ラルフローレンのアメリカ製チノを作っていたファクトリーブランド「キングズウッド」
人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。成毛賢次さんに続いて登場するのは、ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さん。
中村さんが膨大な数を所有してきた中でも捨てられなかった服をご紹介する企画の第4回目は、「キングズウッド(KINGSWOOD)」のチノパンです。
80年代の終わりから90年代くらいに、アメリカ製のチノパンっていうのが減ってきたんです。アメリカにも当時のアルマーニみたいな流れがあってスリープリーツとかボックスプリーツとか、どんどんクラシックなアメリカのチノパンっていうのが姿を消し始めていました。
僕らはアメリカントラディショナルなモノが好きだったので、アメリカ製のチノパンは必ずワードローブの中にはあったという時代だったんです。
コレもキングズウッドっていって、ラルフローレンのファクトリーで作っていたブランド。恐らくキングズウッドという名称は日本の代理店が勝手に名付けていて、元々はブランド名もないファクトリーブランドだったはずです。
アイクベーハーと同様に、ラルフローレンがアメリカ以外で生産を始めたときに、ラルフのアメリカ製のチノパンを作っていたという背景から、ビームスFでも買い付けました。
ツーインプリーツのチノパンと、ショーツを買い付けたんですが、評判も良く思い出に残っていますね。
当時アメリカにはバリーブリッケンなんかもありましたが、やはりアメリカっぽいテイストはなくなってきていて、なかなかアメリカン トラディショナルを頑なに守っているブランドが少なくなっていました。作りに関してはアメリカ製なので雑だったんですが、それが味でしたし、ラルフローレンを継承してインプリーツで太めに仕上げているのも良かったんです。お客様もアメリカ製の希少的なところに価値を見出してくださっていたので反応も上々でした。
これも自分の中のアメリカン ブリティッシュな思い出が色濃く残っているアイテムなので捨てることができませんね。
Photo:Naoto Otsubo
Edit:Ryutaro Yanaka
ビームスクリエイティブディレクター
大学在学中よりBEAMSでアルバイトをし、卒業後ショップ勤務、店長、バイヤーを経て現在はクリエイティブディレクターとしてドレス部門を統括。メンズのドレスクロージングに関するセレクトや論理的な解説が持ち味で、媒体での連載や自身のブログ”ELEMENTS of STYLE”は絶大な人気を博している。