ネクタイ同様に手頃だったので、気になる柄を買ってるうちに集まりました
人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。中村達也さんに続いて登場するのは、株式会社スピラーレの代表取締役社長、神藤光太郎さん。
神藤さんが膨大な数を所有してきた中でも捨てられなかった服をご紹介する企画の第3回目は、「エルメス」のスカーフです。
エルメスでいう「カレ」の45×45cmばっかりなんですが、これも古着屋さんやオークションで気に入ったものを買っているうちに集まってきた感じです。
最初におそらく、この星柄のジャカードを買ったんですが、同じくらいの時期に蜂のジャカードのストールを買ったんです。この柔らかいタイプのツイルにジャカードが入ってるようなシルクは、今ではイタリアでもフランスでも作ってるところがほとんどないんです。
なので、あんまり見かけなくなったんですが、偶然見つけて買って。「やっぱりエルメスの生地って面白いな」って思いだして集めるようになったのがきっかけです。
エルメスでも張りのあるシルクツイルの「カレ」が多いんですが、たまに同じ柄で透け感のあるシルクシフォンがあったりとか。気になる柄を見つけて買い足していったら自然と増えてしまいました。
タイミング的に買わないときもあるので、何年も全然増えないこともあるんですが、買い出すと火がついて1年で10枚以上買ったりなんかもしています。
これもネクタイと一緒で、ほとんどのものは2000〜3000円程度で買えたんですが、さすがに今は値段が上がってしまっていますね。そんな中でも高額で1万円超えるものもあるんですが、値段というより柄や生地が面白かったら買い足してきました。
基本的にはポケットチーフとして使っていますが、知り合いのイタリア人がこの手の「カレ」を無造作に腕に巻いてブレス代わりに使っていたり、夏場に時計の革が汗で傷まないように重ね付けしたりしているのを真似て使ったりもしていましたね。
ただ悲しいのは、よく失くすんですよね…。最近はしないですが、昔は飲み屋で酔った勢いで知り合いにあげてしまったり、前回のネクタイも何本あげてしまったことか……。あとで気に入ってたやつが見当たらなくて、結構落ち込むんです。
エルメスって"革"にまつわる逸話も多いんですが、スカーフやシルクにもストーリーがあるので、やっぱり惹かれてしまいますよね。140×140cmや90×90cmなど大判の「カレ」は男性には使いにくいですし、用途も限られるので買ったことはないんですが、この柄や色使いには惹かれてしまうので、興味を持ったものは手に入れるようにしています。
ですから、これも失くしてしまったり、勢いで誰かにあげてしまう以外はボロボロになるまで使いますし、捨ててしまうことはないと思います。
Photo:Naoto Otsubo
Edit:Ryutaro Yanaka
株式会社スピラーレ 代表取締役社長
クリエイティブディレクターとしてインポーター会社のメンズ部門を統括した実績をもとに、現在は新たなビジネスの準備に取り掛かる。イタリアのニットブランドを皮切りに、日本に魅力的なブランドを持ち込むべく、日夜奔走中。