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【レアインタビュー!】パーツを極めた「10 EYEVAN」のメガネの真実とは?

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ネジの最高峰といわれる六角星型のトルクスネジや天然の貝を使用したシェルパッド(鼻パッド)など、こだわりの「10個のパーツ」からなるメガネとして注目される「10 EYEVAN(10 アイヴァン)」。手に取ると、メガネは美しいパーツの集合体であることが伝わってきます。

12月2日(土)から10日(日)まで、東京・トゥモローランド渋谷本店にて、国内ファッションストアでは初となる10 EYEVANのフルコレクションを展開。フォルツァでは、あまりメディアに登場しない10 EYEVANのデザイナー中川浩孝氏に、「デザインと機能性」をテーマにインタビューを行いました。


中川さんが2年間掛け続けている10 EYEVANのメガネ

 

メガネのデザインは独学。失敗から多くのことを学んだ

10 PARTS of 10 EYEVAN――アイヴァンのデザインチームのデザイナー中川浩孝氏が手がける10 EYEVANは、“美しい道具”がコンセプト。10 EYEVANのメガネに使われている、力の伝導効率が非常に高く、カムアウト現象(ドライバーを用いてネジの締付けを行なう際に、上から押さえつける力(推力)が小さい場合などに、十字穴からドライバーが手元に浮き上がってくる現象)が少ないβチタン製のトルクスネジの開発を“デザインの起点”にして、昨年春にローンチ。ほかの9つのパーツにも「機能性と美観性に同等の価値を置く」というブランドの考え方が具現化されています。

――中川さんのプロフィールをお教えください。

今44歳で、メガネに携わって約20年になります。大学を卒業して機械工具メーカーを経て、セレクト系の眼鏡店に就職。販売と並行してデザインの勉強を独学で続けました。そして約10年勤務したのち、独立し、ショップのOEMなどのメガネを請け負う仕事を約2年ほど手がけました。

――その当時の仕事でデザインの手応えは感じましたか。

子どもの頃から絵を書いたり、工作でロボットを作ったり、何かを作ることに一番喜びを感じていました。その流れでメガネをデザインするようになり、この世界に入りましたが、独立した当時に作ったメガネはあまり売れませんでした(笑)。

――敗因はなんだったんですか。

細かい寸法に今ほどシビアになれなかったのと、ベーシックな売れ筋に少しだけ自分が好きな新しい要素をプラスしたのですが、思っていたよりも嗜好性が強く出てしまいました。売れ残るのは心理的にもきつくて、不良品の調整や研磨など職人のような作業に多くの時間を費やしたり、営業や検品、経費処理など、デザイン以外の面でいろいろ大変でしたが、振り返ると本当にいい勉強になりました。

 

10 EYEVANは「道具の塊」。デザインしなくていい

――アイヴァンとの出会いはいつですか。

8年ほど前に代表の山本から声をかけてもらい入社し、3年ほど大阪で勤務したのち、5年前に東京に移るのと同時にアイヴァンデザインチームとして「EYEVAN 7285」のデザインをスタートしました。現在は10 EYEVANのデザインのほかに、デザインチームとしてEYEVAN 7285と、サングラスブランド「Eyevol(アイヴォイル)」のデザインを手がけています。10 EYEVANに関しては、僕がやりたいものを代表の山本に直接プレゼンしてそのままリリースしています。

――「美しい道具」をコンセプトにした10 EYEVANを始めるきっかけは。

メガネ業界にいて、「昔あったパーツはなぜ今作れないのだろう」とか「どうして他の業界では良いネジが出てくるのに、メガネにはないのだろう」と、機械工具に携わったこともあって、パーツに対する気持ちが溜まっていったことが一つあります。それで、「パーツありきのブランド」をやりたいと思いました。

――そこからβチタン製のトルクスネジがブランドの出発点になったと。

そうですね。3年以上の時間がかかりましたが、レンズを支える重要なパーツであるリムを約40年間開発し続けている職人の丸山さんにチタンの伸線を依頼し、ネジ専業メーカーで製作しました。さらに、鼻パッドは洋服に使用される貝ボタンの世界有数の生産地域である奈良県の工場で熟練職人の手によって一つひとつ丁寧に作られています。そうして「10個のパーツ」をクリアしていきました。

――10 EYEVANを見ると「美は細部に宿る」という言葉を思い出します。

メガネは道具なので、素材の適正な使い方や、素材が機能するときに能力を発揮できる形状を突きつめれば、自然にデザインになってきます。たとえば、βチタンは0.9mmぐらいがいちばんメガネとしての能力を発揮する素材です。そこには、新しい/古い、カッコイイ/カッコ悪いを超えたものがあって、究極は、「道具の塊」であり、デザインしなくていい。10 EYEVANのメガネは、10個のパーツがバランス良く全部が繋がっています。

――中川さんが「メガネのデザインで一番大事にしている」のはなんですか。

レンズの玉型のカタチですね。10 EYEVANはパーツ発想で向き合っているブランドなので、玉型は唯一デザイン的に遊べるところです。今自分が掛けているメガネも好きなカタチですが、ボストンとかラウンド、スクエアなど一般的な玉型のカテゴリーに属さない、名前の付かないものが好きです。

――それはどういうことですか。

メガネを掛けて、「この玉型は丸なのか四角なのか」とたどり着けないカタチです。ある日は四角に見えるけど、違うときには丸に見えたり、人って、理解できないから惹かれ続けることがありますよね。自分もそういう部分に惹かれてもう2年掛け続けています。

 

「世の中にないからつくる」のがデザイナーの使命

――中川さんは、オリジナリティはどうお考えですか。

オリジナリティは絶対必要です。今は昔のヴィンテージのメガネを買おうと思えば比較的容易に探せますが、自分がこの職業を選んでいるのは「世の中にないからつくる」わけです。デザインに関わってよく思うのですが、この仕事はオリンピックの競技の記録に似て、偉大な先人たちが積み上げてきたものの上をいくものを出す、ちょっと記録を伸ばす戦いをしている感覚があります。実際には得点や数値で競い合うわけではないので勝ち負けの判断はつきにくいのですが……。先人たちが培ってきたものを意識しながら、「知っていてそこにいく」ことだったり、あえて時代を戻ったり、その時代には作れなかったものを世に出したりするのも使命だと思います。

――トゥモローランド渋谷本店のイベントでは中川さんも店頭に立つそうですね。

今回のような“出張10 EYEVAN”は初めての試みです。トゥモローランドのバイヤーの田辺さんや渋谷店店長の中村さんには、10 EYEVANの世界観や自分が表現したいイメージを深く理解していただいていると思います。今回はお二人からのオファーでこの企画が実現しました。10 EYEVANの「クラフト的要素とアート的要素」とトゥモローランドのイメージはすごく合うなと個人的に思っています。イベントでは、フロントリム裏側の「10」が刻まれている細かい彫金など、掛けると気づかないところを見てほしいですね。

――では、今後の10 EYEVANについて教えてください。

道具としてのクオリティは少しでも上げていきたいと思っています。今は「芸術性と機能性」に同等の価値を置いていますが、純粋に道具としての機能性のみを追求し、「結果的に美しい」というのが本来のプロジェクトのあり方だと思います。たとえば軍モノは、作っている人は見た目の美しさは追求せず、機能性だけを考えてデザインしているのだと思いますが、それを客観的に誰かが見たときに美しいと感じる。銃のデザインなどもそうですね。それがいわゆる「機能美」だと思います。でも、銃のデザイナーもきっと機能的に邪魔にならないところに美しさは考えているでしょうね(笑)。道具でもすべての部位が機能的な裏付けがあるデザインなわけではなく、意匠的に遊べる部分は必ずあります。一見無駄なように思える、その部分に強く惹かれる場合もあって、矛盾しているようですが、そういった部分のデザインも同じように今後も追求していきたいと思います。

 

トゥモローランド渋谷本店でイベントを開催

トゥモローランド渋谷本店では、12月2日(土)から10日(日)まで、フルコレクションでは国内ファッションストア初となる「10 EYEVAN」の展開と、「EYEVAN 7285」新作フルコレクションのローンチを開催。

会期中の12月2日(土)と3日(日)には、デザイナーの中川浩孝氏が来店し、普段は行なっていないサイズ調整とフィッティングサービスもあり。期間中に商品を購入した方には、ノベルティとして10 EYEVANのLOOKBOOKをプレゼントします。

トップ画像:10 EYEVANのデザイナー中川浩孝氏

【問い合わせ】
トゥモローランド 渋谷本店

渋谷区渋谷1-23-16 1F、B1F
03-5774-1711
営業:11:30~21:00
定休日:不定休
http://tomorrowland.jp

10アイヴァン
http://10eyevan.com/

Photo:Simpei Suzuki
Text:Makoto Kajii
Edit:Ryutaro Yanaka

 



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