究極のフツーを考えたら、究極のエロスにたどり着きました
どうしても大ぶりのバーキンに目が行ってしまいますが、今回はそれがイヤらしく見えないように引き算をしまくった上、たどり着いたコーディネイト。いわば、僕が考える“究極のフツー”を実践してみました。バッグに注目させておいて、実は他の部分に仕込んだエロ爆弾。さあ、それがどこにあるのか探す旅に、一緒に出かけましょう!
アイテム
ジャケット/WAKO Classics Designed by Yoshimasa Hoshiba
シャツ/インダスタイル
ジーンズ/ブルネロ クチネリ
チーフ/ムンガイ
ベルト/ジャン・ルソー
時計/セイコー
バッグ/エルメス
靴/WH
(すべて干場私物)
この連載の下のほうでも紹介していますが、この秋、僕の3冊目の書籍となる『究極の私服』が発売されました。実は発売前、僕から「究極のフツー」というタイトルを提案したところ、担当編集者さんに「干場さん、それじゃあ なんの本かわかりませんよ」と言われ、あえなく断念。
そりゃ、そうですよね。でもね、僕のファッションの一番の要となるのが、“フツー”に見えることなんです。なんの変哲もないスタイルだけど、なんだかお洒落な感じがするというのが目指す地点。だからこそ、最近は いかにそこにエロスを注入するかに夢中になってしまって……気絶寸前です。
まず、このコーディネイトを見てください。ファッションに敏感な女性なら、完全にエルメスのバーキンに目が行ってしまうと思うんですが、これは僕なりの見せ球。今回は、存在感のあるバーキンをいかにさりげなく見せるか、イヤらしさを消し去るかに重きを置いて、それぞれのアイテムをピックアップしています。引き算しまくった末の、大人のスタイルといえばいいでしょうか。
究極のフツーとは、いわば誰でも もっているような服を、定石通りにコーディネイトすること。そこでお洒落に見せるには、押さえるべきポイントがあります。それが僕にとっては“素材”であり、“かたち”なのです。
例えばジーンズのシルエットは、今の時代の主流になっているテーパードスリム。それだけでは飽き足らず、17.5㎝の裾幅を16.5㎝にお直ししています。僕の脚にはちょっと太かったんですよ。さらに、ジーンズは春夏は淡いインディゴブルー、秋冬は濃いインディゴブルーと、シーズンによって使い分けられるように2本揃えているのも干場流。陽射しの強さによって、見え方は変わってきますからね。
ジャケットは以前、和光と一緒につくったWAKO Classic Designed by Yoshimasa Hoshibaの一着。このときは、和光のお客様に合わせて、やるからには “究極のネイビージャケットをつくろう”と思い、始まった企画でした。着丈がやや短めの段帰り3ボタン、ナチュラルショルダーと見た目は至ってフツー(後ろにトリプルベンツを入れたのは多少トリッキーですが)。サンプルとして僕のサイズで誂えてもらったため、フィット感はパーフェクトです。やっぱりテーラードはオーダーが一番きれいに見えるんですよね。究極の“かたち”を目標にするなら、オーダーに行き着くんだと思います。
ネイビージャケットに白シャツに、色落ちしたジーンズ。以前も注目を集めましたが、もはやこれはベーシックな組み合わせとして浸透していますよね。シンプル極まりないというか……。「え、こんな格好にバーキン?」。目の前の美女は、そう思うでしょう。まぁ、最初はバーキンに目を奪われるでしょうからね。
でも、それこそが作戦。油断して腕を組んだ途端、仰天&昇天します。このジャケットの素材は、ロロ・ピアーナ社の「トップチャイナ」。これは中国産の最高級カシミアだけを厳選した世界トップクラスの素材で、手触りはふかふか。しっとりとろけるような感覚で、失神してしまうかもしれません。何度も言っていますが、パッと立ち上がる素材の良さには、エロスの神が宿っています。
例えば、いい素材のコートを、機内でキャビン・アテンダントに、あるいはホテルのクロークの女性スタッフに預けたとしますよね。彼女たちは手にした途端、間違いなくうっとりします(妄想)。そして、「どんな人が着ているのかしら」と思わず顔を上げ、そこで僕と目が合うのです。「いや、そんなつもりじゃないの」と、頬を赤らめる彼女。「照れることないさ」と、僕。そうやって、男女の物語は始まるのです。
今回は、“素材”と“かたち”の話を中心に展開してきましたが、あと付け加えるなら色使いも大切。メガネにベルト、バッグ、靴と、とことん色合わせをしています。
ブラウンで合わせる場合、淡いものだとトーンを揃えるのが難しいので、僕はなるべくダークブラウンを選ぶようにしています。濃いめの色調を選んでも、ソリッドな印象のブラックと違って、マイルドな風味づけをしてくれるんで重宝しています。だってほら、このコーディネイトのエロスを包み隠して、いい人オーラに変換してくれているでしょ?
今回のスタイルのキモは……。
● バーキンは、あくまで見せ球。
● 究極のフツーに見えるアイテム選びを。
● ネイビー×白×ブラウンでこざっぱりと。
● 手触りに優れた上質な素材感こそエロスの源流。
● かたちはミリ単位にまで徹底してこだわる。
Photo: Ikuo Kubota(OWL)
Styling&Model:Yoshimasa Hoshiba
3冊目の書籍が発売になりました。今回は、難しいとされる大人のカジュアルスタイルについて書いています。読んでない方はぜひ!
干場義雅が教える
「究極の私服」
(日本文芸社)
2冊目の書籍は、色気についてです。
普通に見えて、なぜか人を惹きつける男の共通点について書いています。読んでない方はぜひ!
一流に学ぶ
「色気と着こなし」
(宝島社)
1冊目は、スーツの着こなし術から世界の一流品選びまで、基本的なことやお洒落の本質について書いています。読んでない方はぜひ!
世界のエリートなら誰でも知っている
「お洒落の本質」
(PHP出版)
【エロサバ】-Hoshipedia
「エロサバ」とは、エロいコンサバの略で、干場の哲学により生まれた造語。シンプルでベーシック、コンサバティブな洋服を着ているのに、なぜかエロく見えるスタイルのこと。例えば喪服の女性。成熟した大人の女性が喪服を着ていて、メイクもナチュラルで抑制しているのに、不思議と色っぽく見えるスタイル。例えば、普通の白いシャツを着ているのにも関わらず、胸元のボタンの開け方や袖口のまくり方でSEXYに見えるスタイル。粗悪な素材でデザインが変わっているシャツでは駄目。上質な素材でベーシックなシャツだからこそ、崩して着こなしても上品さが保てるのです。男性で例えるなら、仕立てられたグレーの無地のスーツを着て、上質な白シャツに黒の無地のネクタイのような極めてコンサバティブなスタイルをしているのに、内側から大人の色気が香るスタイルのこと。
『FORZA STYLE』編集長
干場義雅
尊敬する人は、ロロ・ピアーナの元会長セルジオ・ロロ・ピアーナさん、ピエール・ルイジ・ロロ・ピアーナさん、トッズの会長ディエゴ・デッラ・ヴァッレさん、格闘家のブルース・リーさん、初代タイガーマスクの佐山サトルさん。
スポーティでエレガントなイタリアンスタイルを愛し、趣味はクルーズ(船旅)と日焼けとカラオケ。お酒をある一定以上飲み過ぎると、なぜだか一人感無量状態になって男泣きする現在44歳の小誌編集長。東京生まれ。