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LIFESTYLE 女たちの事件簿

「パンじゃなくて、焼きそば食わせろ…だと!」夢だった田舎カフェ開業→地元のジジババが朝から晩まで入り浸り。移住夫婦が涙を溜めて語る「田舎暮らしの現実」

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不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

総務省によると、東京では転入が転出を上回る「転入超過」が顕著な状態にあるという。コロナ禍以前に言われていた東京一極集中が再び加速しつつあるいま、政府が声高にうたう「地方創生」が今後どのようになっていくのか要注目だ。

地方創生の要となる事業のひとつに地方移住支援があるが、その注意点について、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう語る。

「地方は東京に比べて物価が安くのどかなイメージがありますが、観光や事前の移住体験では見えなかったトラブルが原因で定住に失敗する方がいるのも現実。
地方での生活や事業運営についてはその土地や住民との相性や運もあり、十分な検討と計画の下で実行することが重要です」

地方移住の成功・失敗について取材をするなかで、かねてから検討していた地域に移住し、同時に彼の地で飲食店を開業したという女性から話を聞くことができた。

「夫婦で移住しました。移住先の自治体は創業支援が充実していて、開業に関するセミナーや補助金の申請などいろいろサポートしてもらい、移住後には支援金も無事に給付していただきました。正直、支援金制度がなければ移住・起業は考えなかったと思います」

こう話すのは、会社を退職して夫とともに地方に移住しカフェを開業した加納真琴さん(38歳)。

地方移住については独自の支援制度を持つ自治体も多いが、国主導の移住支援金制度もある。
東京周辺からの移住では、要件を全て満たせば最大100万円の移住支援金が支給されるとあって、この制度ありきで移住を考える人も少なくない。

「もともと地方移住を言い出したのは夫でした。コロナ禍でテレワーク漬けになったことが理由です。夫の仕事はもともとリモートで完結するので、独立して軌道に乗りそうなら移住しようかと」

夫は動画クリエイター。会社から独立して半年後には複数の取引先ができた。真琴さんは移住が現実味を帯びてくると、趣味で習ってきた製パンが仕事にならないかと思い、会社終わりに飲食店での修行も積んできたそうだ。

「決めたのは店舗付きの空き物件。築50年以上でリフォームOKの家だったのであれこれ直しました。自分たちでできるところはDIYで出費を抑えて……」

移住先は、夫婦で過去に数度訪れたことのあるお気に入りの町。
夫婦揃ってこの地の伝統工芸品のファンだったという。オープンしたカフェは、将来的に作家物の個展や販売ができるギャラリーとしても機能させたいとの考えだった。

「お店は観光客が集まるメインストリートから少しだけ距離のある立地なのですが、たったこれだけの差が客層を分けたのかもしれません。落ち着きのあるいい感じの通りで、私個人が観光で行った時には喜んで歩いた場所なのですが、実際には観光客が意外と通らなくて」

こう話すと、険しい表情になった真琴さん。保健所の営業許可も下りて無事オープンに漕ぎつけたものの、カフェの客層は当初想定していた観光客ではなく、地域の高齢者層が圧倒的な割合を占める。

「焼きたてパンに具だくさんのヘルシーな日替わりスープをセットにしたランチが売りの店です。というのも、当初設定していたターゲット層は外国人観光客と30代~40代の女性。

この地の工芸品の魅力を引き出すような提供の仕方を自分なりに考え抜いてのメニュー作りでしたが、フタを開けてみればお客さんは地元の高齢者が7割を占めていました」

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©GettyImages

スープとパンでも十分に食べ応えのある内容だが、都会とは一線を画す経済観念と価値観を持つ田舎の高齢者はあからさまに拒否反応を示した。

「スープとパンで1300円は高いんじゃない?と面と向かって言う人もいましたし、メニューを見た瞬間『これだけか?食うものねえじゃん』と言って帰られる方も。『喫茶店だろ?焼きそば置いてないのか!』とまで言われました」

ナチュラルモダンな内装や雰囲気をイジられる場面も珍しくない。

「東京から来る人は格好ばかりご立派だなあ、などと平気で言う人もいますよ」

厳密に言えば真琴さん夫婦は東京から移住したのではないが、移住先では「東京近県から来た=東京の人」と認識されている。

「『年寄りはこんなしゃらくさい店じゃのんびりできない』と言われたことも。まあ、そう言いながら来るんですけど」
 

想定とは異なる地方移住の実態を目の当たりにした真琴さん。高齢者サロンと化してしまったカフェにはさらなる問題が発生してしまい……。

 

取材/文 中小林亜紀

▶︎後編に続く


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