ハイゲージよりも、ハンドのざっくりした風合いのニットが好きなんですが、全然着てません…。
人生には、どうしても手放せなかった服、そう「捨てなかった服」があります。そんな服にこそ、真の価値を見出せるものではないでしょうか。そこで、この連載では、ファッション業界の先人たちが、人生に於いて「捨てなかった服」を紹介。その人なりのこだわりや良いものを詳らかにし、スタイルのある人物のファッション観に迫ることにします。スタイリストの小沢 宏氏に続いて登場するのは、数多くのイタリア ブランドを日本に紹介した成毛賢次さん。成毛さんが膨大な数を所有してきた中でも捨てられなかった服をご紹介する企画、第7回はさまざまなカシミアニットです。
まずは、アルフレッド・カネッサが手掛けていたマーロ(MALO)。僕はハイゲージのものより、ざっくりとハンドで仕上げた風合いのものが好きなんです。ちなみに、こちらは通常のラインではなく、クラスが上でシリアル入りで箱に入れて展開していました。
でも、ちょっと大きいのでコインランドリーに入れて、縮絨というか、もう少し縮まないかなと思ってるんです(笑)。
これは、肩線がない、大昔の作り方で作っている贅沢な仕様。普通ニットも、前身頃と後ろ身頃をつなぐ肩線があるのですが、一気に編み上げて、後に袖付けをしているという、分かる人にしか分からないこだわりですね。
これは、さらにこだわりが詰まった、丸編みのカシミアニット。前身頃も後ろ身頃も、袖にもつなぎ目を作らずに編み上げています。これなら、どんなに なで肩でも、いかり型でも合うのが魅力的なんですよね。
そして、これは「97 リュー デ ミモザ(97 Rue des Mimosas)」で4plyのハンド。このブランドを最後に持っていた会社が潰れてしまって、宙ぶらりんな状態になっていて大変残念ですが、一時はSHIPSのバイヤーを筆頭にファンが多くて、展開してみたんですが少し難しかったですね。
このカーディガンはマーロが関わってる頃で、マッシモ・アルバがこのブランドの責任者だったんです。これは3ゲージぐらいのざっくりとした感じですが、45ゲージくらいのハイゲージもあったんですよね。
このニットの色使いは、イタリアで地中海を泳いでいて水面にポッと顔を出したときに見える景色のようで気に入っています。それと肌触りも抜群です。
他にも4ply リブで仕上げたラグランスリーブやショールカラーのカーディガンなど、たくさんのカシミアニットがあるんですが、どれもこれもほとんど着ていない…。好きで買っているのに着ないなんて不思議ですよね。
Photo:Riki Kashiwabara
Edit:Ryutaro Yanaka