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FASHION 赤峰幸生の服飾歳時記

赤峰幸生が語る「二十四節気(着)」【その六・穀雨】

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4月20日頃の「穀雨」までが春。春の天気も安定して、日差しも強く

百穀を潤す雨、米、麦、粟(あわ)、稗(ひえ)、黍(きび)、豆などの穀物と同時に、様々な植物を生み育んでいく季節、穀雨(こくう)。「春眠暁を覚えず」とは、「夜明けが早く、いつの間にか朝が訪れるなんて、つくづく春だなぁ」という意味だそう。

葭始めて生ず(あしはじめてしょうず) 初候
霜止んで苗出ず(しもやんでなえいえず) 次候
牡丹華さく(ぼたんはなさく) 末候

子どもの頃は、お玉杓子(おたまじゃくし)、別名、蛙子(かえるのこ)が大好きで、何百匹と採っては自宅の池で楽しみました。前足が出て、尾が日増しに短くなって、ある日起きると見事に一匹もいない。夏には庭のあちこちの草むらに身を潜め、冬になると寝床代わりに枯葉をかけて冬眠させてやりました。

生まれが目黒の碑文谷なので、碑文谷池で毎年採ったり、今では多摩川の浅瀬でこの季節は楽しみます。

自然界が一年中で最も活気に満ちた季節、川をさかのぼる鮎の和菓子「若鮎」は、地域によって中身が違うようですが、関西の求肥(ぎゅうひ)も名古屋の味噌入りも好物です。

 

4月の着こなしは、バルスターの「バルスタリーノ」を主役に

今日の着こなしは、ミラノで創業したレインコートメーカー「VALSTAR(バルスター)」の世界的に“バルスターブルゾン”として親しまれているスポーツジャケットライン「VALSTARRINO(バルスタリーノ)」をメインに。上質なスウェード素材の1枚仕立てで、基本的なデザインは1935年当時と変わっていないロングセラー。10年ぐらい前に購入したものです。

バルスタリーノに合わせるのは、しっかりした打ち込みの生地を使った「AKAMINE Royal Line(アカミネロイヤルライン)」のベルトレスパンツ。それと、1940年ぐらいのフランスのヴィンテージニットです。アメリカモノだとVの部分にもラインが入ってスクールっぽくなるのですが、これは大人の感じで上手い。大好きなミディアムグレーを重ねています。

アトリエ「Incontro」では、『THE PERFECT SUMMER GENTLEMAN』として、50年代のフランスの雑誌『ADAM』から昔の夏スタイルのイラストと、「シャルベ」のネクタイで、サマージェントルマンスタイルを表現しています。

よく見るとアメリカのアイビーとはまた違って、ベルトレスパンツや開襟シャツ、フレスコのネクタイ、コンビ靴が多い。自分でエディットしたものですが、時代の気分が伝わります。

 

「グレンオーヴァー」の新しい物語、再起動のつづき

前回の「清明」で、“新生グレンオーヴァー”のお話をしましたが、今春、ファーストコレクションを立ち上げ、前回紹介したロングトレンチコートと、今回紹介するシューティングジャケットを販売しています。

僕の服作りの基本は「オン・ザ・ボーダー」、ドレスとカジュアルを分けず、国境に乗っているような包丁さばきで、ドレスなマインドだけどカジュアルにも着られるし、カジュアルだけどドレスな気分も味わえるもの。例えれば、レースアップの靴よりローファーやヴァンプが似合う服です。

グレンオーヴァーは82年にスタートし、85年にNYに上陸しましたが、アイビーのクラシックではなく、ブリティッシュのテイストや、当時台頭してきたアルマーニのソフトな要素をブレンドして作り上げました。

グレンオーヴァー以前のメンズは、アメリカ、イギリス、イタリアなどに囚(とら)われた服作りでしたが、自分はそういう国境を超越して服を作った。日本人が作ったクラシックな服がNYで売られたのは初めてでした。

当時、国内では伊勢丹メンズの名部長だった中村さんに気に入られて、伊勢丹別注のシャツが1品番シーズンで3000枚売れるという爆発的なヒットを記録したこともありました。当時、中村部長の横で一生懸命メモをとっていたのが、大西洋さん(三越伊勢丹HD前社長)でした。

グレンオーヴァーはこの春夏にリスタートしたばかりですが、当時を知っている人にはもちろん、若い人にもある種のロマンを感じてもらって着てほしい。そして、クラシックの継承者である僕を引き継いでいってほしい。それほどグレンオーヴァーは“リアル・クラシック”です。

まず日本で販売しますが、次にヨーロッパで認知を上げていきたい。『モノクル(MONOCLE)』の編集長タイラー・ブリュレから「ぜひサンプルを見たい」と連絡がありました。秋冬では、ウールのコート「ブリティッシュホスピタルコート」がとても評判が良いので期待していてください。

 

「穀雨」の頃は、2重織コットンのシューティングジャケットを

この頃の着こなしは、グレンオーヴァーのシューティングジャケットに、イタリアの「HYDROGEN(ハイドロゲン)のニット、「LEVI’S(リーバイス)」の白のコーデュロイジーンズというカジュアルスタイルで。

自分が着ているシューティングジャケットは、インド原産のマメ科の喬木、カテキュー(ペグ阿仙薬)をボタニカルダイで染めたもの。過去の商品はほとんどストックしているので、作りや縫製などもまったく手は抜いていません。


次回、連載7回目は、5月6日頃の“立夏”。ゴールデンウィークの終盤になると、夏の気配がしてきます。

Photo:Shimpei Suzuki
Writer:Makoto Kajii

ジャパン・ジェントルマンズ・ラウンジ
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