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FASHION 赤峰幸生の服飾歳時記

赤峰幸生が語る「二十四節気(着)」【その伍・清明】

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新年度のスタートで、人も季節も勢いづく頃

すべてのものが清らかで生き生きするこの季節。若葉が萌え、花が咲き、鳥が歌い舞う、命が輝く新暦では4月4日から8日のころ。清明(せいめい)とは、清浄明潔の略です。

玄鳥(つばめ)きたる 玄鳥至 初候 
鴻雁(こうがん)帰る 鴻雁北 次候 
虹はじめてあらわる 虹始見 末候 

それぞれの時候はすべて空に関係しています。清明は、私のイメージだと空の色、様々なブルーのグラデーションと、燕(つばめ)の黒と白と赤、小手毬(こでまり)と雪柳(ゆきやなぎ)の白、そして春雨、春はお天気がぐずつくことが多い季節。降ったりやんだりする雨を春時雨(はるしぐれ)と呼び、薄手のレインコートが必要な頃です。

「グレンオーヴァー」の新しい物語、再起動

1980年代前半から90年代中盤にかけて私が手塩にかけて生み育てたブランド「GLENOVER(グレンオーヴァー)」が今春、リブライディングしてスタート。スプリングラインが、東京・丸の内の『ソブリンハウス』と横浜・馬車道の『信濃屋』で展開しています。雨が多い季節なので、グレンオーヴァーのトレンチコートを着てみました。

グレンオーヴァーの話を少し。グレンオーヴァーは神田のシャツメーカーの社長から「ブランドをやりたい」という相談を受けて1982年にスタート。いまはなき麻布ハイツアパートメントに事務所を構え、シャツから始めました。

グレンオーヴァーとは「渓谷飛越」。谷底からでもすべてを超えていけと命名

グレンオーヴァーの「グレン」は、スコットランドで最も美しいといわれる高知の渓谷グレンコー(Glen Coe)からで、その渓谷を「オーヴァー=超える」という意味を込めました。ブランドの書体は、スコットランドのモルトウイスキーのロゴに倣い、現地の墓標にも使われるものです。ロゴの上にあるのは「あざみの実」で、この実はツイードやニットを起毛させるときにブラシ代わりに使われたとされるものです。

82年にスタートしてから、国内のメンズ専門店や百貨店で扱ってもらいましたが、NYに行ってブルックリン橋を渡ったときに、思わず身震いをしました。「よし、絶対マンハッタン島で俺が作ったものを売る」と腹に決めたのです。

それからサンプルを持って、安ホテルに泊まって、何度もアポイントを入れて会ってくれたのが、『バーニーズ ニューヨーク』の創業者直系の当時の社長ジーン・プレスマン。メンズチーフバイヤーのマイケル・シュライヤーと共に売場で商品を見せて、着てもらって、「これはすごい!」と気に入ってくれたのが85年のこと。それから今でいうコラボが始まりました。

アトリエ「Incontro」のシーズンディスプレイ

アメリカ版『GQ』にグレンオーヴァーの広告が掲載された!

バーニーズに認めてもらったのがうれしくて、一人でバーに入って、カクテルを2つ頼んで、それを両手に持って乾杯。「勝ち点1を取ったぞ!」という感じでしたね。

それとなによりうれしかったのは、その翌年にアメリカ版『GQ』に、バーニーズが、グレンオーヴァーとバーニーズのダブルチョップの見開き広告を出してくれたこと。あれには感激しました。

NYのマディソン街から東45丁目に少し入った所に『ポール・スチュアート』があってふらっと入ったら当時のジェフリー・グロッド社長が、自分が着ていたフーデットパーカをすごく気に入ってくれてオーダーをもらったり、ボストンの専門店『ルイス・オブ・ボストン』や、ワシントンDCの専門店『ブリッジズ』などでも扱ってもらい、アメリカ東海岸での商売がスタートしました。

グレンオーヴァーの話は、次の節気の「穀雨」でも続けましょう。

「清明」の頃の着こなしには、ロングトレンチコートがぴったり

清明の頃をイメージした着こなしは、“新生グレンオーヴァー”の蓮(ハス)で染め上げたロングトレンチコートを纏います。グレンオーヴァーは当時から変色しにくい草木染の技術「ボタニカルダイ」を使っていました。

上で着ているのはブリティッシュカーキの元の色で、実の堅い「ミロバラン(訶梨勒)」を染料の原料にしていますが、実の堅さが“身を守る”と、戦場で信じられていました。

下でコーディネートに使っているのは同じデザインの白(ロータス)で、季節柄、小手毬や雪柳をイメージしたもの。このトレンチコートはこのあとの「穀雨」にもぴったりです。

スーツはモヘア高混率の服地「ドーメルトニック」のダブルブレスト、「シャルベ」のシャツに、燕をイメージした白と赤と黒のシャルベのタイのコーディネートです。

「清明」の頃に食べたい好物

前回の「春分」ではお彼岸に欠かすことができない、春のぼたもち(牡丹)、秋はおはぎ(萩)団子をいただきました。甘党の私は、桜餅や三笠(関東ではどら焼き)
「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」
阿倍仲麻呂の名歌、満月を思わせる三笠山も大好物です。

次回、連載6回目は、4月20日頃の“穀雨(こくう)”。春の最後の節気にも、グレンオーヴァーをご紹介します。

Photo:Shimpei Suzuki
Writer:Makoto Kajii

ジャパン・ジェントルマンズ・ラウンジ
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