袖を通す回数は少ないものの、絶対に手放すことはないです
人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。中村達也さんに続いて登場するのは、株式会社スピラーレの代表取締役社長、神藤光太郎さん。
神藤さんが膨大な数を所有してきた中でも捨てられなかった服をご紹介する企画の第6回目は、「セラファン」のレザーダッフルコートです。
このコートは、ストラスブルゴがまだスキーショップジローの側の店舗だった頃にオーダー会を開催していて、そのときに作ったものですね。
最初はオリーブグリーンだったかでオーダーしたのですが、「革がない」って言われたので、このダークブラウンに変更。でも、結果的にこのこげ茶にして良かったと思っています。
レザーも"ゴム"とかいうネーミングのシープスキン(羊革)を使ったものなんですが、セラファンには自社でレギュラーで展開するもう少ししっとりしたものと、某メゾン「H」が使っているものがあったんですが、「H」が使っているレザーの方が盤が綺麗で、そちらを使用して貰いました。
ただ、付けられてるタグにはDEERの文字(笑)。羊革でオーダーして上がってきたものも間違い無いなく羊革なんですが、タグが間違ってる…。今では問題になりますが、おおらかな時代でした。
当時で60万くらいしたんですが、今もし作るとしたら、そんな金額じゃおさまらないと思います。
トグル部分は改造していて、元々メタルだったものを何年か前にホーンのものに取り替えました。チタンっぽい留め具が妙にモダンで嫌だったんですが、変更してイイ雰囲気になったと思います。
それと、革質も良く、しかもあまり着ていなかったのもあって、ずっと綺麗すぎたんです。それが気恥ずかしかったんで、洗濯機に突っ込んで洗ったんですが、結果ほんのりシワが出て、長く着込んだようなイイ風合いになりました。
あんまり寒くなると着られなくて、年に1回着るか着ないかくらいなので、なかなか馴染まなかったんですが、良い表情になったのもあって、これも絶対手放さないと思います。
Photo:Naoto Otsubo
Edit:Ryutaro Yanaka
株式会社スピラーレ 代表取締役社長
クリエイティブディレクターとしてインポーター会社のメンズ部門を統括した実績をもとに、現在は新たなビジネスの準備に取り掛かる。イタリアのニットブランドを皮切りに、日本に魅力的なブランドを持ち込むべく、日夜奔走中。