FOOD ― いま食べるべき“カレーライス”

「原宿の伝説」が下高井戸で超進化! クラフトビールと合わせる“Ghee系カレー”の新基軸とは?

2018.11.30 2018.11.30
2018.11.30

今回は下高井戸「HATOS OUTSIDE(ハトス アウトサイド)」

現地完全再現の本格インドカレーからご当地カレーまで、百花繚乱な日本のカレー事情。そんななかから、いまも進化を続ける日本独自のカレーを「カレーライス」と定義し、個性溢れる「今食べるべきひと皿」とその作り手を、気鋭のカレーライター 橋本修さんが追いかけていきます。

今回橋本さんが訪れたのは、下高井戸駅から続く商店街の最果てに佇む「HATOS OUTSIDE」。中目黒の人気店「HATOS BAR」の姉妹店として2015年にオープンし、2017年10月よりカレーとクラフトビールを中心に据えた、現在の業態にリニューアルしました。

このHATOS OUTSIDEで提供されるカレーを手がけるのは、言わずとしれた伝説の名店、原宿「Ghee」の流れを汲む「VOVO 学芸大学店」で、オープンから腕をふるった小川洋平さん。偉大なオリジナルレシピを躊躇なく再構築したという、いわば“Ghee系カレーの最先端”ともいえるひと皿に迫ります。

特別カレーが好き、というわけではなかった

下高井戸駅から続く、公園通り商店街の端にHATOS OUTSIDEはあります。世田谷線・松原駅からでも徒歩6分ほど

もし、あなたが古くからカレーを外食で、少しだけ意識的に食べてきたとしたら、原宿にあった伝説的な名店「Ghee」の存在を知っていることでしょう。また、現在もカレーを愛しているとしたら、そのGheeの厨房で腕をふるってきた赤出川さん自らが営む「BLAKES (GHEE)」や、原宿や新宿などに店舗を展開する「CURRY UP」、そして新潟に本店を構える「VOVO」など、Gheeの味を受け継ぐカレー店の存在を耳にしたことがあると思います。
赤出川さんが、Gheeで同僚のインド人と共に生み出したそのレシピは、多方面からのラブコールにより受け継がれていき、いまやそのDNAは東京だけでなく、全国規模で広がっているわけです。

「HATOS OUTSIDE」のシェフ、小川さんもそのDNAを受け継ぐ1人。前述のVOVOが2013年、東京1号店としてオープンさせた学芸大学店で厨房を任されていた小川さんですが、もともと特別カレーが好きだったというわけではなく、いろんなタイミングや縁、そしていくつかの飲食の選択肢のうちのひとつとしてカレーがあった、というスタートでした。

「もともとは古着屋だったり、飲食だったりをいろいろやってきたんです。僕は新潟の出身なんですけど、一度東京から新潟に戻ったタイミングで、VOVOが人を探してるよと、共通の知人から紹介されて。それで働かせてもらうことになったのが、カレーを作りはじめたきっかけなんです。だから、他の食べ物よりも特にカレーが好き、というわけでもなかったんですよ(笑)」

目指したのは「いつまでも食べられるカレー」

バーとしての一面も持つHATOS OUTSIDEらしく、カウンター席とテーブル席で構成された店内は、シンプルで居心地の良い空間

カレーライスやインド料理を生業にしている人のすべてが、カレー好きと決まったわけではありません。なにかの必然性によりカレーに魅せられた人もいれば、カレーに惹かれることのないまま、それを作り続けている人もいます。縁やタイミングでカレーを作ることを生業にした小川さんはVOVOを離れてから、改めてカレーと向き合い、自分の理想とするカレー像を見つけたそうです。

「VOVOを辞めてから今のHATOSに移るタイミングで、はじめていろんなお店のカレーを食べ歩いてみたんです。吉祥寺のpiwangや、カレー スーパースター、ビストロべっぴん舎みたいな比較的新しめなお店から、インデアンカレー、エチオピアのような名店まで。でも、その全てがいわゆる“カレーライス”のお店ですね。なかでもエチオピアは、もともとすごく好きだったんですが、こういう安定感のある、いつまでも食べられるカレーが自分の理想とするカレーだな、と再認識しました。スパイスがとにかく好き、というわけでもないので、自分がスパイス疲れしてしまわないようなカレー、日本人が想像するカレーライスらしさが残るカレーというものが最後に残りました」

オリジナルレシピをリスペクトしつつ、躊躇なく再構築

カレーを手がける小川洋平さんは、米どころ新潟の出身。画家・ogawa yoheiとしても活動中

順番はさまざまですが、カレーを作ることを仕事とし、改めていろんなカレーを食べることで自分の求めるカレーを認識した小川さん。そんな小川さんにとって、Gheeを筆頭とする赤出川さんの生み出したカレーとは、どういうものだったのでしょうか?

「すごくバランスがいいんですよ。とくに自分がそれまでカレーに疎かったので、ひとつのソースに対して(具材で)バリエーションがあるわけではなくて、ソースからバリエーションがあるっていうのが魅力的だったんです。味も甘さ、辛さ、酸っぱさなど全部に特徴がある。でも、いまのHATOS OUTSIDEのカレーに関して言えば、レシピは意識的に変えた部分も大きいんです。VOVO時代はもちろん、決められたレシピを忠実に作ってきたんですが、その頃から思っていた部分、例えば本当は使いたくなかった素材をはずすこともできたし、逆に加えたかったものも加えていきました。そういう具体的なイメージもあったので、伝統的なレシピを変えることに対する躊躇みたいなものは全然なかったです」

進化の肝は「うま味」

左からベジタブル、ビーフ、キーマ、バターチキン(すべてハーフサイズ)。このなかから好きな2種類を選べる「ハーフ&ハーフ(1,200円)」が人気メニュー

HATOS OUTSIDEで提供されるカレーは、Gheeの流れを汲むものであるということを、はっきりと確認できます。しかし、小川さん自身が意識的に変えたと言う通り、4種類のカレーのどれもが、より日本人好みのカレーライスへと変化を遂げています。むしろ、変化というよりは進化というほうが正確かもしれません。カレーは甘味やうま味を増幅させることでインパクトを増し、アップデート。そしてそのカレーを受け止め、しっかりと支えるライスの美味しさは、驚きを隠せないほどでした。

「一番大きな変化はライスのほうかもしれません。いろいろ試したり、聞いたりしたなかで選んだ新潟産のものを、バターライスにして出しています。カレーに関しても、野菜のカレーの甘みはもともとさつまいもと砂糖による部分が大きいんですが、その砂糖を黒糖に変えてコクを出したり、チキンはいままで以上に下準備のローストに時間をかけて低温で調理をするように変えました。ビーフはメニューのなかでは一番辛いんですが、フルーツのジャムを複数使って甘みを足したんです。辛いものは好きですけど、ただ辛いだけでは意味がない。辛さはキープしながら、ちゃんと美味しいと思えないと嫌なんです。甘味ってうま味だと思うので、それを意識して試行錯誤を繰り返し、いまの味になりました。一番最後にメニューに加えたキーマカレーは、オリジナルレシピだとコーンとグリーンピースが入っているんですけど、自分はそれがどうしても許せなくて(笑)。ひき肉のうま味だけで充分。そこにチーズがあれば完璧だとずっと思っていたんです」

カレーにはIPA

タップから供されるドラフトビール以外に、瓶や缶のビールも充実

ここまでカレーの話しかしていませんが、HATOS OUTSIDEのもう1つの魅力。それはビールにあります。近年“飲めるカレー屋”さんや“飲めるインド料理”のお店が増えてきましたが、こちらの場合はクラフトビールに特化しています。母体である中目黒・HATOS BARではGIGANTIC BREWING COMPANYを筆頭に、ポートランドのクラフトビールのインポーターもしており、自ずとHATOS OUTSIDEでも充実したポートランド・ビールが堪能できます。

「いまは常時5タップを出しているんですけど、そのなかでもIPAはカレーにぴったりだと思います。5タップのうち、つねに1~2種類はIPAをつないでいるので、ぜひ試して欲しいですね。それ以外にも一部国内のクラフトビールを扱っていて、タイミングで少しずつ銘柄を変えながら店に出しています。それとビールに合わせて、ドライカレーをベースにしたカレーピザと、カレー&バゲットの組み合わせもメニューにあるんですが、ツマミがなかったうちの店の最終兵器です(笑)。バゲットは下北沢にあるKAISOさんの最高のものを合わせているので、自信をもっておすすめしたいですね」

「自由で使い勝手のいい店」でありたい

窓ガラスのサインに偽りなし。カレー、ビールともに持ち帰りにも対応します

小川さん曰く、カレーとビールは共にディープな世界であって、どちらもマニアの掘り下げ方が尋常じゃないという、指向性の共通点があるとのこと。そのどちらかに偏ることなく2枚看板となっているHATOS OUTSIDEのことなので、きっとみんなが両者を堪能することかと思いきや、そんなことはなく、ビールだけ、カレーだけというお客さんも多いそうです。

「こういうバランスの店ってあまりないと思うんですよ。ありがたいことに、ランチの時間帯からビールを飲んでくれるお客さんが異常なまでに多いんですけど(笑)、カレーだけ、ビールだけ、お茶だけというお客さんも時間問わず来てくださるので、そこは完全にお客さんにお任せしています。場所柄、ご近所にお住まいの方も多いので、『うちにきたらこれを試してほしい』みたいな提案型ではなくて、自由で使い勝手のいい店でありたい。お客さんがカレー屋だと思ってくれたらカレー屋だし、逆にビール屋だと思ってくれたらビール屋だし、それでいいんです」

今は新メニューよりも浸透、定着を目指したい

店内で作家の展示が行われることも。こちらは取材時に開催されていたNoriko Tsukaによる立体造形のインスタレーション「“0”の惑星」の一部

現在の営業形態にリニューアルして、ちょうど1年が経過したHATOS OUTSIDEですが、その間にキーマカレーが加わったり、ピザが誕生したりと、よりオリジナルな存在へと少しずつ変貌を遂げています。これからまた新たなカレーの誕生などがありそうな気がしたので小川さんに聞いてみると、まだ今はお店の存在やカレーを浸透させていく時期だと考えているそうです。

「いまのHATOS OUTSIDEになってからまだ1年なので、いまは定番のカレーとビールを知ってもらうことが一番だと思っています。でも、実はいま出している4種類のカレーを全部混ぜたものがすごく美味しくて。まだ自分たちがまかないで食べているだけですけど、なにかの形でそういうイレギュラーなものも出せたら面白いかな、とは考えています。とはいえこういうエリアなので、細く長く、少しだけにぎやかな感じでやっていけることが今の目標ですね」

下高井戸駅から住宅街へと抜ける道すがら、ちょうど喧騒と静寂の境界線上に位置するHATOS OUTSIDE。人々がONからOFFにスイッチを切り替える絶好のポイントとして、街とともに成長する姿と、噂の4種のミックスカレーの登場を心待ちにしてみるのはいかがでしょうか。

Photo:Takuya Murata
Text:Osamu Hashimoto
Edit:Yugo Shiokawa

今回訪れた店

HATOS OUTSIDE(ハトス アウトサイド)
住所:東京都世田谷区赤堤4-22-5
電話:03-6265-8351
営業時間:
【火~金】
12:00〜15:00(L.O)
18:00〜翌0:00(FoodのみL.O23:00)
【土】
12:00〜24:00(FoodのみL.O23:00)
【日・祝】
12:00〜22:00(FoodのみL.O21:00)
定休日:月曜日
https://www.instagram.com/hatos_outside/

筆者プロフィール

橋本修(はしもと おさむ)
スパイスディーラーとしてストリートで名を馳せ、2017年からはカレーに特化した食ライターとしての活動を開始。先日、ライムスター宇多丸氏がパーソナリティを務めるTBSラジオの人気番組「アフター6ジャンクション」のカレー特集にも出演。電波の上でも日本のカレー事情をスムースにオペレートした。DJ、音楽ライターとしても活躍中。(イラスト:@animamundi_)

Author profile

橋本 修
橋本 修
Hashimoto Osamu

スパイスディーラーとしてストリートで名を馳せ、2017年からはカレーに特化した食ライターとしての活動を開始。ライムスター宇多丸氏がパーソナリティを務めるTBSラジオの人気番組「アフター6ジャンクション」のカレー特集にも出演し、電波の上でも日本のカレー事情をスムースにオペレートした。DJ、音楽ライターとしても活躍中。(イラスト:@animamundi_)

KEYWORDS
カレー

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