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FASHION 赤峰幸生の服飾歳時記

赤峰先生の小満の着こなし 「キスの日」には 赤峰流レタードカーディガンを

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更衣の季節を迎えて、トロピカルウールの素材感を求める

万物が次第に成長して満ち始める時期、命があふれんばかりに躍動するのは人も同じで、5月23日は語呂合わせで「五(こい)二(ぶ)三(み)=恋文」ラブレターの日とも言われ、日本で初めてキスシーンが登場した映画『はたちの青春』の封切りと重ねて「キスの日」とも言われています。

かいこおきてくわをはむ 蚕起食桑 初候
べにばなさかう 紅花栄中     次候
むぎのときいたる 麦秋至     末候

桑の新芽が伸び始める時期に合わせて蚕(かいこ)がふ化し、一生懸命に葉を食む頃、戦前はどこでもたくさんの桑畑が見られ、養蚕が盛んだったことから、桑の葉を摘む「葉採り月」という別名も陰暦四月にはあります。

さて、この候「小満」では、古くからの風習「更衣(ころもがえ)」が出てきます。気温、湿度に合わせて衣を変えていく時、私はその日の気温に合わせて少し厚手のもの/薄いものと自由に選びたいので、クローゼットの入れ替えはしませんが、ウールのスーツはトロピカルに手を伸ばし、少し“シャリ”として、“サラッ”とした風合いが新鮮な季節です。

男は、自分がどこにいるのか、世界の中での位置関係が気になる生き物

前回の【その七・立夏】で、当時住んでいた目黒・碑文谷の家で、5歳上の兄と背比べをして柱に傷をつけていたことを記しましたが、私たちの父は地理学者でした。今時期は麻のスーツを着て、パナマ帽をかぶって出掛け、帰宅すると衣桁(いこう)に服を掛けて、兵児帯の着物に着替え、書斎に向かっていました。

父は九州男児で、剣道六段の厳格な男でした。常に食事を正しく食べる、きちんとした生活をするという“背筋を伸ばす”暮らしをしていて、父のその変わらぬ姿勢は、私たちに「きちんとしなさい」「きちんと着なさい」という教えになりました。

父は地質学者でもあり、当時の農林省に勤めていたこともあり、フィールドワークのために日本各地に出掛けていました。私も父の血を継いでか、地図を見るのが子どもの頃から大好きでした。『ワールドアトラス』を開いて世界地図を見ると、そこから分かる気流の流れ、人の流れ、政治の流れや、赤道を中心にした綿花、緯度の高いところで採れる羊毛など動植物の分布なども理解でき、その学問的なことに対する興味がやがて、「なぜ人は服を着るのか」という“洋服学”に繋がっていったのだと思います。

地域特性や比較文化論などをベースにした「洋服人類学」とでもいうべきことが、私の興味の根源にあって、さらに男は、今、自分がどこにいるのか、世界の中での位置関係が気になる生き物であるので、世界地図はいつ開いても、私を新しい興味へと導いてくれます。

私の母の兄は、社会学者で、『論文の書き方』(岩波新書)を書いた清水幾太郎なのですが、叔父の話はまた別の項で。

小満の頃のおしゃれは、赤峰流レタードカーディガンの着こなしを

5月後半には、ヘビーウエイトのコットンで作ったレタードカーディガンはいかがでしょう。インナーは、アメリカの軍モノのモックネックで、パンツは「AKAMINE Blue Line」のオリジナル生地のシルクコットン。スニーカーはイタリア軍のオリジナルモデルです。

レタードカーディガンは、ファンが多かったブランド「Y.Akamine(ワイ.アカミネ)」のものです。ワイ.アカミネのアイテムはすべてイタリア生産で、アイテム毎に得意な産地で作っていました。当時、日本では、信濃屋、ビームスF、伊勢丹、ユナイテッドアローズ、シップスなどで展開していました。

このレタードカーディガンは、ドライなコットンを探して、畦と逆の方を表にしている裏使いが特徴で、当時7~8万円したものです。

ワイ.アカミネは、まずデザインのスケッチを描いて、サンプルを作って修正し、ピッティウオモの時期に合わせてコレクションを発表。フィレンツェで定宿にしていたホテルアストリアで展示会を開催していました。ピッティウオモはリサーチの場であると同時に、私にとっては商売の場でもありました。6月もまたイタリアに向かいます。

次回、連載9回目は、6月6日頃の“芒種(ぼうしゅ)”。西日本ではそろそろ梅雨に入る頃。今年で13回目を迎えるクールビズも6月からが本番です。

Photo:Shimpei Suzuki
Writer:Makoto Kajii

ジャパン・ジェントルマンズ・ラウンジ
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