーのジャカード小紋タイでした。ヴェストに隠れていますが、シャツの左身頃部分にイニシャルのF.P.の刺繍が入っています。紳士が唯一シャツのイニシャルを入れて良い場所なのです。



ダブルカフスシャツの袖口は、サヴィル・ロウの友人から贈られたカフリンクスで彩られていました。さりげなくタイの色柄に合わせているのでしょう。

本開きのスーツの袖口はキッシィングボタン(重ね付け)ではなくて、ホーンボタンがフラットに付けられています。手縫いで仕上げられたボタンホールと共にスーツのクオリティを物語る大切なディテールが袖口なのです。



レセプションパーティーでは、3大テーラーによるテーラリング・シンポジウムも開催されました。左からミラノのフランコ・プリンツィバァリーさん、フィレンツェのアントニオ・リヴェラーノさん、ローマのアントニオ・パニコさんです。
イタリアを代表する3大マエストロが一堂に会するまさに奇跡の1枚がこの写真です。高級素材メーカー、ヴィターレ・バルべリス・カノニコ社に対する深い敬意があって初めて実現したのです。



フランコ・プリンツィバァリーさんのスーツ作りの哲学は、男性にとってスーツは決して窮屈なものではなくて、動きやすく自信と力を与えてくれる最高の仕事着であることを、改めて教えてくれるのです。

Text:Carlo Kurobe


カルロ黒部
カルロ インターナショナル代表 ファッションコンサルタント ファッション評論家。1958年外交官子弟として駐 インドネシア日本大使館で誕生。1983年オンワード樫山入社後、メンズ企画部門を歩む。2014年同社退職後、カルロ インターナショナル設立。国内外のファッション企業のコンサルティングおよびPR業をはじめ、ファッション評論や公演で活躍中。



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