FASHION ― 林 信朗の「お洒落偉人に学べ!」

服飾評論家 林信朗の「お洒落偉人に学べ!」

【一杯やりながら籠絡!?】ウィンストン・チャーチルの飲み交渉術

2017.6.27 2017.6.27
2017.6.27

酒を嗜むディナーテーブルこそが、チャーチル政治の裏舞台!

"世界には想像の遥か上を行く、お洒落な偉人たちがいた"。彼らのスタイルや生き方を学ぶことこそ、スマフォー(スマートな40代)への近道と考えた編集部員たちは『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任した大先輩である服飾評論家 林 信朗氏を訪ね、教えを乞うことに。新連載三回目は、尊敬するリーダーの首位に選ばれ、戦火においてもお洒落、贅沢を欠かさなかったウィンストン・チャーチルについてたずねます。

 

ヤナカ:先輩! お疲れさまです!

:おお、一段落ついたかね?

ヤナカ:いや、それがねえ、相変わらずビンボーヒマナシでもう……。

:なに言ってるんだい。けっこういろいろなファッション ショッピングをして、愉しそうじゃないか。「気絶」してるんじゃないのか? FORZAに出てるぞ(笑)。

ヤナカ:いやいや、あれは、仕事でありますから(笑)。

:まあ、そうだね。愉しみを仕事のなかにみつけられるというのは、ぼくらの仕事の、数少ない救いだ。

ヤナカ:ご理解いただき、ありがとうございます(笑)。いつもお菓子ばかりではなんなので、たまには、こういう路線はいかがでしょう?

:うん、ジョニー ウオーカーか。いいね。チャーチルも好んだブレンデッドスコッチウイスキーでもある。そうか、今日は、チャーチルのお酒の話をしようということだったものね。

:ヤナカ君、チャーチルは、このジョニー・ウオーカー赤ラベルをどういう飲み方をしていたと思う?

ヤナカ:英国人ですから、ストレートでキマリでしょう!

:それが違うんだな。よしよし、それじゃあ、ジョニ赤チャーチルスタイルをぼくが作ろう。はい、これをどうぞ。

ヤナカ:いただきます! あれ、これがスコッチですか? 炭酸水を飲んでいるみたいなんですが。氷も入ってないし。

: 氷? あ、そりゃ入ってない。チャーチルの時代の英国はアイスレスです。氷を入れて酒を飲むようになったのは第二次大戦後、アメリカの影響ですな。でね、このスコッチ&ソーダが、チャーチルの家族が呼ぶところの「パパカクテル」だ。ジョニ赤などのスコッチをほんの少し、グラスに注ぎ、このように炭酸水をたっぷり入れる。こいつや水割りを、毎日、朝9時半から飲み始め(笑)、食事と食事の間、つまり口述筆記などをする仕事の時間は常にこれで「喉をしめらす」というかんじだったらしい。

ヤナカ:そうか。まわりのひとが見れば、たしかにこんな薄いスコッチ&ソーダでも酒には変わりはないから、「チャーチルは朝から晩まで酒を飲みっぱなし」となりますね。

:1940年、英国首相に就任したとき、大西洋の向こう側ではルーズベルト大統領が閣議でこう言ったのだよ。「たとえ一日の半分は酔っぱらっていたとしても、英国はこの時期、最良の首相を得た」

©Gettyimages

:一昨年か、英国の新聞テレグラフのweb版で、おもしろ記事があってね。なんと、ウォーレン・ドクターというジャーナリストがこのチャーチル流の酒の飲み方を一日実践してみたんだよ。

ヤナカ:ああ、それは賢い切り口かもしれないですね。

:ヤナカ君の言うように、たしかにチャーチル仕様のスコッチ&ソーダは軽いものだが、それでも何杯も飲み続ければ体がだるくなってくるし、ゲップもでて辛いとドクター氏は言ってるねえ(笑)。そりゃそうだろう。しかも、スコッチ&ソーダだけでチャーチルの一日は済まないんですから。

ヤナカ:そうか、食中酒だってありますものね。

©Gettyimages

:そう。まず食前酒としてポル・ロジェのシャンパーニュが欠かせない。こいつを昼食のときも、夕飯のときもグビグビと。

ヤナカ:うっへ~、昼も夜もですか? それはウラヤマしくもありますが。

:ランチのときなど、シャンパーニュで通すときもあるが、クラレットの愛好者であったチャーチルは……

ヤナカ:クラレット?

©Gettyimages

:ラクレットじゃないよ。英語でボルドーの赤を指す言葉だね。

ヤナカ:あ、あ~。

:それから料理に合わせたワインをたっぷりと楽しむ。昼も夜も(笑)。

ヤナカ:こりゃ大変だ。2食フルドリンキングはけっこう辛そう。よくその後、仕事ができますよね。

:え? ヤナカ君、まだ食事は終わってないよ。チャーチルからシガーとハインプルニエのコニャックを愉しむ食後の時間を奪おうというのかね、君は(笑)。

ヤナカ:ぼくらフランスやイタリアに取材にいくと、よく食事会に招待されますが、まさにあの、カクテルタイムから始まって、シガーに至る3時間、4時間の食事を毎日やっているわけですね!

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:もちろんチャーチルは貴族だから、贅沢な暮らしが染みついているし、生活の愉しみをギブアップする気なぞさらさらなかった男だ。しかしね、食事やカクテルの時間は、おそらく当時の英国の政治家でもっとも弁が立ち、また交渉そのものを好んだチャーチルにとっては、最高のアドバンテージのある時間だったんだよ。一杯やりながら得意のジョークや当意即妙の受け答えで政敵や交渉相手をたらしこむディナーテーブルこそ、チャーチル政治の裏舞台であったといえるね。

ヤナカ:いまでも外国との交渉では晩餐会など、もてなしの時間での会話や やりとりが重要らしいですものね。

:ドイツとの戦争中、アメリカを訪れ、ホワイトハウスでルーズベルトと食事をしたときなど、チャーチルの酒ののみっぷりにルーズベルトはへばってしまったそうだ(笑)。まあ、もともと頑強じゃなかったからね。

©Gettyimages

:ヤナカ君、どう? チャーチル流スコッチ&ソーダで少しいい気分になってきた?

ヤナカ:はい、この調子で締切にうるさいホッシー編集長を煙にまいてきますか(笑)。

:あ、ひとついい話を思いだした。チャーチルの愛飲したシャンパーニュがポル・ロジェだがね、1965年にチャーチルが死んだとき、英国に輸出するすべてのポル・ロジェ シャンパーニュのボトルに黒い喪章を巻いたそうだよ。

ヤナカ:グレイトドリンカー、チャーチルに実にふさわしいお話ですね!

Text:Shinro Hayashi
Portrait:Kazuyuki Sugiyama
Edit:Ryutaro Yanaka

林 信朗
服飾評論家
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任した後、フリーの服飾評論家に。メンズファッションへの造詣の深さはファッション業界随一。ダンディを地で行く大先輩。

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