BUSINESS ― 誰がアパレルを殺すのか

「だから洋服が壊れた 」戸賀敬城が語るアパレル不況の元凶とは?

2018.1.31 2018.1.31
2018.1.31

10年間編集長を務めた『メンズクラブ』を退かれた理由は?

ハースト婦人画報社『メンズクラブ』10代目編集長として同誌を10年間牽引し、昨年独立。昨年末には「リシャール・ミル(Richard Mille)」が協力するラグジュアリーに特化した新ブログサイト「LUX-BLO」を立ち上げ、さらに今年に入って「オフィス戸賀」を設立するなど、いよいよ本格的に動き出したのがブログ「トガブロ。」でも有名な戸賀敬城さん。編集長時代、“メンズクラブの時計イベントやラグジュアリーブランドの読者イベントで何千万円も売り上げた”という伝説も残す戸賀さんに、昨秋冬より始動したナノ・ユニバースとのブランド「nano LIBRARY(ナノ ライブラリー)」の春夏コレクションも含めて、前後編に渡りお話を伺いました。

僕と干場君の違いと、メンズクラブ編集長を退いた理由

――戸賀さんは編集長時代、ファッションに限らず、時計からコスメ、ゴルフまでブランドの顧客招待イベントで陣頭指揮を執り、ラグジュアリーブランドでは桁違いの売上を残すなど、数々の「戸賀神話」が耳に入ってきています。

まず必ず書いてほしいのですが、僕とフォルツァ編集長の干場君とは実は仲が悪いんじゃないか(笑)というウワサを聞いたり、似たような印象を持たれている方も多いと思いますが、僕は人前に出たり、動画に出たりするのが嫌いです。

干場君とは仲良くしていて、月に1回ほど飲んだりしているんですよ。彼はタレントとして積極的に前に出ていて素晴らしい。彼のように40代でファッションを語れて、SNSで発信ができて、話も面白くて、華があるのは本当に希有な存在だと思うし、20代や30代の男性をファッションに引き込む力もある。

あとできちんとお話しますが、僕は立場上やむなくブランドを巻き込んでイベントを企画して、数字やレスポンスを上げるために自ら出ざるを得なかったんです。僕は仕事が大好きで、仕事の一環としてのイベントは楽しいんですが、決してトークが好きで楽しいからイベントに出ているわけではありません。

――では、まず昨年4月に編集長を退任されました。「メンズクラブといえば戸賀」という印象でしたが、退かれた理由は?

退任したときは49歳で、自分の父が49歳で他界しています。まず年齢が一つの区切りになりました。年2回精密検査を受けるほど“健康ヲタク”なのも親父の影響ですね(笑)。あと、10年間編集長をやりましたが、後半は本当に忙しくて、休みがほとんど取れませんでした。ちょっと自分の身体を休ませたいという思いがあったのも本当です。

ハースト婦人画報社はいろんなことを教えてくれて本当に感謝しているので今もアンバサダーとして残っていますが、50歳を前にして、自分の先を考えたときに、未来の仕事に向けて早くスタートを切りたいというのも正直な理由です。自分を見つめ直して、新しく動き出して、60歳までは頑張って、その先は踏ん張って(笑)という感じでしょうか。具体的には、ラグジュアリー、富裕層マーケットを相手にしたビジネスをしたいんです。

 

ファストファッションが「洋服を壊した」

――戸賀さんは編集長以前からずっとメンズファッションを見て来られています。この記事のテーマである「アパレル不況」についてはどう感じていますか。

アパレル不況の原因はいろいろあると思います。出世しても給料が上がらないとか、使えるお金が少なくなったとか。僕の個人的な意見ですが、ファストファッションが多く出てきて「洋服を壊された」のも大きいですね。

ファッションは本来、道具ではないのに道具にされた。もちろん道具は安くていいし、僕も使っているので否定はしませんが、それでいろんなところにしわ寄せがきてしまった。そして、道具なのに色気があったり、よく出来ていたりするのも認めますが、若い人たちがそういう洋服しか知らないで育っていて、「良い服、高い服、価値ある服」に興味がなくなって、そこから「ラグジュアリーブランドは必要なの?」となっていることが、ファッションをダメにしたと思います。

――特に若い世代は、何ごとにも淡泊というか、戸賀さんはどう見ていますか。

まず、30代が社内で出世したり上のポジションに就いても、それに見合った服や時計を身に着けていませんよね。昔は先輩を見て覚えたり、先輩に聞いたりしたものですが、もうそういう文化も意識もありません。若い人も、「会社の服は制服でいい」という意識が強いですが、でも若い世代に期待するのは、「プライベートで着る服は金をかけてもいい」と思っている人も多くて、自分が良く見える、自分らしくいられる、格好良く見えるTシャツは買おうという意欲は見えること。なので、若干の期待はしています。

 

メンズクラブ編集長に就任して変えていったこと

――アパレル不況と同時に、ウェブ媒体が普及するにつれて「雑誌不況」も言われていますが。

『メンズクラブ』は自分も中学時代から読んでいて、まさに男たちのファッションバイブルでした。その雑誌に編集長として就任したときには、メンズクラブのトラッドのDNAを活かしつつ、30代半ばが実践できる「よく見える服、便利なアイテム、使える商品」を意識しました。特に若い人に手にとってほしかったので、「自由」という大きなくくりにシフトして、イタリア服を中心に据えて、自由や「中庸」を加えていきました。

――編集長時代に誌面作りと同時に、イベントなどでも活発に活動された理由は?

もちろん雑誌など紙媒体は大好きですが、いずれはデジタルにシフトするだろうと思っていました。編集長をやりながらデジタルの魅力も少しずつ感じるようになってきて、なんでもいいから自分でやってみようと始めたのがブログ「トガブロ。」です。一度デジタルに身を置きたかったんですね。それで、狙っていたわけではないのですが、ブログやFacebookの普及により読者とストレートに繋がって、いろんな意見を聞けるようになった。そこから、ブランドの冠イベントや物販イベント、さらに有料イベントの実施まで発展していきました。

雑誌もそうですが、読者の意見を聞いてそれを企画に反映すると外すことが少なくなります。自分のブログやFacebook、イベントなどで直接話が出来、聞けるという「近道」ができました。それが、メンクラとラグジュアリーブランドの親和性を高めたという評判に繋がります。

――デジタルの魅力を感じたわけですね。

デジタルの一番の魅力は、読者の特性がつかめて、何に興味があるのかを計れる。なので、イベントにフィットした人を呼ぶと、打率が上がるわけです。反響があるとウィンウィンなので、それからデジタルは欠かせないものになっていきました。

特に40代も半ばになるとイベントはちょっと恥ずかしくて行けないのですが、30代だと時間が合えば来てくれるし、恋人や同僚を連れてどんどん来てくれます。それで、イベントを通じて彼らと同じ目線で話ができたことはとてもよかった。これも狙っていたのではなく、イベントを続けていたら彼らの消費行動や嗜好がわかったということです。


 

次回「後編」では、ブランド「ナノ ライブラリー」2018年春夏コレクションを中心にお話を伺います。

Photo:Simpei Suzuki
Text:Makoto Kajii
Editor:Ryutaro Yanaka

戸賀敬城(とがひろくに)
1967年、東京生まれ。学生時代からBegin編集部(世界文化社)でアルバイト、大学卒業後にそのまま配属となる。1994年Men’s Ex(世界文化社)の創刊スタッフ、2002年Men’s Ex編集長に。2005年時計Begin(世界文化社)編集長、及びメルセデスマガジン編集長兼任。2006年UOMO(集英社)エディトリアル・ディレクター就任。2007年4月に10代目『メンズクラブ』編集長に就任。2016年10月に創刊した『Esquire The Big Black Book』の編集長も兼任。2017年5月より独立し、ハースト婦人画報社のメンズ メディア ブランド アンバサダー、GDO社『ブルーダー』のスーパーバイザーに就任。同年、ナノ・ユニバースのメンズディレクターに就任。

トガブロ。
https://ameblo.jp/togablo/
ナノ・ユニバース
http://www.nanouniverse.jp/
ナノ ライブラリー
https://store.nanouniverse.jp/jp/c/c2020

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