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LIFESTYLE 「超名医に聞け!」

5人に1人のダンナはフォアグラ状態! 忘年会シーズンに知っておきたい肝臓のお話し

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——ご専門である肝臓ガンについて教えて下さい。やはり飲み過ぎが原因ですか。

高山:肝臓ガンといえば、飲酒が原因と思われますが、日本人でアルコールが原因で肝臓ガンになるのは100人中、2〜3人です。実際は90%の方がB型またはC型の肝炎ウィルスを保有していることに寄ります。C型肝炎ウィルスは放っておけば慢性肝炎から肝硬変、そして肝臓ガンに至る可能性もあります。ですが、インターフェロンなどの注射薬でウィルスを除去できるようになりました。まずはご自身がウィルスのキャリアかどうかのチェックを受けて下さい。今まで検査を受けたことがない方は、自治体にもよりますが、無料で肝炎ウイルス検査を受けられると思います。お近くの保健所などに連絡してみて下さい。

——まずは何事も検査ですか。ウィルスを保有していると自覚症状はあるのですか。

高山:B型肝炎ウィルスのキャリアは全国に150万人いるといわれ、大半がキャリアであることを認識していません。自覚症状もないため放置していると、性行為で他人に感染させている可能性もあります。日本では少ないですが、外国でピアスを開けたり、タトゥーを掘ると感染する事例もあります。あまりないと思いますが、覚せい剤で注射器を回したりして感染することもあります。

——肝臓ガンになってしまった際、高山先生にお願いしたいのですが。

高山:通常通り、外来で来ていただければ診させていただきます。お近くの消化器内科の先生から紹介状をもらったほうがスムースではありますが。

私が外科医になりたての30年程前は肝臓ガンと診断されたら余命半年と言われていました。現在、手術による治療では5年生存率は平均で53%、当院では61%です。私たちは丁寧に止血をしながら手術を進めるので、出血量を平均370ccに抑え、輸血の必要もほぼありません。丁寧に止血しながら手術をするので時間は通常よりも1.5倍ほどかかりますが、出血を抑えますから、手術合併症も低率です。

——群馬大学病院で2010年から2014年の間に腹腔鏡手術を使用した肝臓手術で患者8名が亡くなりました。千葉県がんセンターでも2008年から2010年の間に腹腔鏡による膵臓や肝臓の手術で11名の死亡事故が起きました。腹腔鏡手術は、「傷が小さくて術後の痛みも少なく身体に負担がかかならい」と言われた技法です。事故を起こした原因は?

高山:無理をして腹腔鏡で行う手術ではなかった。通常の開腹手術で行えば恐らく事故は防げたでしょう。

国内の外科医の間で胃腸の手術が腹腔鏡でうまくいき、4〜5年前から肝臓や膵臓でも、という空気が生まれています。しかし、私は同調できません。

事故報告書を見ましたが、拡大視があることで全体が見えずに肝動脈や門脈といった大きな血管を誤って切っている症例がある。拡大視があるから緻密な手技が可能というけれど、全体が見えていない。開腹すれば直接、手で得られる情報が、内視鏡ではわからずに間違って判断してしまった。

肝臓の手術には特に触覚が大切なのです。胃腸はあまり出血しないですし、『面の手術』です。ですが、肝臓は内部に多数の血管が走り、構造も複雑です。『立体の手術』で、出血しやすい。開腹し、全体を俯瞰し、肝臓を手に載せながら切っていくと危険な箇所が直感で分かるんです。出血しても両手を使えるのですぐに処置できます。易しい問題をわざわざ難しく解いている気がしてなりません。ガンを根治的に除去し、元気に長生きしてもらうことが、最も大切なのです。そのことを忘れてはいけない。

——柔らかい話題で。白衣は丈が短めですね。

高山:下に手術着を着ますから、脱ぎやすいようにジャケットタイプにしています。胸と二の腕の箇所にオリジナルのロゴを入れています。『SURGERY(外科)』と上段に入れて、肝臓、胃、小腸、大腸などの消化器をイメージしたマークを合わせています。

——ファッションに対してこだわりはありますか。

高山:一点だけ豪華なものを持ちますが、多くは量販店のものです。今日の時計はフランクミュラーですが、高いのはこれだけ。靴もジョンロブですが、高いのはこれだけ。ジョンロブは素足で歩いているかのようで履き心地が他とはまったく異なる。サングラスはTom Fordですが、普段のメガネはjinsですから(苦笑)。

肝臓ガンの名医のアドバイスを、ぜひみなさんの健康のために役立ててください。次回の「超名医に訊け」もお楽しみに!

 

Photo:Sono Aida
Text:Daisuke Iwasaki
Edit:栗P

たかやま・ただとし
1955年、東京都生まれ。80年日本大学卒業。同大学院外科学修了後、国立がんセンター中央病院外科レジテント・医員・医長を経て、97年 東京大学肝胆膵移植外科助教授。2001年から現職。2014年から日大医学部長を務める。1994年 世界初の高山術式を開発。肝臓ガン手術数は7年連続で国内1位。日本肝臓学会織田賞、東京都医師会賞などを受賞。手術は週20件ほどで、年間800件ほど。その傍ら肝胆膵外科研究の英文論文506編も執筆している。



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