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【再録】ビジネスは腕時計に宿る
Vol.1 ジャック・マー(アリババ創業者)

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大富豪の腕元に見え隠れする、狡猾な戦略

確かに新興富裕層には自己顕示欲の薄いBOBOS(ボボス=ブルジョア・ボヘミアン)もいます。どんな時でもデニム姿のマーク・ザッカーバーグ(フェイスブック創業者)などはその好例でしょう。しかしながらジャック・マーは、どちらかと言えばきちんとTPOをわきまえるタイプ。大事な時は、ピシッとスーツ姿で登場します。それなのに、“画竜点睛を欠く”状態であっても、腕時計だけは頑なに着けないのです。

それが彼のポリシーかもしれません。しかし私には別の理由が見える。彼は「高級腕時計で社会を刺激したくない」のではないでしょうか。2014年の金融市場における最大のニュースだったアリババのIPOですが、突っ込んでみると、その内実はかなりキナ臭い。

日経新聞の記事によると、9月に上場したのは、ケイマン諸島に本社を構えるアリババ・グループ・ホールディング(AGH)。つまりEコマース会社のアリババとは完全に別ということ。というのも中国ではIT関連会社が外国から出資を受ける場合、政府当局からの規制が入る。そのため規制されずに外国から資金を調達するために、別会社としてAGHを設立しているのです。

しかしアリババとAGHとの間には出資関係はなく、契約が結ばれているだけ。つまりアリババの収益が、謎の契約によってタックスヘイブンにある外国企業に流れているという構図になる。これは巧妙な資金隠しともとれるし、大規模な脱税行為と見られてもおかしくはありません。

現在は中国共産党の幹部と太いパイプを作っていると言われるジャック・マーですが、トップが代われば白も黒に代わる国である以上、楽観視はできません。

何せ、街のやんちゃくれから成り上がったジャック・マーにとって、後ろ盾はないに等しい。だからこそ市民に対しても隙を見せたくないはず。よしんば「ジャック・マーと政府高官が同じ限定モデルを着けていた!」なんてニュースが流れれば、政府高官が保身のために彼をスケープゴートにするなんてことも考えられます。

たかが時計、されど時計。ジャック・マーの腕時計を着けないという戦略は、中国社会において高級腕時計が、その人となりを示すアイコンとして、常に監視対象になっていることを証明しているのかもしれません。そして、この狡猾さ、抜け目なさこそが、「アリババ」の強さの源泉なのでしょう。

Photo:Getty Images
Text:Tetsuo Shinoda

馬雲(ジャック・マー)
アリババ創業者
1964年生まれ。中国・浙江省杭州市出身。アリババ社の創業者。現会長、元CEO。
1999年のEコマースでの開拓をはじめ、先日のニューヨーク証券取引所での上場
など、経済界に話題を振りまく中国一の大富豪。

篠田哲生(しのだ てつお)
時計ライター
講談社「ホットドッグ・プレス」を経て独立。新聞、雑誌、ウェブなど、様々な体で時計記事を担当。時計学校を修了した実践派。著書に「成功者はなぜウブロの時計に惹かれるのか。」がある。

 



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