テーラーだった父はいつも同じ恰好をしていた。いつしか不思議に思って「なんで他の洋服を着ないの?」って聞いてみたことがあった。そうしたら父はこんなことを言っていた。「いいんだよ私はいつも同じで。これが好きなのさ。落ち着くんだよ……」。
父が亡くなった後、ワードローブを見たら、グレーのスーツが10着かかっていた。同じ色の同じカタチの。よく見たら、そのうちの5着は春夏用のウール。もう5着は秋冬用のフランネル。揃いに揃って10着とも同じミディアムグレーの色だった。
普段は白いシャツに黒のネクタイ。上着の胸ポケットには、シルクのポケットチーフ。寒い冬だけは僕が誕生日にあげたカシミア素材の黒のタートルネックのニットを着ていた。これが父のスタイルだった。どこに行くのも、いつも同じ恰好をしていた。
いつしか父と同じような年齢になり、気づけば自分も父と同じスタイルが好きになっていることがわかった。このスタイルをしていると、自分らしくいられて心が落ち着くこともわかった。そして、親子はだんだんと似ていくことも……。
あれ?何の話をしてたんだっけ?(笑)
hoshiba
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