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F1の名門がつくるスーパーカーは
フェラーリだけじゃない

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マクラーレン・スポーツシリーズ、日本上陸!

打倒フェラーリに、静かな炎を燃やす男がいます。その男の名は、ロン・デニス。1947年生まれのイギリス人、マクラーレン・グループの総帥です。

F1の名門チーム、マクラーレンはニュージーランド出身のレーシング・ドライバー、ブルース・マクラーレンが63年に設立しました。ブルースが70年にテスト中の事故で亡くなると、ロン・デニスが猛烈なリーダーシップでもって、さらに強力なチームへと成長させていきます。80年代後半から90年代の前半、ホンダと組み、アイルトン・セナを擁して黄金時代を築いたことはFORZA世代には記憶に新しいでしょう。セナの事故死は94年5月1日ですから、あれから20年以上の歳月が経っています……。

ロン・デニスは、2010年、マクラーレン・オートモーティブというスポーツカー製造会社を設立します。F1で培ったテクノロジーとブランド力で、スポーツカー好きを唸らせる玄人好みのクルマをつくろう、というわけです。

マクラーレン・オートモーティブは当初から3つのシリーズをもつ計画を明らかにしていました。翌11年に発表したのが12Cというスーパーカーで、これが松竹梅の真ん中の竹に当たります。12Cは軽くて丈夫なカーボン(炭素繊維)を車体に使うことで軽量化を果たしました。カーボン・コンポジットをいち早くF1カーに導入したのはマクラーレンでしたから、ブランドのアイデンティティという意味でも正しい戦略です。エンジンは自製の3.8ℓV8ターボを、キャビンの後方に配置しています。いわゆるミドシップです。ドアはレースカーのように跳ね上がります。余談ながら、スーパーカーはドアが跳ね上がらないとダメだ、といった人がいます。テリー伊藤さんです。

竹の12Cをパワーアップして、電気モーターを加え、合わせて900ps以上の馬力をもつ究極のハイブリッド・スーパーカー、P1を発表したのは12年です。P1は限定375台、日本では1億円近い値段がついていたはずですが、あっという間に売り切れました。これが松竹梅の松です。

で、ようやくの本題です。設立5年目の今年、梅に当たるマクラーレンの最量販モデルとなるクルマが今年発表になり、2台そろって、さる6月4日、東京港区の虎ノ門ヒルズでお披露目されました。松竹梅がそろったのを機に、松は「アルティメット」、竹は「スーパー」、梅は「スポーツ」、とそれぞれシリーズ名がつけられました。

マクラーレン・スポーツシリーズの第1弾となるのが、今年4月のニューヨーク自動車ショーで発表された570Sクーペです。数字はそのまま最高出力を示します。エンジンは12Cと基本的に同じ3.8ℓV8ターボですが、3割がた新たにつくり直されています。

同じく4月の下旬に開かれたお隣、中国の上海自動車ショーでお披露目されたのが、540Cクーペです。570Sより最高出力を30ps控えめにして、お求めやすくしたモデルです。いわば入門用マクラーレン。といっても最高速度は320㎞/hに達しますから、リッパなスーパーカーです。

日本での価格は570Sが2556万円、540Cが2188万円です。アジア地区のディレクターによれば、新しいスポーツシリーズはドイツ車をライバルにしているそうです。筆者の独断で申し上げれば、これはポルシェ911ターボを想定しての発言です。911ターボは2128万円、ターボSが2539万円ですから価格的にもドンピシャです。12Cから進化した650Sなどからなるスーパーシリーズはイタリア車、つまりはフェラーリのV8ミドシップをターゲットにしています。

スポーツシリーズを加えたことで、マクラーレン・オートモーティブでは販売台数を一挙に2倍に増やしたいと考えています。昨年のセールスは1600台ほどでしたから、16年からの本格生産が始まれば3000台以上のマクラーレンが路上に姿を現すことになります。

虎ノ門ヒルズの発表会にはブランド・アンバサダーとしてブルース・マクラーレンのお嬢さんであるアマンダさんが姿を見せていました。彼女は、父ブルースがグッドウッド・サーキットで亡くなったのと同じ6月2日にヒースローを発って来日しました。

6月4日、虎ノ門ヒルズで開かれた発表会より。真ん中の女性がアマンダ・マクラーレンさん。赤が540C、銀色が高性能版の570Sです。空気をエンジンに導くドアの切りかきが斬新です。▶拡大画像表示

45年前の事故の翌日、「来なくていい」といわれていたにもかかわらず、当時のマクラーレンのメカニックたちはファクトリーに来て、クルマのメインテナンスを始めました。「どうして?」とたずねられると、「ブルースは死んでも、マクラーレンのレーシング・チームは決して死なない」と彼らは答えたそうです。男気あふれるコメントです。

ブルースはロードカーをつくる構想を練っていましたが、それも目前で露と消えました。マクラーレンの名前のついた新しいスーパーカーの前に立って、アマンダさんはこういいました。
「夢はかなえられるものです。マクラーレン・オートモーティブを通じて父の夢がかなえられました。父は誇りを持っているだろうと思います」

物語なくしてブランドが成り立たないのはスーパーカーも同じです。という締めくくりではつまらないですね。あらためてこういい直しましょう。ドリームズ・カム・トゥルー!

Text:Naoki Imao

 

ドアはこのように跳ね上がります。570Sと540Cは基本的に同じ3.8ℓV8ツインターボを搭載するスポーツシリーズで、前者が570psで、2556万円、後者が540psで2188万円です。 ▶拡大画像表示
ボディパネルはアルミ製となる。570psで車重は1313㎏。610psで1422㎏のランボルギーニ・ウラカンより馬力荷重で勝っているのがジマンです。写真の540Cだと、ちょっと負けます。 ▶拡大画像表示
540Cの機能第一主義的なコクピット。これまでのどのマクラーレンよりも実用性を重んじている。7インチのタッチスクリーンがエアコンやラジオなどのスイッチ機能を備えています。 ▶拡大画像表示

 







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