オーセンティックな風貌で何にでも合わせられる
クロケット&ジョーンズのタッセルローファー
ホテルやレストランのサービスマンたちは、よく客の靴を見てどんなタイプの人間が判断すると言いますが、ファッションにうるさい女性たちも日常的に当たり前のようにやっています。汚れた靴というのはもちろん論外ですが、個性が強過ぎるデザインというのも敬遠されることが多いのも事実。
少し前だと、つま先の尖った靴やカモノハシのクチバシのように反り上がっている靴。やたらとノーズが長い靴を履いている男性を見かけましたよね。ああいった靴を履いていたのでは、相手に軽薄な印象を与え、信用を得られることなんて出来ません。
僕が普段から、アイテム選びのときに一番気にかけているのが“中庸”ということ。つまり、ひとつひとつが主張することなく、全体がひとつになって美しいハーモニーを奏でるということです。特に靴に関しては、“お洒落は足元から”という言葉があるように、絶対に気が抜けない部分。知性や誠実さを表すといった意味でも、老舗の英国靴は信頼に価すると言えるのです。
中でもクロケット&ジョーンズは、1879年に靴の聖地ノーザンプトンで誕生したメーカーで、創業以来、熟練したクラフトマンたちの高い技術によって、多くの名品を生んできました。実はこのタッセルローファーは3足目で、これを購入する前に黒を買って春夏に使えたので買い足しましたものです。個人的に、上着の着丈が少し短いグレースーツに合わせることが多いのですが、ミディアムブラウンの靴は、黒同様に汎用性が高いのでお勧め。裾幅を17cmのスラックスで足首が見えるか見えないかぐらいの感じで履くのが気に入っています。流行に左右されないオーセンティックなデザインで、ソールを張り替えれば一生履き続けることができる。まさにエコラグな一足といえるのではないでしょうか。
余談ですが、僕はラバーソール派なので、このタッセルはお直し屋さんでレザーソールの上からラバーを貼ってもらいました。ほんの少しボリュームが出た感じが好きなのですが、やはり滑らないという点も重要。海外の石畳は滑りやすいですよね。以来、出張のお供としてもかなり重宝しています。
Photo:Yasuhisa Takenouchi
Text:Toshiaki Ishii