親族間の「相続問題」は「災害」と似ています。
共通点は「いつか必ず起こる」と認識していながらも、「今すぐにではない」と思ってしまうこと。備えが不十分になり、結果的に予想していた以上のトラブルになってしまうこともあります。 ただし、手続き等で右往左往するのはまだ「1次災害」のレベル。それが親族間の金銭トラブルにつながるような「2次災害」に発展すると、親族関係を「復興」することが極めて困難になってしまうのです。
探偵への依頼の中でも、相続問題に関係する案件は少なくありません。
良くあるのは、親の生前に兄弟姉妹の1人が親の預金通帳を預かり、少しずつ使い込んでしまうパターンです。使い込んでいる本人は、「いつかこっそり返せばいい」と、その程度の気持ちで使い込んでいたのかもしれません。
ですが不思議なことに、悪しき習慣ほどやめられないもので、結局親が亡くなるまで使い込みは続き、亡くなった時には相当な額を使い込んでしまっている。 それが発覚するのは、親が亡くなり、兄弟姉妹で遺産を整理しだした時になります。使い込んだ本人は既に証拠隠滅を図っており、親の預金通帳を全て破棄してしまっている。だから、親の遺品のどこを探しても預金通帳が見当たらない……。
弊社にも、そういった相続トラブルで相談に来られる方が多くいらっしゃいます。半年前に調査を依頼しに来たお客様も、長女使い込み疑惑を突き止めて欲しいとの依頼でした。
秀美「おかしい。お母さん、2000万円の預金があるっていつも言っていたのに」
和子「お母さん、少しボケ始めていたから……」
秀美「そんな話、一度も聞いたことがないけど。そういえば和子姉さん、良くお母さんから通帳預かって、代わりに買い物とか色々してあげていたわよね?」
理恵「ねえ実は私、お母さんから相談されていたのよ。和子姉さんが、お母さんの預金通帳返してくれないって。お金を使っちゃっているかもしれないって」
秀美「えっ? なんであんた早く言わないのよ!」
理恵「だって、まさか和子姉さんがそんなことすると思っていなかったし……お母さんの勘違いだと思ったから」
秀美「和子姉さん、それ本当なの?」
このようなやり取りが姉妹間で繰り広げられた後、母親の金を使い込んだ張本人の和子さんは、苦しい言い訳を並べたそうです。 この後の姉妹間の話し合いは「やった」「やっていない」の堂々巡りに。最終的に秀美さんと理恵さんが、和子さんの使い込みの証拠を何とか掴めないものかと弊社に相談しに来られたのです。
では、こういった場合はどうやって使い込みを突き止めるのか?
☆実際の依頼ケースを軸に、次回は遺産使い込み疑惑の調査を徹底解説します☆
Text 探偵 こころたまき