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FASHION ー 服飾歳時記

赤峰幸生の「服飾歳時記」

「立秋」の着こなし 夏の閑話休題「たまには女性の話でも」

2017.8.7
2017.8.7

梶が谷『めだか荘』から夏便り「私の好きな女優論」

すずかぜいたる  涼風至  初候(8月8日~12日)
ひぐらしなく   寒蝉鳴  中候(8月13日~17日)
ふかききりまとう 蒙霧升降 末候(8月18日~22日)

立秋(8月8日頃)とは名ばかりのこの頃、季語を口にすることで一日も早く暑さから逃れたいという願いを言葉にしているのかもしれません。ただ朝晩のある一瞬に涼しい風を感じることも確か。この頃の空を言い表す言葉に、“行き合いの空”というものがあります。“行き合い”とは出逢いのこと、2つの季節が出合うのです。入道雲と鱗(うろこ)雲が天高く出合うとき、互いの雲同士が綱引きをし合いながらやがて鱗雲組の勝ちになるのです。

私事で恐縮ですが、8月17日(木)は私の生誕日。今は亡き母が、子どもの頃、実家のあった東横線・学芸大学から渋谷の病院に通っていたことをよく聞かされました。生まれた日の夜も親指を音をたてて吸っていたそう。今と変わらない食いしん坊は、生まれた日から始まっていたのかもしれません。

小学生の頃、夏休みはなんといっても大好物の西瓜(スイカ)を裏庭の井戸で何度も何度も冷やして、まな板の上で包丁を入れたときの“ビシビシ”の音、上半身裸になってガブガブ食べる醍醐味は鮮明に覚えています。そして食べ残ったスイカの皮を剥いて祖母がよくぬかみそにつけてくれました。

さて、秋とは名ばかりといえど、少しは秋を感じる色をどこかに取り込みたい気分が頭をかすめます。やはりネクタイの中からの色拾いを意識しての服選びです。

私の女性の興味軸は、「内面的センスが高い人」

私が主宰しているデザインカンパニー『Incontro(インコントロ)』の軒先に、『めだか荘』というのれんを出しました。「梶が谷・インコントロ」というだけではちょっと味気ないと思い、白洲次郎と正子が生涯を通して愛した家「武相荘」のような通名を倣って名前をつけました。『めだか荘』の由来は、飼っているメダカが50匹から250匹ぐらいに増えたことと、めだかの学校ならぬ様々な方々が来られる“服のめだかの学校”を開く意味も込めました。藤布に書いたのれんはご近所からは、小料理屋かヌーヴェルフレンチのように見えるようです(笑)。

そんな『めだか荘』から、今回と次回は夏らしくちょっと肩の力を抜いたお話を――まず今回は女性の話をしましょう。

自分は若い頃から女性を見た目だけで判断することはありませんでした。僕が興味を持つのはその人の内面性で、共通していることは「センス」が感じられること。センスとは服装や化粧だけに表れるものではなく、内なるセンスが一番大事で、「内面的センスが高い人」は本当に数少ない。たとえば、「いい女だなぁ」と思い浮かぶのは女優の宮本信子さん。彼女は常日頃からセンスを磨いていて、それがにじみ出てくる魅力がある。

もちろん動物的本能として、「自分のモノにしたい」とか「自分の近くに置きたい」と思うこともありますが、それはヴィンテージの服を見て、「高いけど惚れた。所有したい」という衝動と似ています。自分にとってその心動かされる感じはとても大事で、本能が働くのが面白い。

こういう年齢になってくると、女性に限らず男性に対しても、その人が持っている個性を“見つけて、育てて、形にしたい”と思うことがある。原石を磨いて、感度(センス)のいい人になっていくのを見て喜ぶ。良い素材を持っている人には大きくなってもらいたい。

私が愛した映画の中の女優たち

十代の頃から映画が“生き方・着方”の教科書でした。1950年代、60年代の映画の絶頂期に青春を過ごし、学芸大学にあったユニオン座に始まり、銀座・並木座、飯田橋・佳作座、そして神保町の岩波映画館などで、質の高い映画を数限りなく観たのです。

若い頃に観た映画の中の女優は私の心の奥底にしっかりと沈んでいて、美しさの基準、女性の基準になってしまうというある意味怖い存在ですが、女優の醸し出す空気やオーラに圧倒されたり、ちょっとした仕草に色気を感じたり。忘れられない女優がたくさんいます。

この連載の中で「私は映画監督になりたかった」と話したことがありますが、映画監督と女優の関係に嫉妬することもありました。監督は女優をキャスティングした段階から、精神的に女優を手に入れている。女優もそれを分かっていて暗黙の了解があり、ここは奥が深い。そうして作品の中の役になりきっている女優に惚れ惚れするのです。

好きな女優を挙げると話が尽きませんが、監督と女優という関係性では、イタリアの名監督フェデリコ・フェリーニと奥さまのジュリエッタ・マシーナ。監督の作品の『道』の知的障害を抱えた女性大道芸人の役など絶品でした。フェリーニはやんちゃで遊び人でしたが、プライベートでは彼をしっかり支えていて、そういうところも宮本信子さんに相通じるものがある。憎めない可愛らしさも共通点でしょう。

同じくイタリアの映画監督ロベルト・ロッセリーニの代表作『無防備都市』でローマの庶民役を演じたアンナ・ マニャーニも好きな女優の一人。アンナ・ マニャーニは素晴らしい女優なのでぜひ機会があればご覧ください。

さらに名前を挙げていくと、色気の権化であるソフィア・ローレンやクラウディア・カルディナーレ、排他的な魅力があるモニカ・ヴィッティ、気位の高い女の役がぴったりハマるアヌーク・エーメ、ロミー・シュナイダー、そして憧れの人の一人であるマレーネ・デートリッヒ……。

私が愛した映画の中の女優たちはイタリア女性が多いのですが、彼女たちは“マンマミーア”母性的な懐の深さがあります。イタリア男性はほぼマザコンというのも有名ですが、何かあったときに「お母さん!」となるのはラテン人独特のものでしょうか。

コットンスーツはよれてくると味が出る

さて、「立秋」ですから、秋の装いは難しくてもネクタイで秋の気配を。夏は明るい色のネクタイをしがちですが、緑のネクタイで秋冬のカラーを先取りしました。スーツは20年ぐらい前に作った「リヴェラーノ」のコットンスーツです。

今年は「AKAMINE Royal Line」のオーダーでコットンスーツが評判が良く、とても好評でした。生地は浜松の先染めの“特綿”といわれるコットンギャバジンを使用。コットンスーツははパリッと着るよりも、よれてくると味が出てきます。

次回、連載14回目は、8月23日頃の“処暑(しょしょ)”。夏の閑話休題として「40代、50代の男の生き方」を語ります。

Photo:Shimpei Suzuki
Writer:Makoto Kajii

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