空のように晴れやかで、爽やかな色合いに惹かれましたが……
さて、34回目はエルメスのストール、ニュー リブリス(New Libris)です。こちらは、カシミア85%に、シルクを15%混紡したものなんですが、購入を決定付けたのは、そのサイズ! 210cm×75cmと、かなりの大判です。
第5回目でも書きましたが、大判のストールっていろいろと巻き方をアレンジできるから首元に表情を出せますし、寒い日にはショールのように肩からも掛けられるんです。あっ、もちろん女性の肩にもね。
これも重複になりますが、冬ってどうしてもコートがメインとなるため、バリエーションも乏しくて着こなしが単調になりますし、ドヨーンと重くなりがちですよね。さすがに、いい大人がド派手な明るいアウター着るってのは……なので、そんなときに重宝するのが明るめでキレイなストールだと思うんです。
とは言え、こういったアイテムをメンズで探すとなると、ひと苦労。日本だとなかなか思ったようなものには出逢えません。かと言って、ウィメンズとなると少し甘すぎて彼女や奥様のを借りた感が出てしまうんですね。
となれば、足を運ぶべきはエルメス。ストールのバリエーションは、とにかく豊富ですし、クオリティはもちろん、色出しの美しさは目を見張るものがあります。あまりに充実しすぎていて、どれをピックアップすべきが悩みどころではありますが、今回僕のハートを鷲掴みしたのは、このニュー リブリス。
お店によって在庫は異なりますが、10色以上のカラーバリエーションで、ブラックやフランネルグレー、アイボリーといったメンズでも使いやすそうなものから、オレンジやパープル、ブルーなどシルクが混紡されることで絶妙な光沢感が加わり、とにかく鮮やかで美しいものまでが揃っています。
どの色もホントにキレイで、触り心地も最高なため嬉しい悲鳴を上げてしまいましたが、結果的に選んだのは「ブルー・シエル」という、空のように淡い水色でした。
この色は、シャツで選ぶサックスブルーにも近いので、とにかく肌馴染みが良く、普段着るネイビーやグレーにも上手くマッチして、ケンカせずに溶け込んでくれます。また、イタリアが好む「アズーロ・エ・マローネ(青色と栗色)」のごとく、ブラウンのアイテムとも好相性なので、どんな格好のときでも活躍してくれるんですね。
ちなみに、欧米では貴族階級であることを「青い血(Sangre Azul)を引く」と表現し、歴史上、青は貴族性を象徴する色なのだそうです。貴族は外で働かないため、その真っ白な肌から下の静脈が青く透けて見えたところが由来だとか。
そこから派生したのか、青には"知性"や"高尚さ"といった意味もあるため、白に次ぐ評価を得ているんですね。アウトレイジ顔の僕が、自然と惹かれてしまう理由が、なんとなく分かりました。
話をクルリンパと戻して、秋口から冬にかけて、重くなりがちな着こなしが華やかになってくれますし、寒がる女性にサッと掛けてあげると確実に喜んで貰えるなど、とにかく重宝しているので、清水ダイブした甲斐はあったんですが、よく考えるとそれなりのコート1着買えたんですよね……。
どっちの方が着こなしの幅を拡げてくれたか考えると、顔が蒼ざめていきそうなので、悩まないことにします。クヨクヨせず上を向いて歩けば、きっと空の上に幸せがあるはずだから。
Photo:Ko Maizawa
Text:Ryutaro Yanaka
『FORZA STYLE』シニアエディター
谷中龍太郎
さまざまな雑誌での編集、webマガジン『HOUYHNHNM』編集長を経て、『FORZA STYLE』にシニアエディターとして参画。現在までにファッションを中心に雑誌、広告、カタログなどを数多く手掛け、2012年にはニューバランス初となるブランドブックも編纂。1976年生まれ。