「手が届かなかった相手」は思い出として美化される
★★★
ようこそ お越しくださいました
ここは繁華街にひっそりと佇む
『純喫茶ぺぺ』
昭和レトロでどこか懐かしさを感じる
恋に迷える大人達のユートピア
ここは純喫茶の雰囲気を大切にしており
一風変わった店主が
お客様をイメージした珈琲カップの代わりに
お悩みにぴったりの「恋のナンバー」を
硬派にお出ししております
刺さりすぎて気絶なさらないよう
お気をつけくださいませ
どうぞ 最後までおくつろぎの上
ゆるりとおたのしみください
純喫茶 ぺぺ
★★★
本日のお客様は、
高校生の時に好きだった男性がいました。
当時、相手は彼女持ちだけどデートはしてくれました。
私から告白をして振られています。最終的には着信拒否をされて終わりました。
そんな彼から、10年ぶりに「元気にしてる?」と連絡がきたのですが、何を考えているのか分かりません。
──君色片想い サービス業(28)
君色片想いさん、ご来店ありがとうございます。
平成あるあるですが、携帯の着信設定を好きな人用に設定していた思い出はありませんか?
久々にその着メロ(死語ですね)が鳴って、気絶してしまった経験がある人も多いのではないでしょうか。
今回は、当時振られて着信拒否までされ、見向きもしてくれなかった彼から、10年ぶりに「元気?」と連絡がきたということですね(事件気絶)。
最初は「地元に帰省中だけど何してる?」とか、「そういえば○○さん(共通の友人)結婚したんだって〜」などの世間話から、飲みのお誘い。
「相手は何を考えているの? 詐欺の勧誘?」と不審に思うこともあれば、「これってもしかして私のこと・・・」と、淡い期待を抱いてしまうこともあるでしょう(気絶)。
何より、突然連絡してきた理由が何なのか、大変気になってしまいますね。
「自分に好意がある女性に慰めて欲しい」が妥当な理由だと思いますが、少し冷静になってあれこれ考えてみましょう。
過去の恋愛の保存方法
長い年月を経て、急に彼が連絡をしてきた理由ですが、まずは男性側の心理を考えてみましょう。
彼に告白をしていたという事実から、彼にとって貴女の存在は、「俺のことを好きでいてくれる子」というイメージのままだと思います。
これは、多くの女性が過去の恋愛を「上書き」している一方で、多くの男性は過去の恋愛を「別ファイル保存」しているという習性も関係しています。
貴女にとっては「上書きしてしまった彼」でも、彼にとっては、「俺のことを好きな人」のままなのでしょう。
過去の思い出は美化される
過去の恋愛というのは、告白すらできなかった片思いから、憎しみ合って別れた離婚まで千差万別ですよね。
しかし、決まって恋愛の始まりは甘く語られ、その終わりというのは苦く受け止められるのです。
さらに、多くの恋愛において、「手が届かなかった相手」は美化されていき、あの頃の記憶は美しいままであることが多いのです。
ミロのヴィーナスが「不完全であるからこそ美しい」と議論されるように、二人の関係が成就しなかったからこそ、美しい余韻や幻想までが残るのです。
どんなに愛し合った二人でも、最後の最後で大喧嘩をして泥沼化し、お互いの嫌な部分を見すぎてしまうと、嫌なイメージで終わってしまいます。
結果として、交わらなかった二人の方が、思い出として美しいのはそのせいです。
あの頃の自分に会いたくなったから
また、10年前の記憶を掘り起こす経緯としては、「現在の自分に満足していない」という場合が多いです。
現状に落胆し、過去の出来事に対して、「あの時、〇〇しておけばよかった」「あの時、何故こうしなかったのだろう」と後悔や心残りがあるからこそ、ふと過去の栄光を振り返ってしまうのです。
あの頃に戻りたい訳ではないけど、「恋に恋していた自分」や「あの頃輝いていた自分」に会いに行きたくなる時があるのです。
人生というのは「選択」の連続ですね。
人生という一本道の途中で、右か左かの選択を迫られた時、右を選んだけど今の現状に不満で、「あの時に左を選んでいたら違う未来になっていたかも・・・」とふと頭をよぎるのです。
今、彼女に再会しても、その過去が変わることはないのですが、少し確認したくなるのかもしれません。
自分に好意がある女性に慰めて欲しい
あれこれ個人的な推測をおこないましたが、冒頭で申し上げた通り、「自分に好意がある女性に慰めて欲しい」というのが、一番近い答えな気がします。
やはり、多くの男性は、落ち込んでしまった時、自分を全て受け入れてくれる女性に慰めて欲しい生き物。
飲み屋のママに話を聞いて欲しいのも、そういった心理が働いていると思います。
何故、ダメだったかを思い出すこと
逆に、こちら側で考えた方が良いことは、過去に理由があったにせよ、二股をして突然連絡が途絶えてしまったり、着信拒否をする男性に誠意は感じられませんよね。
例え、あの時に彼が左を選んでいたとしても、「選んだ道」が間違っていたのではなく、「自分自身の歩み方」に問題があったと気づかないと、人間は何も変わりはしないのです。
ですので、また同じことを繰り返さないように、くれぐれもお気をつけくださいね。
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【お答え】
「自分に好意がある女性に慰めて欲しい」
という思いつきだと思います(気絶)
また同じことを繰り返さないように、お気を付けて。
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今回ご紹介するナンバーは、さだまさしさんの『主人公』です。
「あそこの別れ道で、人生を選び直せるなら・・・」とふと頭をよぎったりもしますが、それは自分で選んだ道。
自分で決めた道なのであれば、自分の人生の主人公として、最後まで精一杯生きたいですね。
いつか後ろを振り返った時に、立派な道が開けていると思いますよ。
そんな人生の旅路で、孤独を味わった者同士が巡り会えたら、良き出逢いですね。
“「或いは」「もしも」だなんて
あなたは嫌ったけど
時を遡るチケットがあれば
欲しくなる時がある
あそこの別れ道で
選びなおせるならって”
「主人公」
歌:さだまさし. 作詞:さだまさし. 作曲:さだまさし
参照:『Uta-Net』
お客様、選曲はお口に合いましたでしょうか?
またのご来店、心よりお待ち申し上げております。
純喫茶 ぺぺ
Photos:Yuta Takamatsu, Shuhei Kato
Text:RIKAPEPE(ペペ)
Illustration:Eri Sakai