アッチのヒトに見えない、ギリな感じもたまらない！
さて、32回目はロロ・ピアーナのラムレザーコートです。まだまだ、ロロ・ピアーナで貫き通しますよ。でも、カシミアじゃありません！ 今回はラムレザーです。って、自分で書いてても、どこに説得力があるのか全然見えてきません……って、コレ見たな。やっぱりオトコなら、レザーに憧れる時期"革ジャン反抗期"ってのがありまして、ライダースなんてのにチャレンジしたくなるってな話は17回めにしましたが、寄る年波には勝てず……。
重くて硬くて動きにくいレザーってヤツには触手が伸びなくなるもんでございます。ただ、レザーが持つ、あの独特な色気ってのにはついつい惹かれますから、イイものに出逢えりゃ、財布は開く。ふらふらと街に繰り出すときにゃ、目を配って、なんとはなしに探していたんです。この辺りで羽織 脱ぎましょうかね（笑）。
そんなときに出逢ったのが、またもやロロ・ピアーナ。このラムレザーコートなんです。ラックに掛かってるところを掴んでみたら、まずその柔らかさに驚き…。思い切って試着させて頂いたら、裏地が総カシミアで再度驚き……。値札を見たら、予想はしてたのに、その日１番の驚きを顔に出してしまったのは スタッフさんにも完全に気付かれてしまいました。
でもまぁ、ラムレザーってのは子羊の革なのでサイズが小さく、食用にされる機会も少ないから、とにかく希少。牛革と比べると、メチャクチャ薄くて軽いし、しなやかで柔らかい。そして、ふっくらとした質感で保温性が高い上に、肌目が細かいので表面も美しく、うっとりするほど優しい肌触り。そりゃあ、高額でも仕方がないんですが……。
あれは、1995年頃でしたかね。アニエス・ベー（agnès b.）から羊革（シープスキンだった気がしますが）の革パンがリリースされ、例のごとく藤原ヒロシさんを筆頭に原宿の方々や、藤井フミヤさんが穿いていた姿に影響され、当時で10万もしたのにガンバって買いまして。他の革パンなんかとはまったく異なる柔らかさに感動したものの、その柔らかさのせいでアッという間に膝が出ちゃったのを思い出しました。ノスタルジー……。秋口のライブにカッコつけて穿いてったら、汗かきすぎて塩吹いちゃってたのすらも イイ思い出です。
話はクルリンパと戻しまして、レザーのコートって正直結構ハードルが高いとは思うんです。アイテム選びや着方を間違えると、アチラ側の方か、やたら集金に廻ってるオジさんに見えがちですしね。黒のロングなんて選んだ日には、陰でコソコソ「殺し屋」なんて呼ばれるハメになりますから。でも、そこはやはり天下のロロ・ピアーナ！ とにかく上品なチョコレートブラウンですし、デザインはごくオーソドックスなバルマカーン。着丈も短めでカーコートって雰囲気なので、アウトレイジ顔の僕が着ても、ギリでアチラ側には見えない。
というか、コレに関してはスーツやジャケットの上に着るというよりは、インナーにニットやパーカを合わせてカジュアルな感じで、90年代のイーストコースト・ヒップホップを代表する"ネイティブ・タン"の着こなしを今っぽく、そして大人っぽくさせたような雰囲気で着てるんです。そう！ 結局は清水ダイブしちゃってたんですね。
てなわけで、ラムの魅力に目が眩む。そんな話を今回のコラムで８カラムに渡って書き終えたのは、東の空が白む頃…。いいオチが思いつかず、自らの能力のなさを恨むってな、ちょっと絡む感じで筆を置くのは、年末録画してたフリースタイルダンジョンを一気に観たせいなので、どうかご勘弁を。よっしゃっしゃっす。
Photo：Ko Maizawa
Text：Ryutaro Yanaka
『FORZA STYLE』シニアエディター
谷中龍太郎
さまざまな雑誌での編集、webマガジン『HOUYHNHNM』編集長を経て、『FORZA STYLE』にシニアエディターとして参画。現在までにファッションを中心に雑誌、広告、カタログなどを数多く手掛け、2012年にはニューバランス初となるブランドブックも編纂。1976年生まれ。
