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BUSINESS 「超名医に聞け!」

【自治体の胃がん検診はムダだらけ?】名医が教える原因、検査法、手術法。

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——後藤田先生は内視鏡的粘膜下層剥離術(以下、ESD)の権威と聞きます。どんな手術なのでしょうか。

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後藤田:患者の口から内視鏡を入れて胃の内部をモニターで見ながら、「ITナイフ」を操作し、がんを剥ぎ落とす手術です。胃の壁を生理用食塩水で膨張させながら作業を進めますが、胃壁は激しく動くために通常のメスでは謝って傷つける危険があったのです。また胃の厚さは5〜7mmと大変薄いので、ちょっとのミスでも突き破ってしまうんですよ。そのリスクを抑えるのが、ITナイフといわれる手術器具です。

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インシュレーション・チップの略で、先端に球場の絶縁体を装着し、ナイフには通電したままで焼き切れる。ITナイフの出現によってESDが開発され、普及につながりました。

——聞いているだけで、難しそうですね。

後藤田:切除しやすいように器具の工夫は進んでいますが、やはり訓練の積み重ねです。片手でりんごの皮を剥くような難しさがあります。がんの大きさや場所にもよりますが、本日の手術は40分程でした。医師によってはその数倍かかるでしょうし、そもそもできない場合もあり、個人差が大きいですね。

——外科手術のようにお腹を切らないので患者の身体に負担が少ないのは想像できますが、患者さんが実感できる一番のメリットとは何なのでしょうか。

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後藤田:ESDによって胃の摘出を免れる道が大きく開かれたことでしょう。これまでの開腹手術は、胃を3分の2、半分、もしくは全部を摘出した。そのために術後の生活が激変します。食事制限にはじまり、食事のたびに目まいや汗が流れることもあります。ESDなら、がんだけを切除できるので、術後2週間も経てば、これまでと変わらない食生活を送ることができるのです。これはとても大きなメリットです。

——後藤田先生の座右の銘は、「最善を祈って、最悪に備える」だそうですね。

後藤田:何事も事前の準備が大事です。禅問答のように聞こえるかもしれませんが、想定できないことも想定する。われわれの仕事は一つのミスがまさに致命傷につながります。それを防ぐには、スタッフの間で密にコミュニケーションをとることが欠かせません。

通常の大学病院であれば消化器疾患は内科医師が診断し、外科医が手術をする流れでした。近年は、早期発見された食道、胃、大腸がんなどは内視鏡を使った治療が主流となり、内科医が手術を行います。ただ、何が起こるかわからないリスクもあり、外科医と協力して治療を行う。

当院でも、毎週木曜日、内科と外科でカンファレンスを行います。ESDがうまくいったとしても術後の合併症が起これば内科だけで対応できなくなるかもしれない。外科医の先生に一言声をかけスタンバイしてもらうことで、それを防げる。治療の前に外科医の声を聞くことで患者さんにとってもより良い治療が提供できる。外科医と内科医が縦割りで情報を共有できなけば、患者さんのためにならないのです。意味のない壁はとっぱらい、共有することで偏りがなくなり、最善の医療を提供できると信じています。

——そんな後藤田先生が、ご自身の体のメンテナンスのために心がけていることはありますか?

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後藤田:ジャジャーン!お昼は手作りの愛妻弁当です。20品目以上を使用した手の込んだお弁当で有難い。もったいなくて食べられないぐらいです(笑)。夜も何もなければ21時には病院を出て、自宅で夕食をとるようにしています。赤身の肉が好きで、外にステーキを食べに行くこともありますが、妻の料理に勝るものはない。バランスの良い食生活が、健康キープの秘密です。

——とてもうらやましい話です。一日の生活の流れをおうかがいできますか?

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後藤田:朝は5時30分に起床、7時に病院に着き、8時30分の外来までの90分を効率的に使います。論文も年に1本は書くようにしていますね。研究や若手の育成も仕事ですから、時間は有効に使いたいと思っています。

——読者もお名前で察しているかもしれませんが、あの「カミソリ」の異名をとった後藤田正晴官房長官を大叔父に持ち、弟さんは正純さんで、衆議院議員。義妹は『綺麗なお姉さん』こと水野真紀さんとまさに華麗なる一族です。

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後藤田:叔父が騒がれていた時代、私は高校生でした。多感な時期で、「政治家にだけはなるまい」と心に硬く誓った。しかし、弟は小学生だったの、『叔父さんってかっこいいな』と思っちゃったんでしょう(笑)。もし人生がやり直せるなら、と言われたら、通産官僚になりたいです。城山三郎の『官僚たちの夏』を読んで感動したからです。「高校生に戻ってきちんと勉強して東大法学部に入り、通産省に入りたい」とは思いますが、戻ってもまたきっと勉強しないでしょうね(笑)。

——ざっくばらんにお話しいただき、ありがとうございます。そんな後藤田先生にとって、息抜きは何でしょうか?

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後藤田:うーん、難しい。毎日好きなように生活をさせてくれる妻と娘、健康な体に産んでくれた両親には感謝しています。

カミソリと呼ばれた叔父の血筋は、後藤田先生のITナイフの手さばきに宿っているのかもしれません。次回の名医に乞うご期待!

 

Photo:Sono Aida
Text:Daisuke Iwasaki

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後藤田卓志(ごとうだ・たくじ)
1965年、東京都生まれ。92年東京医科大学を卒業し、同内科学第三講座入局。国立がんセンター中央病院消化器内科に勤務。2010年、国立国際医療研究センター消化器科医長・内視鏡科長。12年より現職。趣味はゴルフ、テニス、野球。学生時代は強肩のセンターとしてならした。



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