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FASHION ー 服飾歳時記

赤峰幸生の「服飾歳時記」

赤峰先生の「小暑」の着こなし 古布の大家が語るニッポン人と大麻文化とは?

2017.7.10
2017.7.10

吉田真一郎氏に会いに「小地谷縮(ちぢみ)」の艶姿

おんぷういたる 温風至る       初候
はすはじめてひらく 蓮始開く     中候
たかすなわちがくしゅうす 鷹乃学習す 末候

すっかり夏めいて汗ばむほどの陽気となりました。今年は旧暦の「閏(うるう)五月」に当たるので、梅雨明けが遅くなり、夏の到来が遅くなるので、8月9月もかなり酷暑が予想されます。この季節に欠かせない行事(イベント)といえば「土用の丑の日」。うなぎを食べることは一般的ですが、水を浴びたり、海水浴に行くことも健康のためとされています。

夏も最盛に向かうと、暑さと汗と体力の勝負で、暑い暑いといっても始まりませんが、「なにか涼しい工夫ができないか」と思い、オフィスのテラスに緑のカーテンを作ることにしました。ゴーヤを中心にきゅうりや茄子も植わっています。5月はじめに植えたゴーヤは西日を遮る高さに育ってくれ、暑さを抑えてくれています。

 

土用といえば盛夏のイメージですが、実は一年に4回もあります。立春、立夏、立秋、立冬の前の18日間で、立夏の前の土用の丑の日は「う」の字の鰻、瓜(うり)、牛の肉などを食べて元気をつける風習。鰻好きの私にとっては、江戸前鰻の店の食べ歩きを昔は随分やりました。『きくかわ』『和田平』『前川』『神田川』『尾花』など、よく行ったものです。

子どもの頃、江戸小話「うなぎのかぎ賃」を聞いているだけで、なぜかうなぎの匂いが蘇り、舌がじんわりとうなぎモードになるのは私だけだったでしょうか?

 

「好きこそものの上手なれ」を体現している吉田真一郎の凄さ

さて、今回の「小暑」と次回「大暑」では、近世麻布研究所所長・吉田真一郎さんの事務所にお邪魔して、吉田さんの研究についてご紹介します。

皆さんは「大麻布(たいまふ)」という麻の布はご存知でしょうか。大麻布は大麻草の茎の部分の繊維を用いて糸を作り、それを編んで布にしたものです。大麻というとマリファナを想像しがちですが、あれは葉を使用するもので、茎は無害です。

吉田真一郎さんは京都外国語大学からドイツに行かれて、自分がニッポン人であることに気づかされ、帰国して大麻布をはじめとした日本の自然布の研究に没頭し、いつしか麻布研究の第一人者になりました。

吉田さんと話していると時間を忘れてしまうほど楽しいのですが、まさに「好きこそものの上手なれ」をそのまま地で行っている人です。麻布研究のためなら、美術館級の古布を集めて、その貴重な布を顕微鏡検査するために繊維をほどくこともいとわず、そうした大胆な手法から昔の人々の生活と密着した「布=衣服」を紐解いていきました。学問としても面白いと思いますが、なによりひとつのことを深掘りし、それに生涯を賭けるという、男の仕事の向き合い方としては最高の生き方をしているのが吉田さんです。

私が関わっている洋服と、吉田さんが研究している和服の違いはありますが、吉田さんの仕事を“文化的に通訳していく”のが私の役目。8月には英国の有名な博物館のキュレーターが吉田さんの古布を見に来るそうですが、FORZA STYLEの読者の方には一足早くご紹介しましょう。

 

日本の文化には、大麻と苧麻(ちょま)の使い分けが確実にあった

赤峰 吉田さんの事務所には、博物館や民芸館などの専門家たちが、吉田さんが所有している古布をわざわざ見に来るんですよ。本や資料もまさに図書館以上に揃っている。

吉田 昔の日本の服の素材には、絹、木綿、麻がありますが、福井県の鳥浜貝塚(とりはまかいづか)という縄文時代草創期から前期(今から約12,000~5,000年前)にかけての集落遺跡から、大麻の断片が発見されています。約1万年前から植物繊維を取り出して水にさらして糸を撚る技術があったわけです。

赤峰 麻は大きく分けると、大麻と苧麻(ちょま)、それとヨーロッパの亜麻があって、私たちが今“リネン”といっているのは明治以降に日本に入ってきたアイリッシュリネンなどヨーロッパの麻で、日本の文化にはほぼ関係がない。

吉田 今日、赤峰さんは新潟県の小千谷市周辺を生産地とする「小地谷縮(おぢやちぢみ)」の着物を着ていますが、これは苧麻(ちょま)。一般的に金持ちが着る上等なものが苧麻(ちょま)で、農民たちが野良着として着ているのが大麻というイメージに分けられます。

赤峰 野良着=ワークウェアですね。この着物は10年ほど前に買ったもので、気分的にはシアサッカーを着ている感じ。このストライプをシャツにしたら面白いなと。

吉田 越後麻布に改良を加えて完成したのが小地谷縮=苧麻(ちょま)ですが、顕微鏡で繊維検査をすると、高級とされた布でも大麻でできているものがある。ここにも女性の着物をほどいて作った袈裟(けさ)がありますが、これは大麻なんです。

赤峰 吉田さんが凄いのは、美術館や博物館に並んでも遜色ない希少な古布をわざわざほどいて、経(たて)糸・緯(よこ)糸を取って、繊維細胞をこと細かに調べること。

吉田 美術館のガラス越しに見る古布は破壊検査ができないんですよ。近世麻布研究所は静岡県で顕微鏡検査をしていて、これまでに約1000点の繊維を調べました。

下/『別冊太陽 日本の自然布』(平凡社)、左/『奈良さらし』(月ヶ瀬村教育委員会)
約1万年前から日本人の生活に根ざしていた大麻の誤解を解く

吉田 日本での大麻栽培の大きな転機は第二次世界大戦で、戦前まで大麻は麻布の元になるなど庶民の日常生活の中にあって、ごく普通に栽培されていました。敗戦後、マッカーサーが着任してGHQの占領下になると突然「大麻栽培禁止令」が出て免許制にしたのです。

赤峰 よく誤解する人がいますが、大麻の繊維には麻薬性はないんですよ。あくまで繊維を取るため、生活のために栽培していた。

吉田 同じように紫色の花が咲く「藤(ふじ)」から藤布が出来、雑草の「葛(くず)」から葛布が出来た。特に葛の根っこは葛根湯や葛湯など、昔から現代まで広く利用されています。大麻布も藤布も葛布も“粗い麻”と一括りにしてしまいますが、繊維検査をすると違いが見えるんです。

以下、7月21日(金)公開の「大暑」に続く

 

新鮮なイタリアン・レジメンタルが今また気分

1963年に公開されたイタリア映画『太陽の下の18歳(Diciottenni al sole)』は、当時17歳だったカトリーヌ・スパークが主演のアイドル青春映画で、ナポリ湾のイスキア島に遊びに来た若者たちは皆短めのショーツのスタイリングで、それが印象的でした。

昔「グレンオーヴァー」がイタリアブランド「エルマノダエリ(ERMANNO DAELLI)」と取引していた頃のストライプ、イタリアン・レジメンタル的なショーツをコーディネート。

トップスは、フィオレンティーナが着ている15年ぐらい前のTシャツで、フィレンツェを代表する“百合の花”がポイントです。「AKAMINE Royal Line」のサマーコーデュロイの白ジャケットを羽織ってすっきりと。


次回、連載12回目は、7月23日頃の“大暑(たいしょ)”。吉田真一郎さんとの対談後編をお楽しみに!


Photo:Shimpei Suzuki
Writer:Makoto Kajii
 

吉田真一郎(よしだ しんいちろう)
1948年京都府生まれ。30年以上古布の研究を続け、現在は日本の自然布、主に江戸時代の大麻布、苧麻布の繊維と糸の研究を進めている。奈良県立民族博物館、サンフランシスコ工芸博物館、国立民族博物館、十日町市博物館、能登川博物館、愛荘町立歴史文化博物館などで企画展示および研究発表を行う。

ジャパン・ジェントルマンズ・ラウンジ
https://www.facebook.com/JapanGentlemansLounge

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