やっぱり憧れは、『007』のジェームズ・ボンド!
さて、72回目はチェスターバリーのタキシードです。オトナになるにつれて、12月が訪れるとパーティにお呼ばれする機会が多くなりまして。僕レベルですと普通のスーツでも十分なんですが、年の瀬くらいタキシード着てもイイんじゃないかって。ただ、まだまだコワッパですから、ピークドラペルで拝絹ってのも仰々しすぎる気がするし…。そんなときに出逢ったのが、今回のチェスターバリーのタキシードなんです。
コレ買ったときは、2002年にサヴィル・ロウに自身のショップ「スペンサー・ハート」をオープンさせたニック・ハートがクリエイティブ・ディレクターを務めていまして、彼はシャープかつコンパクトで、とにかくナローという、後にディオール・オムのエディ・スリマンが一世を風靡させるスタイルをひと足早く打ち出していました。
そんなスタイルをチェスター・バリーの職人たちが作り上げるって言うんだから、気になっちゃうじゃないですか。極上の素材を使い、8割をハンドメイド、まさに最高峰の既製服を作るチェスター・バリーは、在り来たりな褒め文句ですが"スーツのロールスロイス"なんて讃えられていましたからね。ちなみに、かつてラルフローレンの最上級ライン「パープルレーベル」のスーツやジャケット、立ち上げ当時のマイケル・タピアのスーツもチェスターバリーが作ってました!
もう、買いたくなる要素満載(笑)。それまでは、質は高いけど、ちょっとオヤジっぽかったスーツが、一気に若々しくなり、シルエットはもちろん、素材や裏地使いに至るまでモダンに変化していましたから。タグもカッコ良くなってるし、それとハンドステッチの組み合わせに惚れ惚れします。
もちろんかなりの高額でしたが、「そろそろ上質なスーツ着なくちゃ」なんて、気負ってた時期だったんで、結構悩んだ挙句に清水ダイブ! オトナの仲間入りをしましたとさ。
購入したのは2001年頃なので、すでに16年目。着用回数はそれほど多くはないとは言え、いまだ現役でバリバリ活躍してもらってますし、全然古びれることもない。生地も縫製も抜群なので、着るほどに身体に馴染み、日を追うごとに自分のモノになっている気もします。高かったけど、決して損はなかったと思ってます。
とうわけで 今宵もコレ着て、パーティ行かなあかんねん。
Photo:Riki Kashiwabara
Text:Ryutaro Yanaka
『FORZA STYLE』シニアエディター
谷中龍太郎
さまざまな雑誌での編集、webマガジン『HOUYHNHNM』編集長を経て、『FORZA STYLE』にシニアエディターとして参画。現在までにファッションを中心に雑誌、広告、カタログなどを数多く手掛け、2012年にはニューバランス初となるブランドブックも編纂。1976年生まれ。