煮イカこそ老舗寿司屋の逸品グルメ
大将:手が生臭くなるのが嫌で箸で食べている人もいますけど、基本的には手です。おにぎりと一緒ですよ。
FORZA:あと、お寿司屋さんでたまに目にする「上」と「並」ってなにがどう違うんですか?
大将:「並」も「上」も同じ魚を使いますが部位や魚の種類が違うんです。「並」は、切り身の端の筋が強かったり形が悪いところを使用します。「上」の場合は切り身の中でも形がキレイな部位でしたり、鯛や海老など格の高い魚を使います。お皿に盛る場合は、格の高い魚は手前側の「頭」という場所に置くのが基本です。
他にも「客に足を食わせるな」という意味で「タコ」、正式には「バカガイ」と呼ばれる格が低い貝の「アオヤギ」は、出前寿司には入れてはいけないルールがあるんですよ。今ではそんなルールを守っているお寿司屋さんも少ないとは思いますが。
FORZA:とても勉強になりました。では、握りをいくつかお願いします。
……こちらが煮イカの握りです。
坪内さん:僕、煮イカのお寿司が大好きなんです! これぞ老舗ならではの握り寿司です。
若大将:醤油と水で割ったものでスルメイカをほんの数分煮るんですけど、古い仕事なので「煮イカの握り」をやっているところは少ないです。
ちなみに、この煮イカがうまい季節と言うのが「麦イカ」や「新イカ」という子供のイカが出回る春先なんですが、この時期のイカは柔らかくて甘みも強く最高に美味しいんですよ!
FORZA:僕は煮イカは初めてです。ツメダレもかかっていて美味しそうですね! では早速、いただきます……うん、歯ごたえもよくイカの甘みと醤油のほのかな辛さが絶妙ですね。
……続いて玉子の握りです。
大将:玉子焼きも、中央に切り込みを入れるのが江戸前のやり方なんですよ。
FORZA:細かい仕事ですが粋な技ですね。では、いただきます……ん? 玉子と酢飯の間に、白身魚で作ったおぼろが入っていてますね。甘さもばっちりでおぼろの触感もよく美味しいです!
大将:ありがとうございます。では、もっと特別な物をお出ししましょう。
左にあるのが干した数の子で、右にあるのが、それを米のとぎ汁に1週間浸けて柔らかく戻し味を付けた数の子です。
魚臭さを取るために、うすい皮を何度も何度もキレイに掃除したり、水を変えたりするので仕上がるまでにすごく手間がかかるんですよ。
FORZA:では、大切にいただいます……この力強いコリコリとした触感は、今まで食べてきた数の子とはまったくの別物ですね。魚臭さもなくとても美味しいです!
大将:みんな戻してある数の子を使うので、干し数の子を出すお店は老舗しかないと思いますよ。めんどくさいのはみんなやらなくなりましたからね(笑)。
FORZA:坪内さん、歴史や文化を聞きながら美味しい江戸前寿司をいただけて感無量です。ありがとうございました。
坪内さん:それはよかったです。さて、長居は無用。ちょっと寄りたいバーがあるので行ってみましょうか。
今回はここまで! 次なるお店はどこなのか……次回も乞うご期待です。
Photo:Tatsuya Hamamura
Text:Naoki Fujita
Edit:栗原P
【撮影協力】
神田 笹鮨
東京都千代田区鍛冶町2-8-5
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http://www.sasazushi.com/
マグナムの創立メンバーであり、世界的有名なシューズデザイナー。自身のブランド、ヒロシ ツボウチとWH(ダブルエイチ)のデザインを手掛ける。ファッション業界では知らぬ人はいないウェルドレッサーとしても有名。自身の美学に基づいた流行を追わない個性スタイリングからも目が離せない。