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モータージャーナリストが斬るトランプ! トヨタの次はNISSANが危ない?

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国境の壁と関税のダブル攻撃を受けるメキシコ

2017年1月20日。第45代アメリカ合衆国大統領にドナルド・トランプ氏が就任。早々に大統領令を連発し何かと物議を醸しています。就任前から"ハリケーン・ドナルド"の煽りを受けたのは自動車業界。なかでもトヨタが名指しされたのは日本的にかなりショックだったようで、連日、マスコミが騒ぎ立てる始末。というのも、日本には1980年代に勃発した日米自動車摩擦のトラウマがあるからです。

で、感情論はさておき、トランプ大統領の主張は「ブルーワーカーの仕事を増やしてね」でございます。これまで製造業はコストダウンを目的に海外へ脱出し利益を捻出。株主へその利益を配当してきました。

©gettyimages

勝ち組は金融で富を得て、ささやかな暮らしを守ってきた者が疲弊する。誰だって文句のひとつも言いたくなります。IT大国? 40代になって明日からエクセル使えないとアンタはクビだ! と宣告されるようなもんですよねきっと。

株主利益の少しはアメリカに税金というカタチで還元されるでしょうが、アタマのいい人はタックスヘイブン経由で。税金を払わざるをえない人たちは失業へ。当然、格差は広がるばかり。俄然、キビシイ世の中になってしまいました。

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さて、国境の壁と強烈な関税のダブル攻撃を受けているメキシコですが、北米輸出台数で自動車生産数を見ると興味深い事実が浮かび上がります。

ジェトロ(日本貿易振興機構)による2015年のデータでは、1位がGM、2位がFCA、3位が日産。4位が僅差でフォードと続きます。年間20万台の生産規模を可能とするトヨタの新工場が稼働してもフォードの生産数に及びません。

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話題はちょっと横道にそれますが、トヨタはココ、メキシコでカローラを生産する計画です。アメリカにおける現在のカローラの価格は$18,500(2017年モデル)。この価格のクルマを作るのに年間20万台の生産能力でペイできるとは、いくら人件費の安いメキシコとはいえ驚異的効率の良さをトヨタは実現しています。

ハナシを本題に戻しましょう。報道ベースですがトランプ氏(就任前)との会談を終えたビッグ3の回答がまたイケてます。GMは10億ドルの投資で1500人。FCAは2020年までに10億ドルの投資で2000人。フォードはメキシコ工場の建設計画を白紙撤回。そして、今後4年で7億ドルの投資と700人の追加雇用見込みを表明しました。

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一方、トヨタはどうでしょう。こちらも既に報じられていますが、今後5年間で100億ドルの投資を表明。トヨタはリーマンショックの教訓から投資を控えてきたので多少の余力はあるのでしょう。それにしてもトヨタがスゴ過ぎるのか、ビッグ3がショボイのか、その判断は皆さんに委ねます。

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メキシコついでに余談ですが、ちょっと気になるのが日産です。先のデータによれば2015年のメキシコ工場の総生産数はおよそ82万台。この内、40万台が北米輸出用なのです! もしもハリケーン・ドナルドが直撃したら……。さすがのC・ゴーン氏も何らかの決断を迫られることになるでしょう。

安倍首相との会談を間近に控えたトランプ大統領が何を言い出すか予想不可能です。しかし、いずれにせよ日本はアメリカ車の販売増が見込まれる手立てを打つ必要に迫られます(フォードに至っては日本から撤退済みでもう笑うしかありませんが……)。

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私が仮にドナルドおじさんのために耳打ちするとしたら、排気量区分による自動車税の是正、型式認定の簡素化とその費用の低減を入れ知恵します。ラインナップの拡張と維持費が安くなれば、日本でももう少し販売量を増やすことは可能でしょう。今のアメリカ車は日本国内では完全に嗜好品です。

既にアメリカから日本への輸出関税は0%(日本からアメリカへ輸出する場合には2.5%課税されます)。これがアメリカファーストの論理では不公平になるのですから。さて、どうなることやら。

2期8年。トランプ大統領の思惑がうまく行けば4年後の2期目を迎える頃には新工場が幾つか稼働するでしょう。上院・下院ともに共和党が過半数を占めるとはいえ、波乱含みのトランプ政権。暴走しないか、今後のステアリングが気掛かりです。

Text:Seiichi Norishige



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