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FOOD 日本独自のカレーを探れ

【進化し続ける日本独自のカレーを探れ】いま食べるべき“カレーライス”はここにある!

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現地完全再現の本格インドカレーからご当地カレーまで、百花繚乱な日本のカレー事情。そんななかから、いまも進化を続ける日本独自のカレーを「カレーライス」と定義し、個性溢れる「今食べるべきひと皿」とその作り手を、気鋭のカレーライター 橋本修さんが追いかけていきます。

記念すべき第1回は、恵比寿のGood Luck Curry

現地完全再現の本格インドカレーからご当地カレーまで、百花繚乱な日本のカレー事情。そんななかから、いまも進化を続ける日本独自のカレーを「カレーライス」と定義し、個性溢れる「今食べるべきひと皿」とその作り手を、気鋭のカレーライター 橋本修さんが追いかけていきます。

記念すべき連載第一回目に橋本さんが訪れたのは、2017年の春にオープンした恵比寿のGood Luck Curry(グッドラックカリー)。代官山の人気ビストロ、Ataが手がける新業態ということでも注目を集めるニューカマーです。

ここではいったい、どんなカレーライスを味わうことができるのでしょうか?

オトナが通うにふさわしい立地

モダンなビルの2階に入居するGood Luck Curry。まるでバーのような入口だが、ドア脇には「カレー屋です」というホスピタリティ溢れる案内が。

代官山のAtaといえば、魚介を軸に野菜も肉もカジュアルに楽しめるビストロとして、今や予約がとりにくい店のひとつです。

そのAtaがカレー屋をはじめる?という噂を耳にしたのが2017年の春のこと。ロケーションもAtaからもほど近い、恵比寿、代官山、渋谷のほぼ中間地点で、街の喧騒と少し距離を置いた、大人も通いやすい立地です。

とにかく美しい!フォトジェニックな四原色カレープレート

エビカレーとほうれん草とチーズのカレーのあいがけ。

まずGood Luck Curryのカレーは、そのビジュアルのインパクトからして強烈。近年関西方面を筆頭にビジュアル面も著しく進化するカレー界隈においても、その色鮮やかさは群を抜いています。

カレーが1種類でも2種類のあいがけでも、さらにトッピングを追加してもすべてがワンプレートで提供されるその皿には、カレーや副菜の赤、葉野菜の緑、ライスの黄色、そしてそれらを盛り込む皿の青と、四原色すべての色味が。ビジュアルに対する思い入れを表すかのように、店はウェブサイトを持たず、公式の発信手段はInstagram一本に絞っているというのも、じつに現代的です。

いったいどんな経緯でこんなフォトジェニックなひと皿にたどり着いたのか、Good Luck Curryの発起人である菅原さんに訊いてみました。

「もともと、アイデアのひとつとして『瓶にいれたカレーをテイクアウトで提供する』みたいなものがあったんです。ジャーサラダじゃないですけど、ビジュアルとしてもかわいくなりそうじゃないですか? 現在の形は、その延長みたいな感じですかね。

あと、皿はめちゃくちゃ探しました。この青は、食材では絶対に出せない色ですから。でも、結局既製品からは見つけることができなくて、たまたま知り合いだった作家さんに、特注で焼いてもらいました。この色が出る釜って、日本にふたつしかないらしいんですよ。その出会いは最高でしたね」

ビストロ発だからこその、ぜいたく出汁を使った唯一無二のカレー

Good Luck Curry発起人の菅原悠さん。男前である。

肝心の味の方はというと、これまたビジュアル以上に個性的。Ataゆずりの魚介出汁を軸にした独特なカレーは、すっかり私を虜にしました。

「Ataではたくさんの魚介を使うわけですが、そのなかから例えば、オマール海老のAtaでは使わないような部分でとる出汁を、何か他で使えないか?…というようなところがきっかけですね。せっかくいい出汁があるんだから、それを使わない手はないじゃないですか」

とはいえ、魚介をふんだんに使うビストロで腕を奮いつつ、その豪勢な魚介類を無駄にしたくないと思っても、それをカレーとして提供しようとは、なかなか思いが巡らない。そもそもインドのカレーの多くは、出汁を使わないことがほとんどなんです。

「Ataは客単価が8000円くらいのお店なんですけど、もっとデイリーユースなお店がやりたかったというのが、もうひとつのきっかけです。毎日でも来れる、日常的な店がやりたいねって話をしていて。出汁を使って、それぐらいの価格帯で提供できる飲食店っていうと、まず思いつくのはラーメンなんですが、カレーならもっと幅が広がるかな、と思ったんです。カレーだったらグロサリーやテイクアウトみたいに展開できるけど、ラーメンはテイクアウトできないじゃないですか?」

おいしいだけじゃ意味がない。とにかくこだわった“価格”

価格にもこだわったカレーは2種類。ランチタイムが16時までというのもうれしい。

“デイリーユース”と菅原さんが言うように、週替りのカレー2種類はあいがけにして、トッピングをひとつ追加しても1000円。恵比寿という場所柄や、昨今のカレー事情を考えると破格ともいえる値付け。

「少し迷いもありましたけど、どんな具材を使っても1000円以下になるように、っていうのは最初から決めてました。それ以上の価格になっちゃうと、自分が食べたくないなって。そこは一番こだわったところだし、譲れなかった。カレーにこだわるのはもちろんなんですけど、それ以上に(値段に)こだわりましたね。

最初に『エビのカレーを軸にする』と決めた時点で、採算が合わないだろうなとは思ったんですが、それを1000円以上にしちゃうと、当たり前というか、価値を感じなかったんです。だから、このカレーをこの値段で、っていうところこそがうちの強みだと思っていますし、これがもし1500円だったら、他で食べたほうがいいんじゃないかと思います(笑)。オーナーからは『お前、これ原価あってるんだよね?』って日々言われてますけど(笑)」

「ワンプレート」へのこだわり

店内は10席というコンパクトさながら、居心地の良い空間。

どんなにトッピングを追加してもワンプレートで提供されるGood Luck Curryのカレー。もちろん見栄えにこだわったという部分が大いにありつつ、実はそれだけではないといいます。

「ひと皿の方が食べやすいじゃないですか。とにかくカレーに関しては、面倒なことがいやだったんです。だからメニューも2種類しかない。フラッと来て、ササッと食べて帰れる。それがカレーのいいところなんじゃないかな、と思っていて。だから、今後もメニューが増えたりとかっていうのはないです」

そうきっぱり言ってしまう菅原さんですが、Good Luck Curryのカレーはビジュアル、価格、他ではなかなか味わうことのできない強烈な出汁のうま味だけでなく、その裏側にビジネスとしての合理性も持ち合わせています。面倒を避けたワンプレートを極彩のビジュアルへ、素材を無駄なく使うことで唯一無二のうま味へ、そしてそれらをまとめ上げ、手早く美味しい、作り手も食べ手も喜ぶ破格のカレープレートへ。バックボーンであるAtaと、そこで腕をふるってきた菅原さんだからこそたどり着きえたカレーといえます。

“カレーをテイクアウトする手段”としての絶品カレーパン

夜のみ提供されるカレーパン。カレーパンの概念が変わることうけあい。

カレーのプレートと同じマインドを受け継ぎつつ、Good Luck Curryの脇を固めるのがカレーパン。他にはない、かゆいところに手が届く極上な逸品です。しかし、こちらはまだ安定供給にはいたっていないそうで、現在は夜のみの提供となっています。

「カレーパンも最初からイメージとしてあったんです。というのも、美味しいカレーパンって出会ったことがなくて。大体形も同じだし、外側にパン粉がついていて、それがポロポロ落ちて、口のまわりが油っぽくなって…と、とにかく『もったいないな』と思っていたんですね。

今の形にしたり、細かいパン粉を使ったのは、女性にも食べやすくて、こぼれなくて、油っぽくならないから。中のルーも、普通のカレーパンみたいなペースト状のものが嫌だったんで、店で出しているカレーをほぼそのままパンの中に入れられるように工夫して。それ故、最初は『縦にして食べると前半にカレーが入っていない』みたいなクレームをいただくこともあって…。それは食べ方からレクチャーしました(笑)。あと、特殊な作り方をしているせいで、作りおきが全然できないんですよね。数が作れないから、ほぼ趣味みたいな状態です(笑)」

シンプルすぎる店名に隠された、意外な由来

この看板が目印。掲げられたスローガンもシンプルで力強い。

最後に、「Good Luck Curry」という、直球すぎるが故に独特ともいえる店名の由来についても聞いてみました。

「さっきの食べ方の話ともつながるんですが、ひと目みたら誰でもわかるような、わかりやすい名前にしたかったんです。そんなときに自分の好きなエルビス・プレスリーの“Good Luck Charm”という曲を思い出して、今の名前に決まりました。入り口の看板の横においてある"Don't Worry Be Curry"というフレーズも、当初は店名の候補だったんです。わかりやすいでしょ?(笑) でも、店名っぽくはないので、今ではスローガンみたいな感じで使っています」  

つくり手は頭を捻りながらも、あくまでもカレーはカジュアルに楽んで欲しいという菅原さんの思いが随所に詰まったGood Luck Curry。定食屋感覚で、唯一無二のビジュアルとうま味を持つカレープレートを食べに足を運んでみてはいかがでしょうか?

Photo:Takuya Murata
Text:Osamu Hashimoto
Edit:Yugo Shiokawa

今回訪れた店

Good Luck Curry(グッドラックカリー)
東京都渋谷区東3-21-1 アティモント恵比寿ビル2F
03-3407-9630
営業:ランチ 11:30〜16:00/ディナー 18:00〜24:00
定休:日曜日
https://www.instagram.com/goodluckcurry/

橋本修(はしもと おさむ)
スパイスディーラーとしてストリートで名を馳せ、2017年からはカレーに特化した食ライターとしての活動を開始。音楽ライターとしての顔も持ち、グルーヴィーに日々カレー屋をハシゴしている。(イラスト:@animamundi_)


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