英国紳士を育て、英国紳士に育てられた”ジェントルマンズ エクスプレス”
個人的にベントレーというブランドが好きなのは、まさに英国的紳士に愛されてきたから。もちろん、ロールスロイスやアストンマーティンもそうであることは否めませんが、ベントレーが一つ突出しているような気がします。
その理由は戦前のベントレーボーイズなどいろいろありますが、ロンドンしかもジェントルマンライフと関わるエリアと何かしらの縁があるのを見逃せません。サヴォイホテルの“ベントレーカクテル”、プライベートダイナーモシュマンズの“ベントレールーム”、バークレースクエアにある最も歴史ある“ベントレーディーラー”などなど。ロンドンにはベントレー所縁の地がいくつもあります。そうそう、創業者W.O.ベントレーさんが最初に旗揚げしたガレージもピカデリーの近くにそれを記す表示があったような。
拡大画像表示
今回、そういった場所をベンテイガの試乗後に訪ねてきました。ナイトブリッジ近くのモシュマンズではランチを、カーナビーストリート近くのパンクハーストではクラシックシェイビングを体験しました。要するに髭剃り。ベントレーマークが刺繍された心地よいチェアに座り、シェービングナイフでゆっくりと顎まわりをなぞってくれます。いやはや心地よい。スッキリした後はショットグラスでスコッチをいただきました。
閑話休題。今回の渡航の目的はベンテイガV8のテストドライブでした。ヘッドクォーターとファクトリーのあるクルーをスタートし、コッツウォルズ経由でロンドンまで走ります。
ベンテイガはご存知のようにベントレー初となるSUVです。というか、ウルトララグジュアリーカテゴリーでも先駆者となるモデルとして、注目を集めました。これまで12気筒モデルのみでしたが、今回から550psを発揮する4リッターV8ターボ搭載モデルを追加しました。最高速度290km/hもそうですが、最大トルク770Nmも驚きです。12気筒は当然さらにその上ですが、V8もそれに迫るスペックといえるでしょう。
こうして英国の地でベンテイガに乗ると味わい深く感じます。何世紀も前に建てられたレンガ造りのマナーハウスとのコントラストもそうですし、どこまでも続く牧草地にも似合います。さらにいえば現代的なロンドンの市街地にも。東京では大きすぎるという声もありますが、ロンドンの道が特別広いわけではないのでそれほど気にしなくていいのかも。
V8は12気筒に比べて若干ドライバビリティが高いです。言うなれば運転している感覚が強い。ロール角もあえて少しだけ深くしているようにも思えますし、ステアリングレスポンスもダイレクト感があります。どれもベントレーらしいスポーティさですね。
もちろんそれでいて乗り心地はラグジュアリーカーの領域内。どんな段差も直接お尻に伝わることはありません。でもそんな話は野暮ってもん。それより匠の技で仕上げられた最高級のインテリアを堪能する方がベントレー の正しい乗り方。良いものを知る英国紳士に提供してきたそれは、英国紳士によって育てられたともいえるでしょう。そんなことを感じる今回の“旅”でした。