FASHION ― 林 信朗の「お洒落偉人に学べ!」

服飾評論家 林信朗の「お洒落偉人に学べ!」

英国メンズファッションのアイコン ウィンザー公誕生編

2017.2.22 2017.2.22
2017.2.22

常に英国のメンズファッションのアイコンであり続けたウィンザー公

"世界には想像の遥か上を行く、お洒落な偉人たちがいた"。彼らのスタイルや生き方を学ぶことこそ、スマフォー(スマートな40代)への近道と考えた編集部員たちは『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任した大先輩である服飾評論家 林 信朗氏を訪ね、教えを乞うことに。新連載二回目は、イタリア人でも憧れる英国ファッションのアイコン、ウインザー公についてたずねます。

 

ヤナカ:先輩、いつも突然でスイマセン! ホッシー編集長ったら出張先のイタリアで突如思いついたらしくてね、ウインザー公のことをリサーチするようにってLINEがきたもんで……。イタリアのメンズウエアといってもその原点はイギリスにありですよね。そして現在の英国ファッション劇的に変えたのがウインザー公。あ、自分ばかりしゃべってスイマセン。はい、まず、これですね、ほら、先輩が以前お勤めになっていた神谷町にある……。

林:おお、岡埜栄泉じゃないか!

ヤナカ:お好きだと某所で聞き及びまして。

林:しかも岡埜栄泉一門のウリの豆大福ではなく、どら焼きたあ~、ヤナカくんもやるもんだねえ。ここのおどらは日本一ですよ。餡がねえ、豆々しくってね、風味が最高。しかも、しっかり甘い。店のひとたちも妙に生真面目で、女のひとは三角巾かなんかかぶっちゃってさ。あの店んなかだけは昭和だったでしょう。よっしゃ、ウインザー公だろうがウインザーチェアだろうが洞爺のウンザーリゾートだろうがなんでもこいや。

ヤナカ:先輩、かなりわかりやすい性格ですねえ。

林:ぼくはね、ウインザー公にはちょいとうるさいのです。

ヤナカ:はい、もうそれは。だいたいなんについてでもうるさいじゃないですか(笑)。

メンズクラブ ドルソ NO.14 「永久保存版 ウィンザースタイル」2002年夏刊行

林:かつて”DORSO”というメンズファッション誌で、ほぼ一冊をウインザー公の特集に充てたことがある。表紙の写真はもちろん、ウインザー公とシンプソン夫人の紙人形を付録にし(笑)、公の生涯は漫画に仕立てた。おまけに公が著した貴重な単行本を読者プレゼントにしたんだ。

ヤナカ:それは、英国ファッション好きはたまりませんね!

林:いや、特別売れたという記憶はないんだな、それが(笑)。

ヤナカ:あらま。

林:2002年だったと思うが、その頃はまだウインザー公に関する情報も少なく、日本のメンズファッションの関係者でも「ウインザーチェック(生地)やウインザーノット(ネクタイの結び方)の人でしょ?」ぐらいの認識しかなかった。プロでもその程度なんだから一般読者の関心が高いわけがない。しかしね、ピッティウオモなどで取材をすると、クラシコイタリア協会の連中なんか口をそろえてウインザー公のスタイルを絶賛してたんだ。だが、ちょっと、日本の読者には唐突だったかな(笑)。

ヤナカ:人物は古いが、タイミングは早すぎた。

林:ははは、まあ、そういうカンジです。ところでヤナカ君のウインザー公観は? どういうひとだと思う?

凛々しい佇まいのウィンザー公
©gettyimages

ヤナカ:やっぱり英国メンズファッションの帝王ですよね。黒一辺倒で保守的な英国王室の服装ルールに抗い、英国の男性ファッションそのものに大きな影響を与えたひと。さきほど先輩がおっしゃったウインザーチェックにウインザーノット、そうそう、ミッドナイトブルーのディナージャケット(タキシード)やコンビの靴もウインザー公の専売特許のようなファッションアイテムです。

シンプソン夫人と結婚
©gettyimages

林:そうだね。簡単に言うとそういうことになるね。皇太子として世界中を旅していた時代、わずかな期間だったが国王を務めた時代、そしてシンプソン夫人と結婚し、王位を捨て、フランスに住んでいた時代を通し、ウインザー公は常に英国のメンズファッションのアイコンであり続けた。それは間違いない事実。

ヴィクトリア女王と、夫のアルバート
©gettyimages

林:いまあなたが言った「黒一辺倒の」というのはね、ウインザー公の曾祖母で、ヴィクトリア女王が君臨していた19世紀の英国のことだよ。当時の男性の服装はフォーマルでね、ロンドンの街中なんぞ黒のフロックコートを着て、トップハットやボウラーハットをかぶった男が多かったんだ。何度もテレビドラマ化されているから知っているだろうが、コナン・ドイルが作り上げた名探偵シャーロック・ホームズね、あれにでてくる登場人物のようなカッコを想像してもらえればいい。きちんとしているが、堅苦しく、融通がきかない、慇懃無礼な英国男を。

ヤナカ:パッと見は、ずいぶん暗い時代だったんですね。

黒い服を着続けたヴィクトリア女王
©gettyimages

林:いや、経済的にも文化的にもヴィクトリア時代の英国は歴史的に見てももっとも繁栄していたんだけどね。旦那であるアルバート公、ほらロイヤルアルバートホールで有名なひとだよ、彼はわりと早く死んでしまったが、その死を悼んでヴィクトリア女王は、なんと40年間も黒い服を着ていたというんだから。女王が喪に服しているのに配下のものが白い服を着て歩くわけにはいかないじゃないか。

ヤナカ:そのフォーマルなスタイルを好む伝統が王室には続いていたわけですか。

遊び人だったエドワード7世
©gettyimages

林:そう。ヴィクトリアの後を継いだ、息子で、ぼくが大好きなエドワード7世は遊び人だったからね、母の時代の重苦しい雰囲気を嫌い、服装面でもいろいろチャレンジしたのだが、エドワードの在位はたった9年と短かったからね。エドワードの後の、ウインザー公の父で、カタブツだったジョージ5世の時代にもとに戻っちゃった。そこに現れたのがジョージ5世のハンサムな長男、ウインザー公なのですよ。

若かりし頃のハンサムなウィンザー公
©gettyimages


〈続く〉 

Text:Shinro Hayashi
Portrait:Tatsuya Hamamura
Edit:Ryutaro Yanaka

林 信朗
服飾評論家
『MEN'S CLUB』『Gentry』『DORSO』など、数々のファッション誌の編集長を歴任した後、フリーの服飾評論家に。メンズファッションへの造詣の深さはファッション業界随一。ダンディを地で行く大先輩。

 

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